業務中の交通事故で“積荷”が壊れた——高松の弁護士が解説する損害賠償の実務
業務配送中に高松市内で交通事故に巻き込まれ、車両だけでなく積んでいた商品まで大量に破損してしまった——。このとき、積荷の損害は加害者側に請求できるのでしょうか。請求できるとして、いくらまで、どうやって?本記事では、元来あまり詳しく解説されてこなかった「積荷損害」の請求実務について、事故直後の現場対応から書類整備、保険会社との交渉まで、実務目線で整理します。
第1章 「車の損害」と「積荷の損害」は別物だという出発点
- 1-1. 業務中の事故で見落とされがちな視点
- 1-2. 積荷損害も損害賠償の対象になる
- 1-3. 立証の壁——“請求できる”と“認められる”の距離
- 2-1. 原則は「時価」で計算する
- 2-2. 「再調達費用」と「卸売価格」の使い分け
- 2-3. 「逸失利益」は原則として含まれない
- 2-4. 取引上の打撃——「商品が届かなかったこと」自体が損害になる場合
- 2-5. 「破損して売り物にならなくなった分」だけが対象
- 3-1. なぜ「30分」が分岐点なのか
- 3-2. 時間軸で見る、現場記録の優先順位
- 3-3. 撮影漏れがもたらす具体的な不利益
- 4-1. 写真と書類は役割が違う
- 4-2. 各書類が立証する“事実の射程”
- 4-3. 保険会社の査定担当者が見ているポイント
- 4-4. 書類不備で査定額が下振れする典型パターン
- 5-1. 交渉力は「事故後の対応」より「平時の記録体制」で決まる
- 5-2. 平時から残しておきたい記録のチェックリスト
- 5-3. クラウド保存と二重化のすすめ
- 5-4. 法人と個人事業主で異なる留意点
- 6-1. 「自分にも過失がある」と思っても、まずは相談を
- 6-2. 過失相殺の計算が積荷損害に与える影響
- 7-1. 「再調達費用」か「卸売価格」か
- 7-2. 取引上の打撃の立証の壁
- 7-3. 査定額に納得できない場合の手段
- 8-1. 物損案件にも対応している事務所を選ぶ
- 8-2. 弁護士費用特約の有無を確認する
- 8-3. 地元・高松で相談するメリット
- Q1. 自分の車両は無傷で積荷だけ壊れた場合でも、積荷損害は請求できますか?
- Q2. 仕入時の領収書を紛失してしまった商品はどうなりますか?
- Q3. 取引先から違約金を請求された場合、それも加害者側に請求できますか?
- Q4. 自分の車両保険(任意保険)で積荷は補償されますか?
- Q5. 加害者側の保険会社から直接電話がかかってきたら、どう対応すべきですか?
1-1. 業務中の事故で見落とされがちな視点
業務で配送中に交通事故に遭うと、多くの被害者の方はまず車両の損傷に意識が向きます。修理見積もりを取り、代車を手配し、保険会社とやり取りをする——この一連の流れに集中するあまり、「積んでいた商品の損害」については後回しになってしまうケースが少なくありません。
しかし、車両損害と積荷損害は、法的にも実務的にも別の損害項目です。請求の根拠条文も、立証に必要な書類も、保険会社の査定担当者がチェックするポイントもまったく違います。車両の修理交渉に集中している間に積荷の証拠が散逸し、いざ請求しようとした時には立証が困難になっていた——そのようなご相談を、高松でも実際にお受けすることがあります。
1-2. 積荷損害も損害賠償の対象になる
結論から申し上げると、業務配送中の積荷が交通事故によって破損した場合、その損害は加害者側に対して損害賠償として請求することができます。法的には、民法第709条(不法行為)に基づく損害賠償請求権の問題であり、「事故と積荷の破損との間に相当因果関係がある」と認められる限り、原則として賠償の対象となります。
もちろん、被害者側にも一定の過失があるケースでは、過失相殺(民法第722条第2項)の適用を受け、請求できる金額が割合に応じて減額されることはあります。それでも「自分にも落ち度があるから請求できない」と諦めてしまうのは早計です。
1-3. 立証の壁——“請求できる”と“認められる”の距離
積荷損害が法的に請求できるとしても、現実にその金額を保険会社や裁判所に認めさせるためには、「何が」「どれだけ」「いくら相当のものが」積まれていて破損したのかを、被害者側が立証しなければなりません。これが、積荷損害の実務における最大の関門です。
本記事では、この立証の壁を低く抑えるために、(1)損害額算定の基本ルール、(2)事故直後30分の現場記録、(3)配送伝票・納品書という核心書類、(4)事故が起きる前から整えておくべき業務記録体制——の4点を順に解説します。
第2章 積荷損害額はどう計算されるのか——時価・再調達費用・取引上の打撃
2-1. 原則は「時価」で計算する
積荷の損害額は、原則として事故時点における品物の「時価」で計算します。新品を買ったときの値段(取得価格)ではなく、事故時点で同等のものを市場で調達するのにいくらかかるかを基準とする、という考え方です。これは物損賠償における一般原則であり、車両の全損時に「時価額」が基準となるのと同じ発想です。
2-2. 「再調達費用」と「卸売価格」の使い分け
実務上、時価の算定には大きく2つの考え方があります。一つは「再調達費用」、もう一つは「卸売価格」です。
再調達費用とは、被害者が同じ商品を新たに仕入れ直すために必要な費用のことで、破損した積荷を補充して業務を再開できる状態に戻すために要する金額を指します。業務遂行のためにすぐに同等品を確保しなければならない、というケースでは、この再調達費用が用いられるのが一般的です。
他方、卸売価格は、被害者が積荷を仕入れた時点での仕入価格をベースに算定する方法です。卸売価格を基準とする場合は、商品本体の価格だけでなく、その商品を仕入れて配送可能な状態にするまでにかかった運搬費や包装費といった諸費用も、損害額に含めて請求できる余地があります。
2-3. 「逸失利益」は原則として含まれない
ここで一つ、被害者の方が誤解しがちなポイントがあります。積荷を販売することで得られたはずの「利益(粗利)」については、原則として損害額に含めることはできません。
たとえば、原価500円の商品を1,000円で販売する予定だった場合、積荷損害として認められるのは原則として原価相当の500円であって、販売したら得られたはずの500円の利益までは含まれないのが基本です。「同等品を仕入れ直して再販売すれば、本来予定していた利益は回復できるはずだ」というのが、その理由です。
ただし、これには重要な例外があります。たとえば、再調達が事実上不可能な特注品である場合、あるいは納期に間に合わなくなって取引自体がキャンセルされてしまった場合など、「再調達では回復できない損害」が発生していると言える場合には、その損害も賠償対象となり得ます。次項で詳しく見ていきましょう。
2-4. 取引上の打撃——「商品が届かなかったこと」自体が損害になる場合
積荷損害の議論で、もっとも見落とされやすいのが「取引上の打撃」です。
事故によって商品が破損し、約束していた納期に納品できなかった結果、取引先から契約を解除された、違約金を請求された、信用を失って継続取引を打ち切られた——。こうした取引上の打撃は、商品そのものの価値とは別に、被害者が現実に被った経済的損害です。
もっとも、これらを損害賠償に上乗せして請求するためには、「事故と取引上の打撃との間に相当因果関係がある」ことを、被害者側が証拠を持って示す必要があります。具体的には、取引先との契約書、納期に関するメールや書面、契約解除通知や違約金請求書など、第三者(取引先)から発信された客観的書類が決定的に重要になります。
「自分の説明」だけでは保険会社は動きません。第三者の書面で裏打ちされた事実だけが、交渉のテーブルに乗せる価値を持ちます。
2-5. 「破損して売り物にならなくなった分」だけが対象
もう一つの基本ルールとして、積荷損害は「積んでいた全量」ではなく、「破損して売り物・使い物にならなくなった分」だけが算定対象となります。
つまり、たとえばダンボール100箱を積んでいて、そのうち30箱が破損し、70箱は無事だった場合、賠償の対象となるのは破損した30箱分です。残りの70箱については、改めて配送して納品すれば足りるからです。
ただし、「無事に見える残りの分」が、実際には外箱の傷や微細な変形によって取引先に受け取りを拒否された、という事態も起こり得ます。この場合は、外見上は破損していないように見えても、事実上は商品として流通できなくなったわけですから、賠償対象に含めて主張する余地があります。このような“グレーゾーン”の損害は、後述する事故直後の記録と取引先とのやり取りの記録が、勝敗を分けます。
第3章 事故直後30分で決まる——積荷立証の“ゴールデンタイム”
3-1. なぜ「30分」が分岐点なのか
交通事故の現場で、被害者の積荷について「何が」「どれだけ」「どのような状態で」積まれていたかをもっとも生々しく示せるのは、事故直後の現場そのものです。車両が動かされ、警察の現場処理が終わり、レッカー移動が始まってしまうと、事故時点の積載状況は二度と再現できなくなります。
経験上、警察が現場に到着するまでのおおむね30分前後が、被害者側が自由に記録を残せる“ゴールデンタイム”です。この30分でどれだけ記録を残せるかによって、その後数か月にわたる損害賠償交渉の射程が決まる、と言っても過言ではありません。
3-2. 時間軸で見る、現場記録の優先順位
【0~5分】 安全確保と通報を最優先に
言うまでもなく、最初の数分間で優先すべきは身の安全と負傷者の救護、110番・119番通報、そして二次事故の防止です。これらが最優先であって、写真撮影はそのあとです。
ただし、安全が確保できた瞬間から、スマートフォンの撮影機能を立ち上げておくことは強く推奨します。後述のとおり、警察到着までの限られた時間で、できるだけ多くの記録を残すためです。
【5~15分】 現場全景と積荷の状態を“広く・浅く”記録
次の10分間で意識すべきは、後から細部を確認できる程度の「全景記録」です。細かい部分にこだわって時間を使うよりも、まずは現場全体を多角的に押さえることを優先します。
- 事故車両の四方からの撮影(前・後・左・右の4方向は必須)
- 車両の積載スペース全体が写る引きの構図での撮影
- 路面に飛散・落下した積荷の位置関係がわかる広角ショット
- ナンバープレートと積荷が同一カットに写る写真(車両特定のため)
- 周辺の信号機・道路標識・道路状況がわかるカット(過失割合判断の補強にも)
【15~30分】 積荷の品目・数量・破損部位を“狭く・深く”記録
全景の記録が一通り済んだら、次は積荷一つひとつに寄った撮影に移ります。
- 破損した商品の品名ラベル・型番・ロット番号がはっきり読める接写
- 破損部位のクローズアップ(割れ・へこみ・液漏れ・汚損など)
- 無事な積荷も、念のため一度撮影しておく(「破損していない分は請求対象外」の立証用)
- 配送伝票・納品書・送り状そのものの撮影(後述の第4章と直結)
- 車内に保管していた手書きメモ・配送リスト類の撮影
3-3. 撮影漏れがもたらす具体的な不利益
「写真は警察が撮ってくれるから、自分で撮らなくても大丈夫」——これは典型的な誤解です。警察の実況見分は、事故の事実関係(過失の有無や交通違反の認定)に必要な範囲で行われるものであって、被害者の積荷損害の立証のために撮影されるものではありません。
実際、保険会社との交渉では次のような場面が頻繁に出現します。
- 「破損したのは本当にこの数量ですか?過剰申告ではありませんか?」と問われたとき、現場写真がなければ反論が難しい
- 「事故の衝撃ではなく、もともと傷んでいたのではないですか?」と言われたとき、事故直後の状態写真がなければ覆せない
- 「破損したのではなく、単に箱が変形しただけで中身は無事なのではないですか?」と争われたとき、開封前後の写真がなければ立証が苦しい
いずれも、現場での撮影が30分多くされていれば、争点にすらならなかった論点です。保険会社の査定担当者は、被害者本人が直接撮影した「事故時点の生の状態の写真」を、もっとも信用度の高い証拠の一つとして扱います。
第4章 配送伝票・納品書が立証の核心——“写真があれば足りる”という誤解
4-1. 写真と書類は役割が違う
前章では現場記録の重要性を強調しましたが、それでもなお、写真“だけ”では足りない場面があります。
写真が示せるのは、撮影された瞬間の物理的な状態だけです。そこに何が積まれていたかは写りますが、「その商品が事故時点で誰のどの取引のためのものだったか」「いくらの価値があったか」までは、写真だけでは語れません。この情報の空白を埋めるのが、業務で日常的に作成・授受している配送関連書類です。
4-2. 各書類が立証する“事実の射程”
出荷指示書——「事故時点で何が積まれる予定だったか」を語る
出荷指示書は、配送業務の上流で作成される、いわば積載予定の設計図です。ここに記載された品目・数量・出荷時刻が、事故当日の積載内容を客観的に示す一次資料となります。「実際に何が積まれていたか」を直接示すものではありませんが、後述の配送伝票・納品書と突き合わせることで、積載内容の整合性を立証するパーツになります。
配送伝票(送り状)——「事故時点で実際に積まれていたもの」の核心証拠
配送伝票(運送業界で言う送り状・SI伝票・代引伝票など)は、出荷時に荷主・運送人・荷受人の三者を結ぶ書類で、品目・個数・配送先・引受日時が記載されます。
なかでも「引受日時」と「品目・個数」の組み合わせは、“事故当日のその時刻に、その品物が、その数量だけ車両に積まれていた”ことを直接立証する核心情報です。保険会社の査定担当者がもっとも重視するのは、まさにこの伝票の記載と現場写真の整合性です。
納品書・受領書——「破損したことで何が成立しなくなったか」を語る
納品書には、取引先・取引価格・納品予定日が記載されます。この書類は、積荷の経済的価値(単価)を示すと同時に、事故によって「成立するはずだった取引が成立しなかった」ことを語る基礎資料になります。
取引上の打撃(第2章2-4)を主張する際は、納品書とセットで、取引先からの契約解除通知や違約金請求書を提示することで、「事故 → 納品不能 → 取引解除 → 損害発生」という因果の鎖を補強できます。
商品台帳・仕入伝票——「単価」と「在庫上の位置づけ」を示す
再調達費用や卸売価格を算定する際の根拠は、自社で作成している商品台帳・仕入伝票・仕入請求書です。「いくらで仕入れたか」「現在の市場仕入価格はいくらか」を、第三者性のある書類で裏付けることで、被害者側の主張する損害額が単なる自己申告ではなく、客観的根拠を持つことが示せます。
4-3. 保険会社の査定担当者が見ているポイント
書類提出を受けた保険会社の査定担当者は、概ね次のような視点で書類を確認しています。ここを意識しておくと、こちらが何を補強すべきかが見えてきます。
- 書類の日付・時刻が、事故発生時刻と整合しているか(出荷から事故までの時間的近接性)
- 品目・数量が、現場写真の積載物と一致しているか(物理的整合性)
- 単価が、市場相場や同社の他取引と比較して合理的か(価格の妥当性)
- 書類同士が矛盾なく接続しているか(出荷指示書→配送伝票→納品書の流れ)
- 第三者(取引先・運送会社)が関与した書類か、自社内だけで完結する書類か
4-4. 書類不備で査定額が下振れする典型パターン
実務でよく見るのは、次のような書類不備による査定下振れです。
- 配送伝票の控えを荷主に渡してしまい、被害者側に控えが残っていない
- 出荷指示書がメール本文のみで、紙としても電子データとしても保存されていない
- 納品書を電話・口頭で済ませていて、書面化されていない
- 仕入価格を裏付ける書類が、長期間さかのぼれない(直近の取引しか残っていない)
いずれも、平時の業務記録体制で防げる種類の不備です。これが、次の第5章のテーマにつながります。
第5章 自営業者・個人事業主が「事故前」に整えておく備え
5-1. 交渉力は「事故後の対応」より「平時の記録体制」で決まる
ここまで、事故直後30分の現場記録、そして配送・取引書類の重要性を見てきました。しかし実のところ、これらの記録を有効に機能させるためには、事故が起きていない平時の業務記録体制が整っていることが大前提となります。
大手の運送会社や倉庫会社であれば、出荷管理システム・配車管理・在庫管理が自動的に記録される仕組みが整っています。他方、個人配送業者、軽貨物の個人事業主、あるいは自社の従業員が業務として配送を担っている中小規模の事業者では、この記録体制が属人的になりがちです。そして、属人的な記録は、いざ事故が起きると“あるはずの書類がない”という事態を招きやすいのです。
5-2. 平時から残しておきたい記録のチェックリスト
車載品の定期棚卸し(目安:月1回)
毎月決まった日に、車両に常時搭載している備品・工具・販売サンプル・予備在庫などをリスト化して写真と共に記録しておく方法です。「事故時点で何が積まれていたか」のうち、配送中の商品ではない車載品については、この月次棚卸し記録が唯一の立証手段になることがあります。
出荷ログのデジタル化
紙の出荷伝票は紛失・汚損のリスクがあります。スマートフォンのスキャンアプリ等で出荷時に伝票を撮影し、クラウドストレージに日付フォルダ単位で保存しておくと、後から検索しやすく、紛失のリスクも下がります。「事故当日の出荷分が、出荷時刻ベースですぐに引き出せる」状態にしておくことが理想です。
商品写真台帳(高額品・特殊品)
とくに単価が高い商品、特注品、再調達に時間がかかる商品については、平時から「商品の状態が正常であった」ことを示す写真台帳を残しておくと、「事故前から傷んでいたのではないか」という主張に対する反論材料になります。
取引先ごとの単価記録
同じ商品でも、取引先ごとに単価が異なるのが業務取引の現実です。「この商品はA社向けには卸単価600円、B社向けには700円」というように、取引先別の単価表を整備しておくと、損害額算定の根拠を示しやすくなります。
5-3. クラウド保存と二重化のすすめ
事故そのもので車両が大破した場合、車内に保管していた紙書類・端末類が損傷・紛失することは現実に起こります。重要書類は紙だけで保管せず、必ずクラウドストレージや自社サーバーにも保存しておくことを強くおすすめします。
とくに個人事業主の方は、「車両=事務所」になっているケースが多いため、車両被害が即「業務記録の喪失」につながりやすいという特性を意識しておくと安心です。
5-4. 法人と個人事業主で異なる留意点
法人(株式会社・合同会社等)の場合、損害賠償請求権の主体は法人になります。他方、個人事業主の場合は、「事業主個人」が請求の主体となるため、業務記録と個人の私物との区別が問題になることがあります。事故直後に「これは仕事用、これは私物」と明確に切り分けて記録しておくことで、後の交渉での無用な混乱を避けられます。
第6章 過失相殺と積荷損害の関係
6-1. 「自分にも過失がある」と思っても、まずは相談を
信号のない交差点での出会い頭、車線変更時の接触、後続車の急ブレーキ……業務配送中の事故では、被害者側にも一定の過失が認められるケースが少なくありません。そして、過失相殺が適用されれば、積荷損害もその割合に応じて減額されます。
ただし、過失割合は事故態様によって細かく類型化されており、保険会社が最初に提示する割合が、必ずしも妥当とは限りません。現場の状況証拠(信号サイクル、ブレーキ痕、停止位置など)によっては、被害者側の過失割合がより低く修正される余地があります。「自分も悪い」と感じていても、まずは弁護士に相談してから過失割合の妥当性を検証することをお勧めします。
6-2. 過失相殺の計算が積荷損害に与える影響
たとえば積荷損害の総額が100万円で、被害者の過失が30%とされた場合、請求できる金額は70万円となります。30%の過失を20%に下げられれば、回収できる金額は10万円増えることになります。積荷損害は一回の事故で数十万円から数百万円に上ることもあり、過失割合の数%の差が、現実の手取りに直結します。
第7章 保険会社との交渉でよくある争点と対応
7-1. 「再調達費用」か「卸売価格」か
保険会社は、できるだけ低い基準で算定したいと考えるのが通常です。そのため、被害者が再調達費用での算定を主張しても、卸売価格(より低い金額)での提示にとどめてくる場合があります。業務継続のために実際に再調達が必要であったこと、再調達した実績があることを領収書・請求書で示すと、交渉の説得力が増します。
7-2. 取引上の打撃の立証の壁
取引上の打撃は、認められれば賠償額が大きく伸びる可能性がある反面、因果関係の立証ハードルがもっとも高い項目でもあります。「事故さえなければ、その取引は失われなかった」と言えるだけの第三者書類が揃わない場合、この部分は争いの長期化を避けるためにあえて主張しない、という戦略判断もあり得ます。弁護士に相談する際は、この戦略判断についても率直に意見を求めると良いでしょう。
7-3. 査定額に納得できない場合の手段
保険会社の最終提示額に納得できない場合、選択肢としては、(1)交通事故紛争処理センターでのあっせん、(2)日弁連交通事故相談センターでの調停、(3)訴訟、などがあります。物損案件は人身案件と異なり、裁判基準と保険会社基準の格差が比較的小さい傾向にあるため、あっせん・調停での解決が現実的な選択肢になるケースが多いと言えます。
第8章 高松で交通事故・積荷損害の相談をする際のポイント
8-1. 物損案件にも対応している事務所を選ぶ
交通事故を扱う弁護士事務所は多くありますが、そのうち実際に物損案件——とりわけ事業者の積荷損害のような複雑案件——を継続的に扱っている事務所は限られます。相談前に、事務所のサイトで物損案件の取扱実績を確認しておくと、ミスマッチを避けられます。
8-2. 弁護士費用特約の有無を確認する
ご自身が加入されている自動車保険、あるいはご家族の自動車保険に「弁護士費用特約」が付帯されている場合、弁護士への相談料・着手金・報酬の多くを、保険会社が負担してくれるケースがあります。事業用車両の保険であっても、特約が付いていることはあります。「相談前に必ず保険証券を確認する」だけで、実質的な費用負担なしで弁護士に依頼できる可能性が見えてきます。
8-3. 地元・高松で相談するメリット
現場の道路状況、地元の取引慣行、香川県内の取引先との関係性——これらは、地元の弁護士の方が手触りを持って把握しています。現場検証や取引先への事実確認が必要になった場合の機動性も、地元事務所の強みです。
第9章 よくあるご質問(FAQ)
Q1. 自分の車両は無傷で積荷だけ壊れた場合でも、積荷損害は請求できますか?
はい、請求できます。車両損害の有無と積荷損害の請求可否は、法的には別の問題です。事故と積荷の破損との間に相当因果関係があれば、車両が無傷であっても積荷損害は賠償の対象となります。
Q2. 仕入時の領収書を紛失してしまった商品はどうなりますか?
領収書が手元になくても、取引銀行の入出金履歴、仕入先への問い合わせによる再発行、仕入先の請求書控え、過去の確定申告書類などから、仕入価格を立証する手段は残されています。ただし、立証ハードルは上がりますので、領収書類は原則として最低7年間は保存しておくことをお勧めします。
Q3. 取引先から違約金を請求された場合、それも加害者側に請求できますか?
可能性はあります。ただし、事故と違約金発生との間に相当因果関係があること、そして違約金の金額が過大でないことが認められる必要があります。違約金請求書・契約書・納期に関するやり取りなどの書類を整えて、弁護士にご相談ください。
Q4. 自分の車両保険(任意保険)で積荷は補償されますか?
通常の自動車保険では、業務用の積荷は補償対象外となっているのが一般的です。業務用の積荷を補償するためには、「貨物保険(運送保険)」「事業用動産総合保険」などの別保険が必要になります。現在加入している保険の補償範囲は、事故が起きる前に一度確認しておくことをお勧めします。
Q5. 加害者側の保険会社から直接電話がかかってきたら、どう対応すべきですか?
応対自体は問題ありませんが、その場で金額や過失割合について同意することは避けましょう。「弁護士・税理士・取引先と相談した上で、改めて回答する」と伝え、時間的余裕を持って判断する姿勢を保つことが、後の交渉で不利な立場に立たされないための基本姿勢です。
第10章 まとめ——“知っていれば守れる”積荷損害の実務
本記事では、業務配送中の交通事故で積荷が破損した場合の損害賠償について、(1)算定の基本ルール、(2)事故直後30分の現場記録、(3)配送伝票・納品書という核心書類、(4)平時の業務記録体制——という4つの軸で整理してきました。
積荷損害は、車両損害に比べて、被害者側に立証責任が重くのしかかる損害項目です。しかし、見方を変えれば、平時の記録体制と事故直後の現場対応が整っていれば、適正な賠償額を獲得できる余地が大きい領域でもあります。
「自分の業務形態だと、どこから手を付ければいいかわからない」「いま手元にある書類で、どこまで戦えるのか見立てがほしい」——そんなときは、ぜひ高松の弁護士にお気軽にご相談ください。事故前のご相談でも、事故直後のご相談でも、事業の実情に即した実務的なアドバイスをお伝えします。
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