交通事故の葬祭費基準は60万円までって本当?

2026.05.12

高松の交通事故では、被害者が死亡する例も多くあります。

ときには加害者まで死亡するケースもあります。

死亡した場合には、多くの賠償金が得られると思うかもしれません。 ※賠償金(ばいしょうきん)とは、事故などで損害を受けた人にお金でうめあわせることです。

でも、葬祭費(そうさいひ)に関しては、それほど多くありません。 ※葬祭費とは、お葬式やお墓などにかかる費用のことです。

人を死亡させたことへの補償(ほしょう)は、それなりに大きい金額です。 ※補償とは、損害をお金などでうめあわせることです。

しかし、葬儀費用だけを見ると、「一定の金額で十分」という考え方になってしまうようです。

確かに、葬儀の規模は、故人の生前の地位や人とのつながりによって大きく変わります。

ただ、それは個々の事情です。

ひとりの人間の価値を、社会的な立場で計算し直すのはおかしいという考え方もあります。

「命の値段に違いはない」という損害賠償の基本部分が、ブレてはならないのだと思います。

保険会社基準と裁判所基準ではこんなに違う

葬祭費の金額は、どの基準を使うかで大きく変わります。

保険会社が設定する「自賠責(じばいせき)基準」では、原則として60万円までです。 ※自賠責とは「自動車損害賠償責任保険」のことで、車を持つ人が必ず入る保険です。

弁護士がすすめる「裁判所基準(日弁連基準)」では、原則130万円です。 ※日弁連とは「日本弁護士連合会」のことで、弁護士の全国組織です。

上限では170万円まで認めようというものです。

両者には、実に大きな開きがあります。

ただし、自賠責基準でも、60万円を超える費用が立証できれば、妥当な実費が認められます。 ※立証(りっしょう)とは、事実を証明することです。

仏壇・墓石・四十九日―葬祭費の境界線

「葬祭費=葬儀社に払うお金だけ」と思っていませんか?

実は、認められる費用の範囲はもっと広いです。

裁判で認められやすい費目(ひもく)は、次のようなものです。 ※費目とは、お金の使いみちの種類のことです。

祭壇(さいだん)、霊柩車(れいきゅうしゃ)、通夜と葬儀の費用、初七日法要、墓石、仏壇など。 ※祭壇とは、葬儀で故人をまつる台のことです。 ※霊柩車とは、ご遺体を運ぶ車のことです。

一方で、認められにくい費目もあります。

たとえば、永代供養料(えいたいくようりょう)、年忌法要(ねんきほうよう)の費用、香典返し、特別に豪華な墓石などです。 ※永代供養料とは、お寺などに長い期間、お墓の管理をお願いするためのお金です。 ※年忌法要とは、一周忌や三回忌など、亡くなった後の節目に行う法要です。

ここが争点(そうてん)になりやすいポイントです。 ※争点とは、もめごとで意見が分かれているところです。

なぜ豪華な墓石は認められにくいのでしょうか。

それは、賠償金が「相当な範囲」までと決まっているからです。

行きすぎた支出は、加害者に負担させるのは公平ではないと考えられています。

葬儀社の請求書を「立証資料」にする頼み方

「領収書を1枚もらえばOK」と思っていませんか?

実は、請求書の書き方ひとつで、認められる金額が変わることがあります。

葬儀社に頼むときは、内訳(うちわけ)をしっかり分けてもらうことが大切です。 ※内訳とは、合計金額をこまかい項目ごとに分けたものです。

具体的には、次のような区分です。

祭壇費、接待費、式場使用料、宗教関連の支出、飲食費。

これらが「一式◯◯円」とまとめて書かれてしまうと、損保(そんぽ)の査定で減らされる可能性があります。 ※損保とは「損害保険会社」のことで、事故などの補償を行う会社です。

なぜなら、接待費や飲食費の一部は、葬祭費として認められにくいからです。

逆に、認められやすい費目だけを示すためには、内訳が必要です。

葬儀社に発注(はっちゅう)する時点で、「項目ごとに分けて記載してください」と伝えてください。 ※発注とは、商品やサービスを注文することです。

実際の事例でも、一式記載のせいで減額された例と、内訳を直してもらって認定が変わった例があります。

葬儀当日にしか残せない5つの記録

「賠償請求は四十九日が済んでから考えればいい」と思っていませんか?

実は、葬儀当日にしか残せない記録があります。

ひとつ目は、参列者の数の記録です。

参列者が多いほど、ある程度の規模の葬儀だったと示せます。

ふたつ目は、会場の規模が分かる写真です。

会場の広さや祭壇の様子を写真で残しておくと、後で説明しやすくなります。

みっつ目は、宗教者への支払いメモです。

お坊さんや神主さんへのお布施(ふせ)など、領収書が出ないお金は自分でメモをとります。 ※お布施とは、お坊さんなどへの謝礼として渡すお金です。

よっつ目は、立替(たてかえ)の明細です。 ※立替とは、本来払うべき人のかわりに、一時的にお金を払っておくことです。

家族や親族が立て替えた費用を、誰が・いつ・いくら払ったか書いておきます。

いつつ目は、当日の支出の領収書一式です。

タクシー代、食事代、宿泊費まで、すべて残しておきます。

これらの記録は、後から作ろうとしても作れません。

葬儀当日に、誰かが意識して「記録係」を引き受けることが必要です。

戒名料・お布施―領収書のない費用を立証する

「領収書がなければ請求できない」と思っていませんか?

宗教関連の支出は、領収書が出ないことが多いです。

たとえば、戒名料(かいみょうりょう)やお布施です。 ※戒名とは、亡くなった人にお坊さんがつけてくれる仏教の名前のことです。

でも、いくつかの方法で立証することができます。

ひとつ目は、寺院に「証明書」を作ってもらうことです。

「◯◯円のお布施を受け取りました」という文書を出してくれる場合があります。

ふたつ目は、菩提寺(ぼだいじ)の控えを確認することです。 ※菩提寺とは、先祖代々お世話になっているお寺のことです。

お寺の側で記録を残していることもあります。

みっつ目は、振込記録を残すことです。

現金で渡すよりも、振り込みで支払えば、銀行の記録が残ります。

よっつ目は、宗派(しゅうは)の慣行(かんこう)を主張することです。 ※宗派とは、仏教やキリスト教などの中でのグループ分けです。 ※慣行とは、ふだんから行われているならわしのことです。

「この宗派では戒名料の相場が◯◯円である」と説明できれば、認められやすくなります。

領収書がなくても、これらの方法を組み合わせれば、立証の可能性は十分にあります。

まとめ

葬祭費の60万円というのは、あくまでも自賠責基準の原則です。

裁判所基準であれば130万円、上限170万円までが認められます。

立証資料があれば、自賠責基準でも60万円を超える金額が認められる場合があります。

大切なのは、葬儀当日からの記録と、内訳がはっきりした請求書です。

そして、領収書のない支出も、工夫しだいで立証できます。

「もう終わったことだから」とあきらめる前に、しっかり整理してみてください。

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