高松の交通事故で2台以上の車にケガをさせられたとき、どこに請求する?
はじめに:こんな場面、想像してみてください
高松の街を歩いていたとき、横断歩道で車にはねられてしまった。
しかも、よく見ると、加害者の車は1台ではなく、2台もからんでいた。
または、自転車で走っていたら、後ろから来た車にぶつけられ、その勢いで別の車にも巻きこまれた。
こんな事故にあったら、「どっちの車の運転手に、治療費を請求すればいいの?」と困ってしまいますよね。
この記事では、加害者が複数いる交通事故について、わかりやすく説明していきます。
交通事故にはいろいろなパターンがある
交通事故と一口に言っても、いろいろなシチュエーションがあります。
車と車がぶつかる事故。
車が人をはねてしまう事故。
車と自転車がぶつかる事故。
高松でも、毎日のようにさまざまな事故が起こっています。
ふつう、事故は「加害者1人(1台)」と「被害者1人(1台)」の組み合わせで起こります。
でも、現実には、加害者が複数いることもあるのです。
たとえば、信号待ちの車に後ろの車がぶつかり、その勢いで前の歩行者をはねてしまう、というような場合です。
このように、加害者が2人以上いる事故では、被害者は「どこに損害賠償を請求すればいいんだろう?」と迷ってしまいます。
※損害賠償(そんがいばいしょう)とは:相手にあたえた損害(ケガや車のこわれなど)に対して、お金で弁償することです。
「共同不法行為」ってなに?
加害者が複数いる事故は、法律の世界では「共同不法行為(きょうどうふほうこうい)」と呼ばれます。
※共同不法行為とは:2人以上の加害者が、いっしょになって他人に損害をあたえてしまう行為のことです。
たとえば、A車とB車が出会い頭にぶつかり、その衝撃でA車が歩道に乗り上げて歩行者のCさんをはねてしまった、という場合を考えてみましょう。
このとき、Cさんから見れば、A車もB車も「自分にケガをさせた加害者」です。
A車だけが悪いとも言えないし、B車だけが悪いとも言えません。
両方の車がいたから、この事故が起きてしまったのです。
このようなケースが、まさに共同不法行為にあたります。
自賠責保険ってどんな保険?
ここで、自賠責保険についても説明しておきましょう。
※自賠責保険(じばいせきほけん)とは:すべての自動車に必ずかけなければならない保険のことです。
自賠責保険は、法律で「加入しないと車を運転してはいけません」と決められています。
なぜなら、事故の被害者を守るための、いちばん基本となる保険だからです。
もし自賠責保険に入らないで運転すると、罰金やうんてん免許の取り消しになってしまいます。
つまり、ちゃんと走っている車には、必ずこの保険がかかっている、ということです。
加害者が複数いる場合、どこに請求する?
それでは本題です。
加害者が2人(2台)以上いる場合、被害者はどこに損害賠償を請求すればよいのでしょうか?
答えは、こうです。
「ケガによる損害が、自賠責保険1台分の上限内におさまるなら、どちらか1台の自賠責保険に請求すればOK」。
「1台分では足りない場合は、もう1台の自賠責保険にも追加で請求できる」。
これが基本のルールです。
具体的な金額で考えてみよう
言葉だけだとイメージしづらいので、具体的な金額で考えてみましょう。
自賠責保険のケガに対する保険金は、上限が「120万円」と決められています。
では、加害車両が2台あった場合は、いくらまで請求できるでしょうか?
答えは、120万円×2台=「240万円」です。
加害車両が3台なら、120万円×3台=「360万円」まで請求できます。
つまり、加害者の車が多ければ多いほど、自賠責保険から受け取れる金額の上限も大きくなる、ということなのです。
これは、被害者にとっては大事なポイントです。
なぜなら、ケガが重ければ重いほど、治療費もたくさんかかります。
1台分の120万円では足りないようなケガでも、2台分・3台分なら十分にカバーできる可能性があります。
請求の書類は何通も用意するの?
ここで、ひとつ疑問が出てきます。
「複数の保険会社に請求するなら、書類も何通も用意しないといけないの?」
正直、書類づくりはとても大変な作業です。
ケガをして治療中の被害者が、何通もの書類をそろえるのは負担が大きすぎますよね。
でも、心配いりません。
実は、1台目の加害者の保険会社あてに、しっかり書類をそろえておけば、2台目以降はかなりラクになるのです。
1台目の保険会社あてに用意する書類は、「立証書類(りっしょうしょるい)」と呼ばれます。
※立証書類とは:事故の状況やケガの内容を証明するための書類のことです。
具体的には、診断書や治療費の明細、事故の状況をしめす書類などがふくまれます。
これらをきちんとそろえて1台目の保険会社に提出すれば、2台目の保険会社には次の3つだけ用意すればOKです。
1つ目は「請求書」。
2つ目は「交通事故証明書のコピー」。
3つ目は「共同不法行為による請求である」ことを説明する書類。
たったこれだけです。
「これしかいらないの?」と思うかもしれませんが、本当にこれだけで大丈夫です。
なぜなら、立証書類はすでに1台目の保険会社にそろっているので、2台目の保険会社はその情報をもとに判断できるからです。
ここが大事!事故のパターンを見きわめよう
ここまで読んで、「なるほど、加害者が2台以上いる事故は、こうやって請求すればいいのか」と思った方もいるでしょう。
でも、ちょっと待ってください。
実は、「2台以上の車によって事故が起きた」と一口に言っても、大きく分けて2つのパターンがあるのです。
そして、このパターンによって、法律的なあつかいがかなり変わってきます。
【パターン1】ひとつの事故で、加害車両が2台以上いた場合
【パターン2】2つ以上の事故が、時間をあけて別々に起きた場合
パターン1は、ここまで説明してきたような「共同不法行為」のケースです。
問題はパターン2です。
パターン2は、「異時共同不法行為(いじきょうどうふほうこうい)」と呼ばれます。
※異時共同不法行為とは:別々の時に起きた2つの事故が、結果としてひとつの損害(同じ部位のケガなど)につながっている場合のことです。
「異時」というのは、「時が異なる」という意味です。
つまり、同時に起きた事故ではなく、時間をあけて起きた事故、ということです。
このパターン2が、実はとてもやっかいなのです。
ケース1:治療中に2回目の事故にあったら?
具体的なケースで考えてみましょう。
ある日、Dさんは交通事故にあって首をケガしてしまいました。
毎週、整形外科に通って治療を続けています。
ところが、まだ治療中の3か月後、Dさんは別の交通事故にもあってしまいました。
しかも、同じ首をまた痛めてしまった……。
こんな場合、最初の事故と2回目の事故、どちらの加害者に、どれだけ請求すればいいのでしょうか?
これは典型的な「異時共同不法行為」のケースです。
いまの裁判では、このようなケースを単純な共同不法行為としてはあつかいません。
そのかわり、「それぞれの事故が、ケガにどれくらい影響しているか」を、事故ごとに判断していきます。
これを「寄与度(きよど)」と呼びます。
※寄与度とは:それぞれの事故が、ケガにどれくらいの割合で影響をあたえたか、ということです。
たとえば、「1回目の事故の寄与度が70%、2回目の事故の寄与度が30%」というような判断をするわけです。
寄与度はどうやって決まる?
「寄与度」と言われても、どうやって決めるのか、想像しにくいですよね。
寄与度は、次のようなさまざまな要素から、客観的に判断されます。
1つ目は、事故の発生状況。
どんな状況で、どのように事故が起きたのか、ということです。
2つ目は、事故の規模。
大きな事故だったのか、軽い接触事故だったのか、によって、ケガへの影響も変わってきます。
3つ目は、ケガをした部位。
どこをケガしたのか、そして、1回目と2回目の事故で同じ場所をケガしたのか、ということです。
4つ目は、治療の内容。
どのような治療を受けたのか、入院が必要だったのか、通院だけで済んだのか、などです。
5つ目は、カルテに書かれているケガの程度。
※カルテとは:医師が患者の病気やケガ、治療内容などを記録するための医療記録のことです。
カルテには、医師が診察した結果が細かく書かれています。
そのため、ケガがどれくらい重かったのか、客観的に判断する材料になります。
6つ目は、処方された薬の内容。
強い薬が処方されているなら、ケガもそれなりに重かったと考えられます。
7つ目は、画像所見(がぞうしょけん)。
※画像所見とは:レントゲンやMRIなどの画像から、医師が「どこがどうなっているか」を読みとった内容のことです。
レントゲンやMRIの画像は、ケガの状況を目で見てわかる証拠になります。
骨が折れているのか、筋肉がいたんでいるだけなのか、画像からハッキリわかります。
これらの要素を総合して、「1回目と2回目の事故、どちらのケガの方が大きかったか」を判断していくのです。
異時共同不法行為のむずかしさ
正直に言うと、異時共同不法行為のケースは、裁判になるとかなり大変です。
なぜなら、ケガの原因を時間ごとに切り分けて立証するのは、とてもむずかしい作業だからです。
たとえば、最初の事故で首をケガして、3か月後にまた首をケガした、という場合。
「いま痛いのは、最初の事故のせい?それとも2回目の事故のせい?」
これを医学的に証明するのは、とても難しいことなのです。
ここで重要になるのが、整形外科のカルテと画像所見です。
最初の事故のあとに撮ったMRIと、2回目の事故のあとに撮ったMRIを比べることで、どこがどう変化したか、わかります。
また、カルテに「治療がほぼ終わりかけていた」と書かれていれば、「2回目の事故が新たなケガをつくった」と判断されやすくなります。
逆に、カルテに「まだ症状が残っていた」と書かれていれば、両方の事故の影響がまだあった、と判断されることもあります。
このように、カルテや画像が、寄与度を判断するうえでとても大事な証拠になるのです。
ですから、もし治療中に別の事故にあってしまったら、すぐに医師に伝えてカルテに記録してもらうことが大切です。
ケース2:片方とだけ先に示談したら?
もうひとつ、注意してほしいケースがあります。
加害者が2人以上いる事故で、「片方とだけ先に示談(じだん)してしまう」というケースです。
※示談とは:裁判をせずに、当事者どうしの話し合いで損害賠償の内容を決めることです。
たとえば、A車とB車が原因で1つの事故が起きたとします。
被害者のEさんが、A車の加害者とだけ先に話し合って、示談書にサインしてしまった。
そして、あとからB車の加害者にも請求しようとした……。
実は、これはあまりおすすめできない進め方です。
なぜでしょうか?
その理由は、「清算条項(せいさんじょうこう)」というものにあります。
※清算条項とは:「この示談書に書かれていることのほかには、もう請求しません」という約束の文章です。
示談書には、ほとんどの場合、この清算条項が入っています。
もしEさんが、A車の加害者と示談するときに、ケガの全額を清算してしまっていたとしたら……。
B車の加害者に対して、追加で請求できる金額は限られてしまう可能性があります。
逆に、A車との示談金が少なすぎても、B車との関係でややこしい問題が出てきます。
つまり、片方とだけ先に示談すると、もう片方との交渉や請求のときに、法律的にむずかしい判断を迫られることになるのです。
経験のある弁護士はどうするか?
では、加害者が2人以上いる場合、どう進めるのがいちばんいいのでしょうか?
経験のある弁護士であれば、最初から加害者全員を相手にして、裁判にもっていきます。
「全員いっしょに?」と思うかもしれませんが、これにはちゃんと理由があります。
2人以上の加害者であっても、ひとつの裁判でまとめて相手にしてしまえば、判決もひとつにまとまります。
「A車の加害者は何%、B車の加害者は何%の責任を負う」という形で、裁判所がスッキリと判断してくれるのです。
これが、いちばん法律的にきれいな解決方法です。
逆に、片方ずつバラバラに進めると、後から「言った・言わない」「あの示談書のせいで請求できない」など、トラブルが起きやすくなります。
ですから、加害者が複数いる事故では、最初から全体を見すえた対応がとても大事になります。
こんなとき、どうすればいい?
ここまで読んで、「なんだか難しそう……」と感じた方もいるかもしれません。
たしかに、加害者が複数いる事故、特に異時共同不法行為のケースは、専門的な知識が必要になります。
もし高松で、こんな事故にあってしまったら、まずは落ち着いて次のステップで対応しましょう。
ステップ1:警察に連絡して、事故の記録をきちんと残してもらう。
事故ごとに、必ず警察を呼ぶことが大事です。
ステップ2:すぐに病院に行って、ケガの状態を医師に診てもらう。
特に、すでに別の事故で治療中なら、その旨を必ず医師に伝えましょう。
ステップ3:カルテと画像をしっかり残しておく。
これらが、あとで寄与度を判断する大事な証拠になります。
ステップ4:示談する前に、必ず弁護士に相談する。
特に、加害者が複数いる場合は、相談なしに示談書にサインしないようにしましょう。
まとめ
最後に、この記事のポイントをまとめます。
・加害者が2人以上いる交通事故は「共同不法行為」と呼ばれます。
・自賠責保険は、加害車両の台数ぶん請求できます(120万円×台数)。
・書類は、1台目に立証書類をそろえれば、2台目以降は3つだけでOKです。
・ただし、「1つの事故」か「時間をあけた2つの事故」かで、あつかいが変わります。
・時間をあけた2つの事故(異時共同不法行為)では、「寄与度」の判断がカギになります。
・カルテや画像所見が、寄与度判断の大事な証拠になります。
・片方の加害者とだけ先に示談するのは、避けたほうが安全です。
・経験のある弁護士なら、加害者全員をまとめて裁判にもっていきます。
加害者が複数いる交通事故は、想像以上に複雑です。
ひとりで悩まずに、早めに専門家に相談することが、安心な解決への近道です。
高松で、もしこのような事故にあってしまったら、ぜひ参考にしてください。
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