むち打ち症についての詳しい解説

2026.08.02

交通事故のケガの中で、いちばん多いのが「むち打ち症」です。
そして同時に、いちばん理解されにくいケガでもあります。
レントゲンにもMRIにも、はっきりとは写らない。
それなのに、痛みとしびれは毎日続く。

この記事では、そんな「外から見えないケガ」について、次のことをお伝えします。

・追突事故で、なぜ首が壊れるのか
・むち打ち症の等級を分ける、たった一つの分岐点
・認定を左右する検査と、実はそれ以上に大事な記録
・むち打ち症の賠償額が、なぜ他のケガより低く見えるのか
・腰のケガ、そして味覚障害にも共通する、同じ構造の問題

高松で交通事故の被害者側の代理人をしていると、同じ場面に何度も出会います。
治療が終わったあとで、もっと早く知っていれば、とおっしゃる方が多いのです。
だからこの記事は、示談交渉の話から始めません。
まだ通院している、その時期の話から始めます。

1 なぜ、追突されると首を痛めるのか

1-1 首が、むちのようにしなる

高松市内を運転していたIさんは、信号待ちで停止中に後ろから追突されました。
その日は首が少し痛む程度でした。
翌朝、起き上がれないほどの痛みとしびれが出ました。

なぜ、こういうことが起きるのでしょうか。

車が後ろから追突されると、車体は前方へ急に押し出されます。
ところが、シートに座っている人の頭は、その場にとどまろうとします。
これが慣性です。
結果として、首だけが後ろに大きくしなります。
そのあと反動で、今度は前へ振られます。

この往復の動きで、首の骨(頚椎)を支える靱帯や筋肉、そして神経が引き伸ばされます。
場合によっては、部分的に切れたり、圧迫されたりします。
むちがしなる動きに似ているので、むち打ち症と呼ばれます。

翌日に痛みが強くなるのは、この損傷部分に炎症が広がるからです。
事故直後に平気だったから軽いケガだ、とは言えません。
むしろ、当日は興奮状態で痛みを感じにくいことのほうが普通です。

1-2 診断名がバラバラでも、中身は同じ

診断書を見て、戸惑う方がいます。
病院によって、書かれている病名が違うからです。

頚部捻挫。
頚椎捻挫。
頚部挫傷。
頚部打撲。
外傷性頚部症候群。

これらは、いずれもむち打ち症を指しています。
医師がどの表現を選ぶかの違いにすぎません。
病名が違うから賠償が変わる、ということは、原則としてありません。

症状も、首の痛みだけではありません。
背中の張り、手や足のしびれ、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴り、強い倦怠感。
自律神経の乱れとして現れることもあります。

【用語解説】頚椎(けいつい)
首の部分にある、7つの骨のことです。
この骨の間を、脳から手足へ向かう神経が通っています。
だから、首を痛めると手のしびれが出ることがあるのです。

2 むち打ち症が、他のケガと決定的に違う点

2-1 症状が、人によってまったく違う

骨折なら、レントゲンを見れば誰でも分かります。
折れているか、折れていないか。
議論の余地がありません。

むち打ち症は、そうではありません。
訴える症状が、部位も程度も、人によってまるで違います。
同じような追突を受けても、2週間で治る人と、何年も痛みが残る人がいます。

医学の世界では長年、事故の衝撃の大きさと症状の重さとの間に、何らかの相関関係を見つけようとする研究が続いてきました。
しかし、誰もが納得する明確な法則は、いまだに見つかっていません。

つまり、むち打ち症は、客観的な物差しで測れないのです。
最終的には、被害者本人の訴えを、どこまで信用できるかという話になります。

2-2 その弱点を、保険会社は知っている

ここが、被害者にとって不利に働きます。

相手方の保険会社は、支払う金額を抑えることが仕事です。
そして、むち打ち症には客観的な証拠が乏しいことを、よく知っています。

だから、こう言ってきます。
そろそろ治っているはずです、と。
事故の衝撃が小さいので、そこまでの症状は出ないはずです、と。
本当に痛いのか分かりませんね、と。

不定愁訴(原因がはっきりしない体調不良)であるかのように扱われることも、珍しくありません。
本当に苦しんでいる人にとって、これは二重の苦痛です。

【弁護士の視点】痛みの証明は、記録の積み上げでしかできない
実務でよく見るのは、痛いのに我慢して通院を減らしてしまった、というケースです。
本人としては、頑張って耐えたつもりです。
ところが記録の上では、痛みが軽くなったから通わなくなった、と読まれてしまいます。
痛みは言葉では伝わりません。
伝わるのは、カルテに残った通院の記録だけです。

3 等級を分けるのは、「証明」か「説明」か

3-1 12級と14級、その境目にあるもの

治療を続けても症状が残ったとき、後遺障害の等級認定を申請します。
むち打ち症で問題になるのは、主に2つの等級です。

12級。
これは、医学的に「証明」できる場合の等級です。
証明とは、他人が見ても分かる客観的な証拠があるということです。
MRIで神経の圧迫が写っている、その画像所見と症状の出ている部位が一致している。
そういう状態です。

14級。
これは、証明まではできないけれど、医学的に「説明」ができる場合の等級です。
画像には写らない。
けれども、事故の状況、治療の経過、症状の一貫性から見て、そういう症状が残っていることに矛盾がない。
そう判断されれば、14級が認められます。

そして、証明も説明もできなければ、どうなるか。
非該当です。
どれだけ痛みを訴えても、後遺障害としてはゼロと扱われます。

1か、ゼロか。
むち打ち症の等級認定は、そういう世界です。

【用語解説】後遺障害等級(こういしょうがいとうきゅう)
治療を続けても治りきらなかった症状を、重さの順に1級から14級まで格付けした制度です。
1級がいちばん重く、14級がいちばん軽い区分になります。
この等級が、後遺障害についての賠償額をほぼ決めてしまいます。
【用語解説】他覚所見(たかくしょけん)
本人の訴えではなく、医師が検査などによって外から確認できる異常のことです。
画像に写った異常や、反射の左右差などが、これにあたります。
逆に、本人にしか分からない痛みやしびれは、自覚症状と呼ばれます。

3-2 なぜ、この線引きになっているのか

一見すると、冷たい仕組みに思えます。
本当に痛いのに、写真に写らなければ低く扱われるのですから。

ただ、制度の側にも理由はあります。
自賠責保険は、全国で年間何十万件という申請を、同じ基準で処理しなければなりません。
そのためには、誰が判断しても同じ結論になる物差しが必要です。
本人の訴えの強さだけで等級を決めると、公平さが保てなくなってしまう。
だから、証明と説明という線を引いているのです。

この構造が分かると、やるべきことが見えてきます。
痛みを強く訴えることではありません。
説明ができる状態を、記録として作っておくことです。

4 認定を左右する検査と、もう一つの証拠

4-1 画像検査

証明のための客観的証拠は、一般的にMRIによります。
レントゲンでは骨しか写りません。
神経や椎間板を見るには、MRIが必要です。

ただし、注意点があります。
MRIに何か写っていれば12級、というほど単純ではありません。
写っている異常の場所と、実際にしびれている場所が一致しているか。
そこまで見られます。

4-2 神経学的な検査

臨床の場では、次のような検査が行われます。

腱反射検査。
膝や腕を叩いて、反射の出方に左右差がないかを見ます。

徒手筋力テスト。
医師が力をかけて、筋力が落ちていないかを調べます。

握力測定。
左右差や、経過による変化を記録します。

そのほか、首を動かして症状が出るかを見る誘発テストなどもあります。
どの検査が必要かは、症状の出方によって変わります。
自己判断せず、医師に相談してください。

4-3 実は、いちばん効くのは「一貫性」

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

14級が認められるかどうかを分けているのは、多くの場合、検査結果ではありません。
症状の一貫性と、治療の継続性です。

具体的には、こういう点が見られています。

事故直後から、同じ症状を訴え続けているか。
初診のときに、その症状を医師に伝えているか。
通院の間隔が、途中で大きく空いていないか。
症状の訴えが、途中で別の部位に変わっていないか。
事故の前に、同じ症状で通院していなかったか。

たとえば、事故から2週間後に初めて病院へ行った場合。
その2週間の空白は、事故とは関係ないのではないか、という疑いを生みます。

たとえば、初診で首の痛みしか伝えず、3か月後に急に手のしびれを訴えた場合。
そのしびれは事故によるものなのか、という疑問が残ります。

たとえば、忙しくて1か月通院しなかった場合。
その1か月は、症状が軽かった期間だと読まれかねません。

【弁護士の視点】結果は、示談交渉ではなく治療期間中に決まっている
弁護士に相談に来られるのは、保険会社から金額を提示されたあと、という方が多いです。
しかし、そのときにはもう、カルテは書き終わっています。
交渉でひっくり返せるのは、金額の計算方法の部分です。
症状があったという事実そのものは、あとから作れません。
だから私たちは、まだ通院しているうちにご相談いただきたいと考えています。

5 なぜ、むち打ち症の賠償額は低く見えるのか

むち打ち症の損害賠償には、他のケガと大きく違う点が2つあります。
どちらも、後遺障害の逸失利益に関わる部分です。

【用語解説】逸失利益(いっしつりえき)
後遺障害が残ったせいで、将来受け取れなくなる収入のことです。
おおまかには、事故前の年収 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間、で計算します。
(実際には、将来分を先にもらうため、利息分を差し引く調整が入ります。)

5-1 労働能力喪失率が、低く見積もられる

労働能力喪失率とは、後遺障害によって働く能力が何パーセント失われたか、という割合です。

むち打ち症の場合、12級で14パーセント、14級で5パーセントが目安とされています。
これは、他の後遺障害と比べて低い水準です。

理由は、痛みやしびれが残っても、多くの人は仕事そのものは続けられるからです。
実際に減った収入が確認できない場合、そもそも損害が発生していない、と主張されることさえあります。

5-2 労働能力喪失期間が、途中で打ち切られる

こちらのほうが、金額への影響は大きくなります。

通常の後遺障害であれば、労働能力喪失期間は、働ける年齢の上限とされる67歳までとして計算されます。
40歳で後遺障害が残れば、27年分です。

ところが、むち打ち症の場合は違います。
実務では、14級であれば5年程度、12級であれば10年程度に限定されるのが一般的です。
40歳の方でも、27年分ではなく5年分、ということになります。

なぜ、こういう扱いになるのでしょうか。

むち打ち症の症状は、時間の経過とともに軽くなっていく傾向がある、と考えられているからです。
また、示談交渉が長引くこと自体が精神的なストレスとなり、それが症状を長引かせている場合がある、という見方もあります。
実際、示談が成立したあとに体調が落ち着いた、というケースは少なくありません。

だから、最初から67歳までとするのではなく、期間を区切るのです。

ただし、これは絶対のルールではありません。
12級で、画像所見が明確に残っている場合には、より長い期間が認められた裁判例もあります。
症状の重さ、仕事への具体的な支障、年齢によって、争う余地は残されています。

5-3 同じ14級でも、金額が3倍以上変わる

もう一つ、知っておいていただきたいことがあります。
慰謝料には、3つの基準が存在します。

自賠責保険の基準。
任意保険会社が社内で使う基準。
そして、裁判所が使う基準です。

14級の後遺障害慰謝料で比べてみます。
自賠責の基準では、32万円です。
裁判所の基準では、110万円が目安とされています。

12級ではどうでしょうか。
自賠責の基準では、94万円。
裁判所の基準では、290万円が目安です。

入通院慰謝料も同じです。
自賠責の基準は、1日あたり4300円で計算します。
しかも、対象になる日数は、治療期間と、実際に通院した日数を2倍した数の、少ないほうです。
半年通って実通院が60日なら、120日分。
おおよそ51万円ほどになります。

一方、裁判所の基準では、他覚所見のないむち打ち症の場合、6か月通院でおよそ89万円が目安とされています。

保険会社の提示額が低いのは、担当者が意地悪だからではありません。
そもそも参照している表が違うのです。
ここが、被害者側に弁護士が入ることで金額が動く、いちばん大きな理由です。

6 腰のケガも、まったく同じ壁にぶつかる

高松の交通事故ではむち打ち症が圧倒的に多いのですが、腰のケガも数多く見られます。
そして、抱えている問題の構造は、むち打ち症とほとんど同じです。

6-1 診断名が多いのも、見えにくいのも同じ

腰部捻挫、腰椎捻挫、腰部挫傷、腰部打撲、腰部症候群。
やはり、さまざまな診断名がつきます。

腰には、首と同じように神経が集中しています。
そのため、損傷の程度によっては、下半身のしびれや麻痺といった重い障害につながる可能性があります。

特に、自動車と歩行者、自動車と自転車という事故では、体を直接守るものがありません。
腰の損傷が、そのまま人生を変えてしまうことがあります。
車椅子やベッドの上での生活を余儀なくされる方もいらっしゃいます。

そこまで至らなかった場合でも、腰の痛みは完全には消えないことが多いものです。
その後の人生を、痛みと付き合いながら送ることになります。

6-2 腰特有の論点、それはもともとの持病か

腰のケガには、むち打ち症以上に厄介な争点があります。

腰のMRIを撮ると、椎間板ヘルニアや、骨の変形が写ることがあります。
被害者からすれば、事故のせいで壊れた、と考えるのが自然です。

ところが保険会社は、こう主張してきます。
それは加齢による変化であって、事故の前からあったものだ、と。

実際、椎間板の変性は、年齢とともに誰にでも起こります。
症状がないまま、変形だけがあった人も大勢います。
そこに事故が加わって、初めて痛みが出た。
そういう場合、賠償はどうなるのか。

法律の世界では、これを素因減額の問題として扱います。
もともとあった体の弱さが症状の一因になっている場合、賠償額を減らすことがある、という考え方です。

ただし、最高裁は歯止めもかけています。
首が人より長いといった身体的な特徴があっても、それが病気といえる程度でない限り、原則として減額の理由にはならない、と判断しています。
逆に、はっきりとした持病があり、それが症状の悪化に影響している場合には、減額が認められることがあります。

つまり、争点はこうなります。
写っている変形は、病気なのか、それとも単なる個性の範囲なのか。
そして、事故の前に、その部位で治療を受けたことがあったのか。

【用語解説】素因減額(そいんげんがく)
被害者側にもともとあった病気や心理的な要因が、ケガの悪化に影響している場合に、賠償額を公平の観点から減らす考え方です。
過失相殺のルールを応用して行われます。

7 味がわからない、という後遺障害

7-1 五感のひとつが、静かに失われる

交通事故で受ける損傷は、外見上のものだけではありません。
見た目はまったく普通なのに、日常生活が大きく変わってしまうこともあります。

そのひとつが、味覚障害です。

視力や聴力を失うことに比べれば軽い、と思われる方もいるかもしれません。
しかし、想像してみてください。
食事の味が、まったく分からない毎日を。

食べることは、生きることの中心にあります。
料理を仕事にしている方であれば、収入にも直結します。
腐っているかどうかが分からず、健康上の危険もあります。
家族との食卓が、義務の時間に変わってしまうこともあります。

味覚障害は、後遺障害として認定されます。
ただし、その道のりは、むち打ち症と同じくらい険しいものです。
やはり、外からは見えないからです。

7-2 検査の方法を間違えると、すべてが無駄になる

ここに、非常に実務的な落とし穴があります。

味覚の検査には、いくつかの方法があります。
電気味覚検査という方法もありますが、これでは基本となる4つの味のうち、限られた部分しか調べられません。

後遺障害の認定で求められるのは、濾紙ディスク法による検査です。
これは、味の成分をしみこませた小さな紙を舌に置いて、味を感じ取れるかどうかを調べる検査です。
濃度は5段階に分かれていて、いちばん濃い液でも味が分からなければ、認知できないと判定されます。

調べるのは、基本4味質です。
甘味、塩味、酸味、苦味の4つを指します。

そして、ここが重要です。
後遺障害診断書に、濾紙ディスク法による検査結果が書かれていなければ、事実上、判断のしようがありません。
どれだけ本人が味が分からないと訴えても、認定にはつながらないのです。

等級は、次のように定められています。

味覚脱失。
基本4味質のすべてが認知できない状態です。
12級に相当するものとして扱われます。

味覚減退。
基本4味質のうち、1つ以上が認知できない状態です。
14級に相当するものとして扱われます。

なお、味覚障害は、時間の経過とともに回復することがあります。
そのため、一定の期間、経過を見たうえで判断されるのが通例です。
事故直後に検査を受けたきり、というのでは足りません。

7-3 実は、嗅覚のほうが原因かもしれない

もうひとつ、見落とされやすい点があります。

私たちが味と呼んでいるものの多くは、実は香りです。
鼻をつまんでコーヒーを飲むと、味気なく感じられます。
あれと同じことが起きている場合があります。

頭を強く打つ事故では、嗅覚をつかさどる神経が傷つくことがあります。
本人は、味が分からない、と感じます。
しかし検査をすると、味覚そのものは保たれていて、嗅覚が失われていた。
そういうケースがあるのです。

嗅覚障害も、独立した後遺障害として認定の対象になります。
検査方法も、味覚とは別のものが必要です。

食べ物の味がしない、という症状があるときは、耳鼻咽喉科で味覚と嗅覚の両方を調べてもらってください。
どちらの検査も受けていないまま症状固定を迎えると、取り返しがつきません。

【用語解説】症状固定(しょうじょうこてい)
これ以上治療を続けても、大きな改善が見込めない状態になったことをいいます。
この時点から先の症状が、後遺障害として評価されます。
症状固定になると、治療費や休業損害の支払いは原則として打ち切られます。

8 同じ事故を、4つの立場から見てみる

なぜ、話がかみ合わないのか。
立場を並べてみると、理由が見えてきます。

被害者の立場。
毎日、痛い。
仕事に集中できず、眠りも浅い。
自分は嘘をついていないのに、疑われている気がする。

保険会社の立場。
担当者は、同時に何十件もの案件を抱えています。
社内の基準に従って処理する必要があります。
証拠のない主張に、高い金額は出せません。
悪意ではなく、業務の構造がそうさせています。

医師の立場。
医師の仕事は、患者を治すことです。
賠償のために書類を整えることではありません。
だから、後遺障害診断書に必要な検査結果が抜けていても、医療としては何も間違っていないのです。
足りない部分があれば、患者側から具体的にお願いする必要があります。

裁判所の立場。
裁判官は、事故を見ていません。
判断できるのは、提出された記録だけです。
カルテ、診断書、画像、通院日数。
そこに書かれていないことは、なかったこととして扱われます。

この4つを並べると、ひとつのことが分かります。
問題は、誰かが悪いことではありません。
被害者の痛みを、記録という共通の言語に翻訳する人が、いないことなのです。

弁護士が入ると何が変わるのか、と聞かれることがあります。
金額の交渉が上手になる、という話ではありません。
翻訳の作業を、治療中から始められるようになる、ということです。

9 いま、できること

もし、あなたがいま治療中であれば、次のことを意識してみてください。

症状は、遠慮せず、すべて医師に伝えること。
軽い症状でも、初診のうちに伝えておくこと。
通院の間隔を、自己判断で空けないこと。
症状が変わったら、その都度カルテに残してもらうこと。
保険会社から治療の打ち切りを打診されても、その場で結論を出さないこと。

そして、すでに症状固定を迎えている方へ。
認定結果に納得がいかない場合、異議申立てという手続があります。
一度非該当となっても、必要な検査結果や医師の意見書を追加して、認定が変わることは実際にあります。
あきらめる前に、記録に何が足りなかったのかを確認する価値はあります。

また、弁護士に頼むと費用が心配だ、という方も多いと思います。
ご自身やご家族の自動車保険に、弁護士費用特約が付いていないか、確認してみてください。
付いていれば、多くの場合、費用の負担なく弁護士に依頼できます。
契約者本人だけでなく、同居のご家族が使えることもあります。

必ず弁護士に依頼してください、と申し上げるつもりはありません。
症状が軽く、早期に回復される方も大勢いらっしゃいます。

ただ、痛みが3か月以上続いている場合。
手足のしびれがある場合。
保険会社から治療費の打ち切りを言われた場合。
このいずれかに当てはまるなら、一度、話を聞いてもらうだけでも意味があります。

外から見えないケガだからこそ、記録が残っているうちに動くこと。
それが、いちばん確実な方法です。

被害者に役立つ情報

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