後遺障害12級完全ガイド

2026.05.07
後遺障害12級完全ガイド|認定の意味、慰謝料・逸失利益・示談交渉のすべてを弁護士が解説

交通事故で後遺障害12級に認定された方、あるいはその可能性がある被害者の方に向けて、12級の意味、認定のポイント、慰謝料・逸失利益・示談交渉で注意すべき点を、被害者側に立つ弁護士の視点からお伝えします。
この記事は、後遺障害12級についての情報を網羅的に整理した、ピラーページ(専門サイト群の中心となる記事)です。それぞれの号数の詳細、損害額の具体的な計算方法、立場別の論点については、関連する詳細記事(サテライトページ)へのリンクをご案内しています。

目次

第1章 はじめに ― 後遺障害12級は「ゴール」ではなく「本当の交渉のスタート」である

なぜ「12級が取れた」と聞いて安心してはいけないのか

交通事故で大きなケガを負ったとします。
長い治療を経て、ようやく後遺障害12級の認定が下りた。
「これで一区切りついた」とほっと胸をなで下ろす方は少なくありません。
しかし、被害者側に立って多くの事案を扱ってきた弁護士の目から見ると、12級認定が下りた瞬間は「終わり」ではなく「ここからが本当の交渉の始まり」です。
なぜなら、後遺障害12級は、後遺障害等級の中でも賠償額が大きく動く等級だからです。
慰謝料、そしてとりわけ逸失利益(後遺障害が残ったことで将来得られなくなる収入)を合わせると、賠償額は数百万円から、場合によっては1,000万円を超える金額になります。
そして、賠償額が大きくなるということは、保険会社にとっては支払額が大きくなるということです。
だからこそ、12級が認定された後は、保険会社の対応は、それまでと比べて目に見えて慎重に、そして厳しくなります。

認定後にこそ激しくなる保険会社の「払い渋り」

12級認定が下りた後の示談交渉では、保険会社は次のような対応を取ってくることがよくあります。

  • 慰謝料を裁判所基準ではなく、自社の任意保険基準で提示してくる
  • 逸失利益の「労働能力喪失期間」を、本来より短く見積もってくる
  • 「神経症状の場合は5年程度で慣れるはずだ」と主張して、喪失期間をさらに削ろうとする
  • 事故当時に収入が低かった被害者に対して、その低い金額を将来にわたって基礎収入とすべきだと主張してくる
  • 過失割合を被害者に不利な方向に押し込もうとしてくる

これらは、決して保険会社の担当者が悪意で行っているわけではありません。
保険会社にも会社としての立場があり、支払額を抑えることは業務の一部です。
しかし、被害者にとっては、ここで提示された金額をそのまま受け入れるのか、あるいは適正な賠償額を求めて交渉するのかで、最終的に手元に残る金額が大きく変わります。
「12級が取れたから安心」ではなく、「12級が取れたからこそ、ここからの交渉が決定的に重要になる」というのが、実務の現実です。

弁護士は12級被害者のために何ができるのか ― 被害者が得られる具体的なメリット

ここで、多くの被害者の方が抱く素朴な疑問にお答えしておきたいと思います。
「弁護士に相談すると、具体的に何が変わるのか」という疑問です。
12級事案で弁護士が果たせる役割は、大きく分けて次の6つです。

1. 適正な等級認定への支援

後遺障害の等級は、自賠責保険の調査事務所が、提出された書類に基づいて判断します。
つまり、提出する書類の内容次第で、認定結果が変わり得るということです。
後遺障害診断書の記載に不足がないか、必要な検査結果が揃っているか、医学的所見と症状の因果関係が明確に書かれているか ― こうした点を被害者請求の段階で整えることで、適正な等級認定の可能性を高められます。

2. 慰謝料を裁判所基準に引き上げる

慰謝料には、自賠責基準・任意保険基準・裁判所基準(弁護士基準)の3つがあります。
12級の場合、裁判所基準と任意保険基準では、慰謝料だけで100万円以上の差が生じることが珍しくありません。
弁護士が交渉に入ることで、裁判所基準による解決を目指すことが可能になります。

3. 逸失利益で保険会社の主張を切り崩す

12級では、逸失利益が賠償額の中核を占めます。
労働能力喪失期間、基礎収入、喪失率 ― これらの一つひとつで保険会社は不利な主張をしてきます。
被害者ご本人が、こうした論点で保険会社と対等に渡り合うのは、率直に申し上げて困難です。
弁護士は裁判例の知識と交渉経験をもって、保険会社の主張を一つひとつ検証し、反論していきます。

4. 過失割合の交渉

歩行者・自転車事故では、過失割合が賠償額に大きく影響します。
保険会社が提示してくる過失割合は、必ずしも実際の事故状況を正確に反映したものではありません。
ドライブレコーダー、防犯カメラ、実況見分調書などの客観証拠を精査することで、適正な過失割合を主張することができます。

5. 画像読影など医療面の専門家との連携

12級認定では、MRIなどの画像所見の有無が決定的な意味を持つことがあります。
整形外科の主治医が「異常なし」と読影した画像でも、画像診断の専門医(放射線科医など)が再読影すると、異常所見が見つかることがあります。
こうした医療専門家との連携を持つ弁護士は、画像所見の壁を乗り越える戦い方ができます。

6. 被害者が得られる「もうひとつの大きなメリット」 ― 交渉から解放される精神的な余裕

ここまでは賠償額に関わるメリットを述べてきましたが、被害者の方とお話ししていて、もう一つ大きいと感じるメリットがあります。
それは、保険会社とのやりとりから解放されることです。
事故から症状固定まで、被害者は治療と仕事の両立で疲れ切っています。
そこに保険会社からの電話、書面、説明、提案が続きます。
一つひとつに返答し、判断を求められる ― これは健康な人にとっても重い負担で、後遺障害が残った被害者にとっては、それ自体が回復の妨げになりかねません。
弁護士に依頼すると、保険会社との連絡窓口は弁護士になります。
被害者は、本来集中すべきこと ― 体の回復、家族との時間、仕事の立て直し ― に意識を向けられるようになります。
これは数字には表れませんが、12級事案を多く扱っている立場から見て、決して軽視できないメリットです。

この記事の読み方

この記事は、後遺障害12級に関する情報を網羅的に整理したピラーページです。
読み方は2通りあります。
ひとつは、段階に沿って読む方法です。
まだ治療中の方は第5章・第6章から、これから後遺障害申請をする方は第6章から、すでに12級認定を受けて示談交渉を控えている方は第7章から第10章を中心に読み進めると、ご自身の状況に直結する情報を得られます。
もうひとつは、関心のある章から読む方法です。
各章は独立して読めるように構成しています。
目次から気になる項目を選んで、そこから読み始めていただいて構いません。
各号(12級1号、12級6号など)の詳しい解説、損害額の具体的な計算方法、自営業者・大学生・パート勤務の方など立場別の論点、弁護士費用特約の使い方については、より専門的な解説を別記事(サテライトページ)に用意しています。
本記事の各章から該当する別記事へのリンクを置いていますので、関心のあるテーマはそちらでさらに深く読み進めていただけます。

香川県・高松市で被害者側に立ってきた弁護士からの視点

筆者は、香川県高松市で交通事故被害者側に立った弁護活動を続けている弁護士です。
これまで、自動車対歩行者、自動車対自転車の事故で12級認定を受けた被害者の方を中心に、多くの示談交渉・訴訟を経験してきました。
その経験を通じて感じるのは、12級事案では「弁護士の力量によって結果が変わる幅」が、ほかの等級と比べても大きいということです。
慰謝料の金額、逸失利益の計算、過失割合、画像所見の評価 ― そのいずれもが、保険会社との交渉や裁判での立証次第で動きます。
この記事では、そうした実務の現実を踏まえて、「12級被害者が知っておくべきこと」を、できるだけ被害者目線で、率直にお伝えしていきます。
記事を読み終えたとき、ご自身の状況を整理し、「次に何を確認すればよいか」が見えるようになっていれば、書き手としてこれに勝る喜びはありません。

第2章 後遺障害 ― 制度の全体像

後遺障害等級制度の仕組み

交通事故で大きなケガを負ったとします。
長く治療を続けても、症状が完全には消えない。
そういうとき、残ってしまった症状を法律的に評価する仕組みがあります。
それが「後遺障害等級制度」です。
この制度の出発点は、自賠責保険(じばいせきほけん)です。

用語解説:自賠責保険
すべての自動車・バイクの所有者が、必ず加入しなければならない保険のこと。交通事故の被害者に、最低限の補償を届けるための制度です。

後遺障害が残った場合、その症状の重さに応じて「等級」が決まります。
そして、その等級に応じた金額が、自賠責保険から支払われます。
実際に等級を判断するのは、「自賠責損害調査事務所」という機関です。
ここに、被害者本人や保険会社が、後遺障害診断書や検査結果などの書類を提出します。
調査事務所は、提出された書類を審査して、等級を決定します。
ここで大切なポイントがあります。
それは、自賠責保険で認定された等級が、その後の示談交渉や裁判の出発点になるということです。
任意保険会社との交渉でも、訴訟になっても、自賠責の等級が前提として動きます。
だからこそ、最初の等級認定をどう取るかが、その後のすべての交渉に影響するのです。

1級から14級までの中で12級が占める位置

後遺障害の等級は、1級から14級まであります。
数字が小さいほど、症状が重いとされています。
1級は、寝たきりで介護が必要になるような、最も重い等級です。
14級は、最も軽い等級です。
では、この14段階の中で、12級はどこに位置するのでしょうか。
一言で表すと、12級は「中重度の入口」です。
12級の上の等級(11級から1級まで)は、もっと重いケースを扱います。
たとえば、複数の関節がほとんど動かなくなる、片目を失明する、神経系統に著しい障害が残る ― そういった、外見からも明らかに重大とわかる障害が、11級以上の領域です。
一方、12級の下の等級(13級・14級)は、もう少し軽いケースを扱います。
軽い機能障害や、痛みやしびれはあっても画像などで裏づけが取れないケースが中心です。
つまり12級は、その中間にあたります。
「日常生活はなんとか送れる。でも、明らかに事故前と同じ体ではなくなった」。
そういうレベルの障害が、12級として認定されます。
具体的には、次のようなケースが12級の典型例です。

  • 骨折した部分に変形が残った
  • 関節の動く範囲が、健康な側の4分の3以下になった
  • 痛みやしびれが、MRIなどの画像所見ではっきり裏づけられた
  • 顔に目立つ傷跡が残った

このように、外から見ても、医学的に見ても、客観的に確認できる障害があるケースです。

12級と14級の決定的な違い ― 賠償額に生じる桁違いの差

12級の位置を理解する上で、ぜひ実感していただきたいことがあります。
それは、12級と14級では、賠償額が桁違いに変わるという事実です。
まず、慰謝料を見てみましょう。
ここで使う基準は「裁判所基準(弁護士基準)」と呼ばれるものです。
裁判で認められる、被害者にとって最も有利な基準です。

等級 後遺障害慰謝料(裁判所基準・目安)
12級 約290万円
14級 約110万円

慰謝料だけで、180万円もの差があります。
しかし、本当に大きな差は、慰謝料ではありません。
「逸失利益(いっしつりえき)」に表れます。

用語解説:逸失利益
後遺障害が残ったために、将来得られなくなる収入のこと。事故さえなければ得られたはずの収入を、補償する制度です。

逸失利益を計算するときに、「労働能力喪失率」という数字を使います。
労働能力喪失率とは、後遺障害によって、働く能力がどれくらい失われたかを示す数字です。

等級 労働能力喪失率(基準)
12級 14%
14級 5%

12級は14級の約2.8倍です。
しかも、12級の場合は、この能力が失われている期間も長く認められやすい傾向があります。
そのため、逸失利益の差はさらに広がります。
具体的な数字でイメージしてみましょう。
たとえば、年収500万円の40代の方が、12級認定を受けたとします。
この場合、逸失利益の目安は、およそ1,000万円前後になります。
ところが、同じ方が14級だと、200万円台にとどまります。
つまり、慰謝料と逸失利益を合わせると、こうなります。
12級と14級では、1,000万円以上の差が生じることが珍しくありません。
なぜこれほど差が開くのでしょうか。
理由は、12級と14級の「証明のされ方」の違いにあります。
12級は、「医学的な裏づけのある障害」として扱われます。
たとえば、MRIで神経の異常がはっきり写っている。
骨が変形しているのが画像で確認できる。
こうした、誰が見ても確認できる証拠がある障害です。
これを法律実務では「他覚的所見(たかくてきしょけん)」と呼びます。

用語解説:他覚的所見
本人の訴えだけでなく、医師が客観的に確認できる症状の証拠のこと。MRIなどの画像で確認できる異常、医学的な検査で確認できる所見などを指します。

これに対して、14級は、神経症状などの自覚症状はあるけれど、他覚的所見では裏づけられないケースを扱います。
この「他覚的所見の有無」という壁が、12級と14級を分けています。
そして、この壁こそが、12級認定をめぐる争いの中心にあります。
(この壁の正体と、どう乗り越えるかについては、第10章で詳しくお伝えします。)
被害者の方にお伝えしたいことは、二つあります。
ひとつは、12級の認定を受けたということは、それ自体が極めて大きな意味を持つということです。
もうひとつは、その認定の重みを、正当に賠償額に反映させるためには、ここから先の交渉が決定的に重要になるということです。

第3章 後遺障害12級に該当する症状の全体像 ― 号数別の概観

後遺障害12級は、ひとつではありません。
12級の中に、さらに「号数」という細かい分類があります。
12級1号、12級2号、12級3号……というように、14個の号数に分かれています。
どの号数にあたるかによって、認定のポイントも、争われやすい論点も変わってきます。
この章では、それぞれの号数がどんな障害を扱っているのかを、ざっと地図のように見ていきましょう。
ご自身の症状がどの号数にあたりそうか、当たりをつける手がかりにしてください。
なお、各号数の詳しい認定基準・慰謝料・逸失利益・争われやすい論点については、号数ごとに別の解説記事(サテライトページ)を用意しています。
該当する号数のところに、そのリンクを置いていますので、関心のある号数についてはそちらで深く読み進めてください。

12級1号 眼の障害

12級1号は、眼の障害を扱う号数です。
「1眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの」「1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの」が対象になります。
簡単に言うと、片方の目のピントを合わせる機能が大きく落ちた場合や、まぶたがうまく動かなくなった場合です。
事故で頭部や顔面に強い衝撃を受けたケースで問題になることが多い障害です。
→ 詳しくは「後遺障害12級1号「眼の障害」とは?」をご覧ください。

12級2号〜4号 耳・鼻・口の障害

12級2号から4号までは、耳・鼻・口の障害を扱います。
それぞれ、次のような内容です。

  • 12級2号 7歯以上に対し歯科補綴(ほてつ)を加えたもの。つまり、7本以上の歯を入れ歯やかぶせ物などで治療した場合です。
  • 12級3号 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの。つまり、片方の耳の形が大きく失われた場合です。
  • 12級4号 鎖骨等の変形障害(後述の12級5号に統合される論点として、ここではいったん飛ばします)。

これらは、自動車対歩行者・自動車対自転車事故で顔面を強打したケースなどで問題になります。
特に歯の障害(12級2号)は、見落とされやすい等級です。
折れた歯を治療しただけで終わらせず、後遺障害として申請できないかを検討する価値があります。

12級5号 鎖骨・胸骨・肋骨等の変形

12級5号は、「鎖骨、胸骨、ろっ骨、肩こう骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの」を対象とします。
簡単に言うと、これらの骨が折れて治った後に、目で見て、または画像で見て、はっきりと変形が残った場合です。
歩行者や自転車利用者が自動車にはねられた際に、鎖骨や肋骨を折るケースは多くあります。
そのうち、変形がはっきり残ったものが12級5号の対象になります。

12級6号 上肢の三大関節の機能障害(肩・肘・手関節)

12級6号は、腕の関節の動きが悪くなった場合を扱う号数です。
「上肢の三大関節」とは、肩関節・肘関節・手関節(手首)の3つの関節のことを指します。
このうちのどれか1つの関節について、動く範囲が「健康な側の4分の3以下」に制限された場合に、12級6号が認定されます。
可動域(かどういき)、つまり関節が動く範囲を測定して判定します。
この測定がきちんと行われたかどうかが、認定を分ける重要なポイントになります。
→ 詳しくは「「上肢の三大関節」(肩・肘・手関節)の可動域制限(後遺障害12級6号)について」をご覧ください。

12級7号 下肢の三大関節の機能障害(股・膝・足関節)

12級7号は、12級6号の「脚バージョン」です。
「下肢の三大関節」とは、股関節・膝関節・足関節(足首)の3つの関節を指します。
このうちのどれか1つの関節の動く範囲が、健康な側の4分の3以下に制限された場合に12級7号が認定されます。
歩行者・自転車事故で多く見られる障害です。
特に、膝の靭帯損傷や足首の骨折が治った後、可動域が戻らないケースで問題になります。
→ 詳しくは「下肢の関節機能障害について(後遺障害12級7号)」をご覧ください。

12級8号 長管骨の変形

12級8号は、「長管骨(ちょうかんこつ)に変形を残すもの」を対象とします。
長管骨とは、上腕骨・前腕骨(橈骨・尺骨)・大腿骨・下腿骨(脛骨・腓骨)など、腕や脚の長い骨のことです。
これらの骨を骨折し、治った後にはっきりとした変形が画像で確認できる場合に、12級8号が認定されます。
「変形」と一言でいっても、どの程度の変形が必要か、どの方向への変形か、で判断が分かれます。
→ 詳しくは「後遺障害12級8号「長管骨に変形を残すもの」とは?」をご覧ください。

12級9号〜11号 手指の欠損・機能障害

12級9号から11号までは、手の指の障害を扱います。
それぞれ、次のような内容です。

  • 12級9号 1手のこ指(小指)の用を廃したもの。つまり、小指が動かなくなった、または事実上使えなくなった場合です。
  • 12級10号 1手のおや指(親指)の指骨の一部を失ったもの。
  • 12級11号 1手のひとさし指、なか指またはくすり指の用を廃したもの。

手の指の障害は、特に手作業を伴う仕事をしている方にとって、生活と収入への影響が大きい障害です。

12級12号 足指の障害

12級12号は、「1足の第1の足指または他の4の足指の用を廃したもの」を対象とします。
簡単に言うと、片足の親指1本、または親指以外の4本すべてが、事実上使えなくなった場合です。
歩行への影響、立ち仕事への影響などが論点になります。
→ 詳しくは「「足指の障害」(後遺障害12級12号)」をご覧ください。

12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの

12級13号は、12級の中でもっとも被害者の数が多い号数です。
「局部に頑固な神経症状を残すもの」が対象になります。
「頑固な神経症状」とは、痛み・しびれ・知覚障害などの症状のことです。
そして、その症状が「医学的に証明できる」レベルである場合に、12級13号が認定されます。
ここで重要なのは、14級9号との違いです。
14級9号も、痛み・しびれなどの神経症状を扱います。
しかし、12級13号と14級9号の決定的な違いは、症状を裏づける客観的な証拠があるかどうかです。
具体的には、MRIなどの画像で神経の異常がはっきり確認できるか。
神経学的検査で、症状と一致する所見が出ているか。
これらの「他覚的所見」がそろっていれば12級13号、そろわなければ14級9号、というのが大まかな分かれ目です。
この境目をめぐる争いは、12級事案の中でも最も多く、最も激しい争いになります。
→ 詳しくは「「頑固な神経症状」の認定要件(後遺障害12級13号)・検査方法・14級との違い」をご覧ください。

12級14号 外貌の醜状障害

12級14号は、「外貌に醜状を残すもの」を対象とします。
「外貌」とは、顔・首・頭など、人目につく部分のことです。
「醜状」とは、傷跡や変形のことです。
つまり、顔などの目立つ場所に、はっきりとした傷跡が残った場合に、12級14号が認定されます。
歩行者・自転車事故で、顔面を地面やフロントガラスに打ちつけて生じることが多い障害です。
外見への影響だけでなく、就労や対人関係への影響も論点になります。
→ 詳しくは「交通事故で顔に傷跡が残ったら?後遺障害12級14号「外貌醜状」」をご覧ください。

ここまでざっと見てきたとおり、12級にはさまざまな号数があります。
そして、号数によって、認定のされ方も、争われ方も、賠償額の算定の仕方も変わってきます。
ご自身の症状がどの号数にあたりそうか、当たりがついた方は、ぜひ各号数の解説記事に進んでください。
そこには、それぞれの号数に特有の論点が、より詳しく書かれています。
「自分の症状がどの号数か、よくわからない」という方は、このまま記事を読み進めてください。
第4章以降では、号数を問わず12級事案に共通する論点を、ひとつずつ解説していきます。

第4章 「12級が取れるか、取れないか」の境目で迷う被害者へ

12級事案を扱っていて、最も多く相談を受けるのがこの場面です。
「自分は12級になるのか、それとも14級どまりなのか、よくわからない」。
「14級と認定されたが、本当は12級ではないのか」。
「主治医からは『12級は厳しいかもね』と言われたけれど、本当にそうなのか」。
このような迷いを抱えた方が、たくさんいらっしゃいます。
この章では、12級と14級の境目で揺れる被害者のために、その「境目」がどこにあり、どこで結果が分かれるのかを、具体的に整理していきます。

12級と14級の間に生まれる「灰色ゾーン」の正体

まず、なぜ「灰色ゾーン」が生まれるのでしょうか。
その答えは、12級と14級の判断基準そのものにあります。
第2章でお伝えしたとおり、12級と14級を分けるのは、「他覚的所見」があるかどうかです。
具体的には、骨が変形しているのが画像で確認できる、関節の動きが医学的に測定して制限されている、神経の異常が画像で写っている、といった証拠です。
ところが実際には、この「他覚的所見」が、白か黒かではっきり分かれないケースが非常に多いのです。
たとえば、こんなケースを想像してみてください。
事故で骨折をしました。
その骨折は、治療の結果、ほとんど元どおりに治っているように見えます。
でも、画像をよく見ると、わずかに変形が残っているようにも見える。
このようなとき、自賠責の調査事務所も、保険会社も、慎重な判断をします。
「変形」と認めれば12級、認めなければ14級または非該当、という判断に分かれます。
ここに「灰色ゾーン」が生まれます。
そして、この灰色ゾーンこそが、弁護士の力量が問われる場面なのです。

骨折が「完全に治った」のか、「変形が残った」のか

12級事案で、勝負がつきやすい争い方ができるのが、骨折の癒合(ゆごう)状態をめぐる争いです。

用語解説:癒合(ゆごう)
折れた骨がくっついて治ること。

骨折は、治療の経過によって、おおむね次の3つに分かれます。

  • 完全に元どおりに治った(完全癒合)
  • だいたい癒合しているが、わずかに変形が残った(変形癒合)
  • 骨がくっつかなかった(偽関節・ぎかんせつ)

このうち、12級事案で多くの被害者が直面するのが、「だいたい癒合しているが、わずかに変形が残った」というケースです。
たとえば、こんな状況です。
レントゲン写真を見ると、骨折した部分はくっついている。
しかし、よく見ると、骨が少し曲がってつながっているように見える。
あるいは、骨の太さが、健康な側とは少し違うように見える。
このような場合、「変形癒合」として12級が認定される可能性があります。
12級5号(鎖骨等の変形障害)、12級8号(長管骨の変形)が、まさにこのケースを扱う号数です。
ここで、ぜひ知っておいていただきたい大切な点があります。
「だいたいくっついているから、後遺障害ではない」と片づけてしまわないでほしいのです。
主治医によっては、「骨はくっついたから問題ない」「日常生活には支障ないでしょう」と説明することがあります。
しかし、医学的な治療としては問題なくても、法律的な評価としては、変形が残っていれば後遺障害になり得るのです。
この医学的評価と法律的評価のズレこそが、被害者が見落としやすいポイントです。
骨折のあとに違和感が残っている、画像で骨の形が以前と違うように見える ― そんなとき、「これは後遺障害として評価される可能性があるか」という視点で、もう一度画像を見直す価値があります。
なぜこの争いが「勝ちやすい」のか。
理由は、骨の変形が画像という客観的な証拠として残っているからです。
事故の前と後で、画像で骨の形が変わっている。
この事実は、誰の目にも明らかです。
事故との因果関係を争われても、骨折した骨が変形したという事実はゆるぎません。
このため、骨折の癒合をめぐる争いは、被害者にとって戦いやすい論点なのです。

可動域制限が「健側の4分の3」前後で揺れるとき

もうひとつ、灰色ゾーンが生まれやすいのが、関節の可動域制限の事案です。
12級6号(上肢)、12級7号(下肢)では、関節の動く範囲についての基準があります。
具体的には、関節の動く範囲が「健側(けんそく)の4分の3以下」になっていれば、12級が認定されます。

用語解説:健側(けんそく)・患側(かんそく)
健側は、ケガをしていない側のこと。患側は、ケガをした側のこと。

たとえば、右肩を骨折した場合、左肩(健康な側)の動く範囲を100とします。
そして、右肩(ケガをした側)が75以下になっていれば、12級認定の対象になる、ということです。
ところが、この測定値が、ちょうど境目あたりで揺れることがよくあります。
ここから先は、被害者の方にぜひ知っておいていただきたい、実務の現実をお伝えします。

4分の3をギリギリ超えていれば12級が認定される ― ただし、保険会社は裁判で争ってくる

可動域が、健側の4分の3をギリギリ下回っているケースを考えてみましょう。
たとえば、健側が180度、患側が135度。
割合にすると75%です。
これは「4分の3以下」の基準を満たしますので、自賠責で12級が認定される可能性があります。
ところが、ここからが問題です。
12級が認定されると、賠償額が大きくなります。
そのため、保険会社は、12級認定を前提とした賠償交渉や裁判の場で、「本当に4分の3以下なのか」を激しく争ってくるのです。
具体的には、こんな主張をしてきます。

  • 「測定の方法が正確ではないのではないか」
  • 「測定の角度が、医学的に正しい姿勢で測られていないのではないか」
  • 「複数回測れば、4分の3を超える数値が出るのではないか」
  • 「ご本人が痛みを訴えて動きを止めただけで、本来はもっと動くのではないか」

裁判官も、ギリギリ4分の3以下の事案については、慎重に判断します。
その結果、せっかく自賠責で取れた12級が、裁判では認められないこともあり得るのです。

正確な器具で、正式なやり方で計測することが決定的に重要

このような争いを避けるために、被害者の方に強くお伝えしたいことがあります。
それは、可動域の測定は、正確な器具を使い、正式なやり方で行ってもらう必要があるということです。
可動域の測定には、「角度計(ゴニオメーター)」と呼ばれる専用の器具を使います。
これを使わずに、目分量で測定された場合、信用性は大きく下がります。
また、測定の方法も、日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会が定めた「関節可動域表示ならびに測定法」に沿って行われている必要があります。
これらの基準に沿って測定されていない場合、測定値そのものの信頼性が争われてしまいます。
被害者の方は、後遺障害診断書を作成してもらう前に、主治医に対して次のことを確認してください。

  • 可動域の測定は、角度計を使って正確に行ってほしいということ
  • 測定方法は、日本整形外科学会の基準に沿った方法でお願いしたいということ
  • 測定値は、後遺障害診断書に正確に記載してほしいということ

これらを依頼することは、決して失礼なことではありません。
主治医も、後遺障害診断書を書く以上、正式な測定が求められていることは理解しています。
正確な測定がなされていれば、その後の保険会社との争いに対しても、揺るぎない証拠として機能します。
逆に、測定がいい加減になされていると、その数値そのものが争いの種になり、せっかくの12級認定が裁判で覆されるリスクが生じます。

14級に認定された方へ ― 12級に上がる可能性はあるか

ここまでとは少し別の角度から、被害者の方が直面する重要な場面を取り上げます。
それは、「自賠責で14級が認定された。でも、本当は12級ではないか」という疑問を持っている方の場面です。
14級と12級では、賠償額に1,000万円以上の差が生じることが珍しくありません(第2章参照)。
そのため、14級認定を「これで一区切り」と受け入れる前に、12級に上げられる可能性があるかを検討する価値は十分にあります。
ただし、最初にお伝えしておきたいことがあります。
14級から12級に上げる戦いは、決して簡単ではありません。
同じ資料を出しても結果は変わりませんし、新しい医学的資料を揃えても、それで必ず12級に上がるとは限りません。
ですので、ここでは「うまくいく可能性のあるパターン」を、過剰な期待を持たせない形でお伝えします。

ケース1:画像所見の見直しで、新たな所見が見つかる場合

最初の申請のとき、画像を見たのは、主治医とその画像を撮った放射線科医、そして自賠責の調査事務所です。
これらの読影で、異常所見が見落とされている可能性があります。
特に、整形外科の主治医は治療を中心に画像を見るため、後遺障害認定に必要な細かい所見まで確認していないことがあります。
画像診断の専門医(放射線科専門医)に再読影を依頼することで、新たな所見が見つかることがあります。
新たに「他覚的所見」が見つかれば、14級から12級に上がる根拠になり得ます。
これが最も現実的に勝負ができるケースです。

ケース2:後遺障害診断書に「画像所見がある」と書かれているのに、その所見が具体的に指摘されていなかった場合

これは、見落とされやすいけれども意外と効くポイントです。
後遺障害診断書を見ると、主治医が「画像所見あり」と書いてくれている。
しかし、よく読んでみると、どの画像のどの部分に、どんな所見があるのかが、具体的に書かれていない ― そんなケースがあります。
このような場合、自賠責の調査事務所は、「画像所見の具体的な内容が確認できない」として、12級ではなく14級と判断することがあります。
ここで取れる手は、主治医にお願いして、画像所見を具体的に指摘してもらうことです。
たとえば、「○年○月○日撮影のMRI画像において、第○頸椎・第○頸椎間に、神経の圧迫所見が認められる」というように、画像と所見の場所を具体的に書いてもらう。
これを補充の意見書として作成してもらい、異議申立ての資料として提出する。
このやり方で、14級から12級に評価が変わったケースは、実際にあります。
ポイントは、「症状が重い」ということを補強するのではないという点です。
12級か14級かを分けるのは、自覚症状の重さではなく、画像などの客観的な証拠の有無です。
主観的な症状の訴えをいくら重ねても、12級には届きません。
そこではなく、「画像所見の具体性」を補強することが、戦い方の核心になります。

ケース3(例外的なケース):神経学的検査の追加

神経学的検査(しんけいがくてきけんさ)とは、神経の機能を調べるためにさまざまな検査を行うことをいいます。
たとえば、首や腰を特定の角度に動かして、しびれや痛みの出方を確認するような検査です。
12級13号(神経症状)では、この検査の結果が認定の判断材料になります。
最初の申請時に、こうした検査が十分に行われていなかった場合、改めて検査を受けて結果を提出することで、評価が変わる可能性はゼロではありません。
ただし、これは正直に申し上げておかなければなりません。
神経学的検査は、被害者の体に痛みを伴うことが多いものです。
特に、痛みやしびれの症状があるからこそ後遺障害を主張している被害者にとって、検査自体が大きな負担になります。
ですので、この検査を改めて受けることを、私どもは積極的にはお勧めしていません。
このケースは、上のケース1・ケース2で勝負ができないとき、あるいはほかに材料がないときの、最後の選択肢として位置づけてください。
被害者ご本人の体への負担を考えれば、まずは画像所見の見直しと、後遺障害診断書の補強を優先するのが現実的です。

14級から12級に上げる手続き ― 異議申立て

これらのケースに当てはまる場合、「異議申立て」という手続きで、認定の見直しを求めることができます。
異議申立てとは、自賠責の認定結果に不服がある場合に、もう一度判断を求める制度です。
ただし、すでに述べたとおり、異議申立ては、一度目の申請と同じ資料を出しても結果は変わりません。
新しい医学的資料 ― 特に、放射線科専門医の再読影意見書や、画像所見を具体的に指摘した主治医の追加意見書 ― を揃えて、初めて結果が変わる可能性が出てきます。
(異議申立ての具体的な進め方は、第14章で詳しくお伝えします。)
ですので、14級認定を受けた方は、すぐに示談してしまう前に、12級に上げる材料があるかを慎重に検討する価値があります。
「14級と判断されたから、これ以上は無理」と思い込む必要はありません。
ただし、見直しの戦いには、医学と法律の両面での専門知識が要ります。
ご自身だけで進めるのは難しい場面ですので、専門家の目で資料を一緒に検討する機会を持つことをお勧めします。

第5章 12級認定を左右する重要なポイント

12級が認定されるかどうかは、ケガの後の対応によって大きく変わります。
ところが、この大切な時期に、被害者ご本人もご家族も、何に気をつけたらいいのかわからないまま日々が過ぎていくことが少なくありません。
そのうちに、本来であれば12級になり得たケガが、14級どまりになってしまう ― そんなケースを、私どもは実務でいくつも見てきました。
この章では、12級認定を左右する重要なポイントを、実務の現実に即してお伝えします。
最初にお伝えするのは、被害者の方からよく聞かれるけれども、明確に答えている記事が少ない疑問です。
「自分の事故で、そもそも12級が取れる可能性はあるのか」という疑問です。

事故の発生状況と12級認定の可能性

実は、事故の発生状況によって、12級認定の可能性は大きく変わります。
これは、自賠責の認定ルールにそのまま書かれているわけではありません。
しかし、実務をやっていると、「どんな事故でどんなケガをしたか」が、12級認定のされやすさに直結していることがはっきり見えてきます。
ここでは、自動車事故の3つのパターンに分けて、お伝えします。

自動車対自動車の事故 ― 12級が出にくい理由

自動車同士の事故では、12級が認定されることは、相対的に少ないのが実情です。
なぜでしょうか。
理由は、自動車という車体そのものが、乗っている人を守ってくれているからです。
シートベルトがあり、エアバッグがあり、車体そのものが衝撃を吸収するように設計されています。
衝突のエネルギーは、車体の変形によって吸収されます。
乗っている人にも衝撃は伝わりますが、剥き出しで衝撃を受けるわけではありません。
そのため、自動車同士の事故で多いのは、むち打ち症などの神経症状です。
これらは、12級ではなく14級9号(神経症状)で認定されることが多くなります。
もちろん、自動車対自動車の事故であっても、衝突の大きさによっては骨折を伴うこともありますし、12級が認定されるケースもあります。
しかし、相対的に見ると、自動車同士の事故で12級が出る割合は、それほど高くありません。

自動車対自転車の事故 ― 症状次第で12級が見えてくる

自動車対自転車の事故になると、状況は大きく変わります。
自転車には、車体による保護がありません。
ヘルメットを被っていたとしても、体そのものが衝撃を直接受けます。
このため、骨折や、画像で確認できる神経損傷を伴うケースが、自動車事故よりも明らかに増えます。
具体的には、次のようなケガが12級認定の対象になることがあります。

  • 鎖骨や肋骨の骨折(変形が残れば12級5号)
  • 上肢・下肢の骨折(変形癒合や可動域制限が残れば12級6号・7号・8号)
  • 頸椎や腰椎を強く打って、神経症状が画像で確認できる場合(12級13号)

特に、自転車利用者が車にはねられて路面に倒れたケースや、車のフロントガラスに当たって地面に落ちたケースでは、複数の骨折を伴うことがあり、12級認定の現実的な可能性が出てきます。
ですので、自動車対自転車の事故被害者の方は、症状によっては12級が視野に入ることを、頭の片隅に置いていただきたいのです。

自動車対歩行者の事故 ― 入院や骨折を伴う場合は12級が現実的

自動車対歩行者の事故になると、被害はさらに大きくなります。
歩行者には、自転車のような車体すらありません。
体ひとつで、車の衝撃を受けます。
このため、歩行者が車にはねられて入院した、骨折した ― という状況では、12級認定の可能性は十分に現実的です。
特に、次のような場合は、12級が視野に入ります。

  • 入院を伴う重傷で、骨折があった場合
  • 顔や頭を強打して、傷跡が残った場合(12級14号)
  • 関節を骨折し、可動域が制限された場合(12級6号・7号)
  • 長管骨を骨折し、変形癒合となった場合(12級8号)
  • 歯を複数本失った、または損傷した場合(12級2号)

歩行者として車にはねられた被害者の方には、ぜひお伝えしたいことがあります。
ご自身のケガが、軽くないと感じているのであれば、それは法律的に軽くない可能性があるということです。
「治療を続けていけば、いずれ良くなるだろう」と思いがちですが、後遺症が残るケースでは、治療の段階から12級認定を見据えた準備が必要になります。

なぜ事故類型によって認定可能性が変わるのか

ここまで3つのパターンを見てきましたが、改めて、なぜ事故類型によって12級認定の可能性が変わるのでしょうか。
ポイントは、「受傷機転(じゅしょうきてん)」と「画像所見」の関係にあります。

用語解説:受傷機転
どのような外力(がいりょく)で、どのようにケガをしたか、ということ。事故の状況とケガの結果を結びつける医学的な視点です。

外力が大きいほど、骨や神経に物理的な損傷が生じやすくなります。
物理的な損傷があれば、それが画像に残ります。
画像に残れば、「他覚的所見」として認定されます。
このつながりが、事故類型と12級認定のされやすさを決めているのです。
自動車対自動車の事故では、車体が衝撃を吸収するため、外力が体に届くまでに弱まります。
自動車対自転車では、車体の保護がない分、外力が直接届きます。
自動車対歩行者では、何の保護もないまま、最大の外力が体に伝わります。
この違いが、画像所見の残りやすさの違いに直結し、12級認定の可能性の違いに表れているのです。
ですので、ご自身の事故がどの類型にあたるか、そしてどのくらいの外力を受けたのかを、最初に整理しておくことが大切です。

「症状固定」を保険会社のペースで決めてしまう危うさ

事故からしばらく経つと、保険会社からこんな提案を受けることがあります。
「そろそろ症状固定の時期ではないでしょうか」。
「主治医に確認してみてください」。
「治療費の支払いは、もうそろそろ打ち切りになります」。
これらの言葉に押されて、まだ治療を続けたい時期に症状固定としてしまう被害者が、決して少なくありません。
しかし、症状固定の時期は、12級認定にとって極めて重要な意味を持ちます。

用語解説:症状固定(しょうじょうこてい)
これ以上治療を続けても、症状の改善が見込めない状態のこと。この時期になって初めて、後遺障害の申請ができるようになります。

つまり、症状固定の時期が、後遺障害認定の出発点なのです。
症状固定を保険会社のペースで早く決めてしまうと、こんなリスクがあります。

  • まだ改善する可能性のあった症状が、改善しないまま固定されてしまう
  • 必要な検査や治療が、十分に行われないまま打ち切られる
  • 後遺障害診断書に書けるはずだった所見が、書ききれないまま申請に進むことになる

その結果、本来であれば12級になり得たケガが、14級どまり、あるいは非該当になってしまうのです。
症状固定の時期を判断するのは、保険会社ではありません。
主治医です。
ですので、保険会社から「そろそろ症状固定では」と言われても、それはあくまで保険会社の希望にすぎません。
主治医とよく話し合い、ご自身の症状の改善余地を見極めたうえで判断すべきです。
「治療費の支払いが打ち切られる」と言われても、その後の治療費は、後で加害者側の保険会社や自賠責から補填を求めることができる場合があります。
打ち切りを言われた時点で慌てて症状固定としてしまうのではなく、いったん専門家に相談する選択肢があることを、ぜひ覚えておいていただきたいのです。

主治医とのコミュニケーション ― 後遺障害診断書を見据えた治療

治療を進める中で、もうひとつ大切なことがあります。
それは、主治医とのコミュニケーションです。
主治医は、治療の専門家です。
しかし、主治医は、後遺障害認定の専門家ではありません。
ここに、被害者が見落としやすい大きな落とし穴があります。

主治医が「治った」と言っても、後遺障害として評価される可能性がある

主治医にとっての「治った」は、医学的に治療の目処がついたという意味です。
しかし、法律的には、ケガの跡が残っていれば、それは後遺障害として評価される可能性があります。
たとえば、骨折が癒合して骨がくっついても、変形が残っていれば12級8号(長管骨の変形)になり得ます。
関節が動くようになっても、健側の4分の3以下の動きしかなければ、12級6号・7号になり得ます。
ですので、主治医に「治った」「もう大丈夫」と言われても、その判断は医学的判断であって、法律的な後遺障害評価とは別物だと理解しておく必要があります。

後遺障害診断書を依頼するときに伝えるべきこと

症状固定の時期になり、主治医に後遺障害診断書を書いてもらうとき、ぜひ伝えていただきたいことがあります。

  • 残っている症状のすべてを、診断書に書いてほしいこと
  • 画像所見がある場合は、どの画像のどこに、どんな所見があるかを具体的に書いてほしいこと
  • 可動域制限がある場合は、角度計を使って、日本整形外科学会の基準に沿って正確に測定してほしいこと
  • 自覚症状だけでなく、神経学的検査の結果も、できる範囲で書いてほしいこと

これらをお願いすることは、決して失礼なことではありません。
主治医も、後遺障害診断書である以上、これらの記載が求められていることは理解しています。
主治医とのコミュニケーションで、後遺障害診断書の質が決まり、それが12級認定の可能性を決めます。

必要な検査(MRI・神経学的所見・可動域測定)を「いつ」「誰に」依頼するか

12級認定で必要になる主な検査は、次の3つです。

  • MRI検査(神経の異常や軟部組織の損傷を確認する)
  • 神経学的検査(神経の機能を確認する)
  • 可動域測定(関節の動きを測定する)

これらの検査は、いつ、誰に依頼するかが重要です。

MRI検査は、症状固定前の早い段階で

MRI検査は、症状固定の判断のためにも、後遺障害認定のためにも、できれば症状固定の前に受けておくべき検査です。
特に、痛みやしびれが続いている場合、画像での裏づけがあるかどうかが、12級か14級かを分けます。
「事故から時間が経って、症状はあるけれど、MRIをまだ撮っていない」という方は、主治医に相談してみてください。

MRIは、できれば高解像度のものを

MRIには、画像の解像度に違いがあります。
一般に、磁場の強さが大きいほど、より細かい所見を読み取ることができます。
特に、神経の異常を写し取るには、ある程度の解像度が求められます。
主治医のクリニックで撮ったMRIで所見が見えにくい場合、解像度の高い病院での再撮影を検討する価値があります。

可動域測定は、後遺障害診断書を書く直前に正確な方法で

可動域の測定は、後遺障害診断書を書いてもらう直前のタイミングで、角度計を使って正確に行ってもらうことが大切です(第4章でもお伝えしたとおりです)。
このタイミングと方法を、主治医にきちんと依頼することが、後の保険会社との争いに対する備えになります。

12級認定は、症状固定の段階で勝負が決まるわけではありません。
そこに至るまでの治療の進め方、検査の受け方、主治医とのコミュニケーションの取り方 ― そのすべてが、最後の認定結果に積み上がっていきます。
「治療はまだ始まったばかり」「症状固定にはまだ早い」と思っている時期こそ、後の認定を見据えた準備ができる、貴重な時間です。

第6章 後遺障害申請の実務 ― 事前認定と被害者請求

症状固定の時期を迎えると、次は後遺障害の申請に進みます。
ここで被害者の方が最初に直面するのが、「事前認定と被害者請求、どちらの方法を使えばいいのか」という選択です。
この選択は、形式的な手続きの違いに見えるかもしれません。
しかし実際には、その後の認定結果や交渉の進み方に、大きく影響します。
この章では、2つの方法の違いと、被害者にとってどちらが有利になりやすいのかを、率直にお伝えします。

事前認定と被害者請求の違い

まず、それぞれの仕組みを整理します。

用語解説:事前認定(じぜんにんてい)
加害者側の任意保険会社が、後遺障害申請の手続きを代わりに行ってくれる制度。被害者は後遺障害診断書を渡すだけで、その後の手続きはすべて任意保険会社が代行します。

用語解説:被害者請求(ひがいしゃせいきゅう)
被害者自身が、加害者側の自賠責保険会社に対して、直接、後遺障害申請を行う方法。書類を集めて整え、提出するのは被害者(またはその代理人である弁護士)です。

2つの方法を比較すると、次のようになります。

事前認定 被害者請求
手続きを行う主体 加害者側の任意保険会社 被害者本人または代理人弁護士
提出する書類の選択権 任意保険会社 被害者側
被害者の手間 ほとんどない 書類収集の手間がある
自賠責保険金の支払い 示談成立後にまとめて支払い 認定後すぐに支払いを受けられる
提出書類の透明性 被害者は内容を確認しにくい 被害者がすべて把握できる

一見すると、事前認定の方が手軽に思えます。
しかし、被害者の立場で考えると、ここに見落としやすい問題があります。

「事前認定」が被害者に不利になりやすい場面

事前認定は、加害者側の任意保険会社が手続きを代行する制度です。
ここで、ひとつ立ち止まって考えてみてください。
加害者側の任意保険会社にとって、被害者が高い等級で認定されることは、自社の支払額が増えることを意味します。
つまり、任意保険会社は、被害者の等級が高く認定されることを、必ずしも望んでいないのです。
もちろん、任意保険会社が違法な手続きをするわけではありません。
最低限の書類は揃えて、自賠責に送ります。
しかし、「被害者が12級になるための材料を、できる限り厚く揃える」という姿勢で動いてくれるかというと、それは期待できません。

事前認定で起こりがちなこと

実務でよく見るのは、次のようなことです。

  • 主治医の後遺障害診断書だけが提出され、補強の意見書や検査結果が添付されない
  • 画像(MRI、レントゲン)の追加提供が求められない
  • 神経学的検査の結果が十分に提出されない
  • 被害者がどんな書類で申請されたのか、最後までわからない

その結果、本来であれば12級になり得たケースが、14級どまり、あるいは非該当になってしまう ― そんなことが起こり得ます。
しかも、被害者は、何の書類で申請されたのかを知りません。
なぜ非該当になったのか、なぜ14級だったのかを検証するための情報すら、自分の手元にないのです。

被害者請求にすることの意味

これに対して、被害者請求であれば、被害者側が申請の内容をコントロールできます。
どの画像を提出するか。
主治医にどんな意見書を書いてもらうか。
検査結果をどう揃えるか。
これらを、被害者側の戦略に基づいて組み立てることができます。
特に、12級が取れるかどうか微妙な事案 ― 第4章でお伝えした「灰色ゾーン」の事案 ― では、申請内容の差が、認定結果の差に直結します。
灰色ゾーンの事案で事前認定を選ぶことは、被害者にとって、戦う前に武器を相手に預けてしまうようなものです。

被害者請求で揃えるべき資料の全体像

被害者請求を行う場合に、どんな資料を揃える必要があるかを整理します。
主な書類は、次のとおりです。

  • 後遺障害診断書(主治医に書いてもらう、認定の最重要資料)
  • 診療報酬明細書(治療経過を示す書類)
  • 診断書(受傷からの治療経過がまとまった書類)
  • 画像資料(MRI、レントゲン、CTなど、症状を裏づける画像)
  • 交通事故証明書(事故の発生を証明する書類)
  • 印鑑証明書(被害者本人のもの)
  • 支払請求書(自賠責保険会社所定の書式)

これらに加えて、12級が微妙な事案では、次のような補強資料を準備します。

  • 主治医の追加意見書(画像所見の具体的な指摘や、症状の医学的裏づけ)
  • 放射線科専門医による画像読影の意見書(必要な場合)
  • 神経学的検査の結果(可能な範囲で)

書類のリストだけ見ると、それほど多くないように見えます。
しかし、それぞれの書類の中身 ― とくに後遺障害診断書と画像資料 ― が、認定の結果を決めることになります。

後遺障害診断書の記載で見逃されがちな項目

後遺障害診断書は、主治医に書いてもらう書類です。
しかし、何も伝えずに「お願いします」と渡してしまうと、認定に必要な記載が抜け落ちることがよくあります。
被害者の方には、診断書の作成を依頼する前に、次の項目が漏れなく書かれているかを確認していただきたいのです。

1. 自覚症状の記載

残っている痛み、しびれ、可動域の制限、違和感 ― これらが具体的に書かれているかを確認します。
「特になし」「ほぼ改善」などと書かれていると、認定の対象から外れてしまうことがあります。

2. 他覚的所見の記載

医師が客観的に確認できる症状が、具体的に書かれているかを確認します。
特に、画像所見については、「○年○月○日撮影のMRIにおいて、○○部位に○○の所見あり」というように、画像と所見の場所が具体的に書かれていることが重要です。
「画像所見あり」とだけ書かれていて、具体的な所見の記載がない場合、自賠責の調査事務所はそれを評価できません。

3. 可動域の測定値

関節の動きに制限がある場合、可動域の数値が記載されているかを確認します。
健側(けんそく、ケガをしていない側)と患側(かんそく、ケガをした側)の数値が、それぞれ記載されている必要があります。
測定方法も、日本整形外科学会の基準に沿った方法で行われていることが望ましいです。

4. 症状固定の時期と症状の見通

いつから症状固定としたのか。
今後、症状の改善が見込めるのか、見込めないのか。
これらが書かれていることで、後遺障害として評価される根拠になります。

主治医への依頼の仕方

主治医に診断書を書いてもらうとき、こうした項目を「丁寧にお願いする」ことは、決して失礼ではありません。
むしろ、主治医にとっても、何を書いてほしいかが明確になることで、診断書の質が上がります。
「自覚症状を漏れなく書いてください」「画像所見があれば具体的にご記載ください」と、お願いの形で伝えることをお勧めします。

事前認定と被害者請求のどちらを選ぶか。
この選択は、12級認定の可能性が分かれる事案ほど、結果に大きく影響します。
すでにケガが軽く、14級か非該当か微妙という事案であれば、事前認定で済ませる選択もあり得るかもしれません。
しかし、12級が視野に入る重さのケガを負っている場合、被害者請求を選ぶことには大きな意味があります。
被害者請求は、書類の準備や提出の手間がかかります。
弁護士に依頼すれば、これらの作業を任せることができ、申請内容を被害者側の戦略に基づいて組み立てられます。
12級認定が現実的な可能性として見えている被害者の方には、申請方法の選択そのものを、慎重に検討していただきたいのです。

第7章 12級認定後に待ち受ける保険会社との交渉の現実

ようやく後遺障害12級が認定された。
長い治療を経て、書類を揃え、ようやく辿り着いた認定通知 ― 多くの被害者の方が、ここで一区切りついたと感じられます。
しかし、第1章でもお伝えしたとおり、ここからが本当の交渉の始まりです。
そして、この交渉の局面で何が起こるのかを、被害者の方にあらかじめ知っておいていただきたいのです。
知らないままで臨むと、保険会社が提示してきた金額を「そういうものか」と受け入れてしまうことになります。
しかし、その金額は、本来受け取れるはずの金額からは、大きくかけ離れていることが珍しくありません。

認定が出た瞬間に保険会社の姿勢が変わる理由

12級が認定されると、加害者側の任意保険会社の対応が、それまでとは目に見えて変わります。
ただし、この「変わり方」には、被害者の方に特に注意していただきたいパターンがあります。
それは、態度はずっと丁寧なまま、しかし提示してくる金額は厳しい、というパターンです。

12級事案では、保険会社の中でも「上の立場の人」が担当につくことが多い

これは、実務をやっていてはっきり感じることなのですが、12級事案では、保険会社の中でも比較的経験のある、地位の高い担当者がつくことが多くなります。
なぜなら、12級事案は支払額が大きく、保険会社にとって組織として丁寧に扱うべき案件だからです。
新人の担当者ではなく、ベテランの担当者、場合によっては課長クラスの担当者が、被害者の窓口になることが少なくありません。
こうした担当者は、対応が非常に丁寧です。
電話の口調は柔らかく、被害者の話をよく聞いてくれます。
「お体の具合はいかがですか」「治療に専念してください」「何かあればいつでもご連絡ください」 ― そうした言葉を、ごく自然にかけてくれます。
書面のやりとりも、礼儀正しく、整っています。
文書の言葉遣いは丁寧で、説明も詳しい。
被害者の方は、「親身になって対応してくれている」「この担当者は信頼できそうだ」と感じることになります。

しかし、示談の場面で「本性」が出る

ところが、いざ示談の局面になると、提示されてくる金額は、それまでの丁寧な態度とは別物の、低い水準であることがあります。
慰謝料は任意保険基準の中でもさらに低い金額。
逸失利益の労働能力喪失期間は短く見積もられている。
基礎収入も、保険会社にとって都合のよい数字が使われている。
被害者の方は、ここで戸惑います。
「あんなに丁寧に対応してくれていた担当者が、なぜこんな金額を提示してくるのだろう」と。
しかし、これは決して例外的な出来事ではありません。
むしろ、12級事案の交渉では、よく見られるパターンなのです。

「丁寧な態度で信用させて、示談で本性を出す」という構図

率直に申し上げると、これは保険会社の交渉戦略として、被害者の方にぜひ警戒していただきたいパターンです。
治療中は、丁寧な対応で被害者との信頼関係を築く。
その信頼関係があるからこそ、被害者は「この担当者が言うのだから、提示金額もきっと適正なのだろう」思いやすくなる。
そして、提示された金額をそのまま受け入れる方向に、心理的に傾いていく。
これは、被害者の方を騙そうという悪意で行われているとは限りません。
担当者本人にも、悪気はないかもしれません。
しかし、保険会社という組織として見たとき、「丁寧な対応で被害者の警戒心を解き、提示額を受け入れさせやすくする」という構図が、結果的に出来上がっているのは事実です。

警戒すべきは「金額」であって「人柄」ではない

被害者の方に、ぜひ覚えておいていただきたいことがあります。
それは、保険会社の担当者の「人柄」と、保険会社が提示してくる「金額」は、別物だということです。
担当者がどんなに丁寧で、どんなに親切に見えても、提示してくる金額は、保険会社の組織のルールに従って計算されています。
その金額は、被害者にとっての適正額ではありません。
担当者の人柄を信頼することと、提示金額を信頼することは、まったく別の話なのです。
「この担当者はいい人だから、金額もきちんと計算してくれているはず」 ― この思い込みが、12級事案で被害者が損をする最大の原因のひとつです。

提示書面を受け取ったら、まず立ち止まる

ですので、12級認定後に保険会社から賠償金額の提示書面が届いたら、その場で判断しないでください。
担当者にどんなに信頼を寄せていても、提示金額は別物です。
提示書面の金額が適正かどうかは、被害者ご本人には判断が難しいところです。
裁判所基準と比べたらどうなのか。
労働能力喪失期間は妥当か。
基礎収入の計算に問題はないか。
漏れている賠償項目はないか。
これらを冷静に検証するためには、いったん専門家の目で確認してもらう機会を持つことが、被害者の方が損をしないための最も確実な手段です。
「丁寧に対応してくれている担当者を疑うようで気が引ける」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、これは担当者個人を疑うかどうかの話ではなく、提示された金額が本当に適正かを冷静に判断するかどうかの話です。
担当者への礼儀を保ったまま、「いったん専門家に確認してから返事をします」と伝えることは、何ら失礼なことではありません。
むしろ、12級という大きな等級が認定された事案で、この一手間を惜しまないことが、後の後悔を防ぐことになります。

賠償額が大きくなるからこそ強まる「払い渋り」の典型パターン

12級認定後、保険会社が提示してくる金額には、いくつかの典型的なパターンがあります。
ここでは、実務で繰り返し見てきた、5つの代表的なパターンをお伝えします。

パターン1:慰謝料を任意保険基準で提示してくる

慰謝料には、3つの基準があります(詳しくは第8章で扱います)。
このうち、最も低いのが自賠責基準、最も高いのが裁判所基準(弁護士基準)です。
その中間にあるのが、保険会社が独自に定めている「任意保険基準」です。
12級の慰謝料は、裁判所基準では約290万円が目安です。
ところが、任意保険基準では、これよりも100万円から150万円ほど低い金額が提示されてくることがあります。
被害者の方は、提示された金額が「本来支払われるべき金額」だと思いがちです。
しかし、それは保険会社の社内基準による金額であって、裁判で認められる金額ではありません。

パターン2:逸失利益の労働能力喪失期間を短く見積もってくる

12級では、逸失利益が賠償額の中核になります(詳しくは第9章で扱います)。
逸失利益の計算では、「労働能力喪失期間」という年数が大きな意味を持ちます。
通常、67歳まで働けるという前提で計算されることが多いのですが、保険会社はここを短く見積もろうとしてきます。
「この被害者は55歳だから、もう12年で計算しましょう」「神経症状は5年で慣れるはずです」といった主張が出てきます。
この期間が短くなると、逸失利益は大きく削られます。

パターン3:基礎収入を低く見積もってくる

逸失利益の計算では、「基礎収入」という金額も重要です。
事故前の収入をベースに計算するのですが、ここでも保険会社は低く見積もろうとしてきます。
「事故の年は収入が下がっていたので、その金額で計算しましょう」と、たまたま収入が低かった年の金額を持ち出してくることがあります。
主婦(家事従事者)の方には、「専業主婦だから収入はない」と主張してきたり、低めの基礎収入を提示してきたりすることがあります。
これらの主張に対して、被害者ご本人が一人で反論するのは、率直に言って困難です。

パターン4:過失割合を被害者に不利に提案してくる

歩行者・自転車事故では、過失割合が賠償額に直結します(詳しくは第11章で扱います)。
歩行者にもともと過失がほとんどないケースでも、保険会社は10%程度の過失を提案してくることがあります。
過失割合が10%変わるだけで、賠償額は10%減ります。
総額1,000万円の事案であれば、100万円の差です。
この差は、決して小さなものではありません。

パターン5:既往症や年齢を理由に減額を主張してくる

「もともと頸椎症があったから、今回の症状はその影響もある」。
「年齢的に、加齢による変性も考慮すべきだ」。
このような主張で、賠償額の減額を求めてくることがあります。
これらの主張のうち、根拠のあるものもありますが、根拠がないものも少なくありません。
そして、被害者の方が反論できないと、そのまま減額が通ってしまいます。

自賠責基準・任意保険基準・裁判所基準の3つの差

ここで、慰謝料と逸失利益の計算で使われる3つの基準について、整理しておきます。

基準 どこで使われるか 金額の水準
自賠責基準 自賠責保険から支払われる金額の計算 最も低い
任意保険基準 任意保険会社が示談で提示する金額 自賠責基準より少し高い程度
裁判所基準(弁護士基準) 裁判で認められる金額・弁護士が交渉する基準 最も高い

この3つの基準には、12級事案では、次のような差が生じます。
慰謝料(後遺障害慰謝料)で見ると、

  • 自賠責基準 約94万円
  • 任意保険基準 約140万〜170万円程度(保険会社による)
  • 裁判所基準 約290万円

逸失利益でも、計算の仕方によって、自賠責基準と裁判所基準で2倍以上の差が生じることが珍しくありません。
つまり、保険会社の提示額のままで示談するのか、裁判所基準で交渉するのかで、被害者が手にする金額が大きく変わるということです。
そして、保険会社は、被害者が弁護士をつけずに直接交渉してくる限り、裁判所基準で支払うことはまずありません。
なぜなら、被害者本人と直接交渉するときには、任意保険基準で十分通るからです。
裁判所基準は、弁護士が代理人になって、訴訟も視野に交渉して初めて、現実的に手にできる水準なのです。

提示書面に「書かれていない項目」を見抜く視点

保険会社から送られてくる賠償提示書面には、慰謝料や逸失利益の金額が並んでいます。
ここで、被害者の方に注意していただきたいのは、「書かれている金額の妥当性」だけでなく、「書かれていない項目の有無」です。
12級の事案で、本来であれば賠償の対象になるけれど、提示書面から漏れていることが多いのは、次のような項目です。

  • 後遺障害が残ったことによる将来の介護費・通院費
  • 自宅や車のバリアフリー改修費
  • 後遺障害が残ったことを理由とした転職・退職に伴う損害
  • 学業や資格取得への影響(大学生・若年者の場合)
  • 家事ができなくなったことによる家事代行費用(主婦の場合)

これらは、被害者の状況によっては請求できる項目ですが、保険会社から「これも入れますか」と提案されることはまずありません。
被害者側が積極的に主張しなければ、最初から議論のテーブルに乗らないのです。
提示書面を受け取った被害者の方が、「自分のケースで請求できるはずのものが、書かれていないのではないか」と気づくのは、率直に言って困難です。
ここに、12級認定後の交渉で弁護士の関与が決定的に意味を持つ理由があります。

認定後にこそ弁護士の関与の意味が増す具体的な理由

ここまで読んでいただいた方には、すでにお気づきいただけたかもしれません。
12級認定後の交渉では、次のすべてが、保険会社にとっては「支払額を抑える機会」になります。

  • 慰謝料の基準
  • 逸失利益の労働能力喪失期間
  • 基礎収入の認定
  • 過失割合
  • 既往症・年齢による減額
  • 賠償項目の漏れ

そして、これらすべてに対して、被害者ご本人が一人で対抗するのは、現実的に困難です。
医学的な知識、過去の裁判例、計算の仕組み、保険会社との交渉の進め方 ― これらは、すべて専門的な領域です。
弁護士が代理人として交渉に入ることで、次のことが現実的に可能になります。

  • 慰謝料を裁判所基準まで引き上げる
  • 逸失利益の労働能力喪失期間を、被害者の実情に即して主張する
  • 基礎収入を適正に評価させる
  • 過失割合に客観証拠で反論する
  • 賠償項目の漏れがないか、すべての論点をチェックする
  • 必要であれば訴訟も視野に入れて交渉する

そして、これらが結果として、被害者の手元に残る金額に直結します。
12級認定後の交渉では、弁護士の関与によって、最終的な賠償額が数百万円単位で変わることが珍しくありません。
「12級が取れたから、もう大丈夫」ではなく、「12級が取れたからこそ、ここからの交渉に弁護士の力が必要になる」 ― これが、被害者の立場で多くの事案を見てきた者として、率直にお伝えしたいことです。

12級認定が下りた瞬間、被害者の方は、長い闘いの一区切りを感じられるはずです。
その実感を、否定するつもりはありません。
しかし、ここで歩みを止めてしまうのは、もったいないことです。
ここから先の交渉の中身次第で、これまでの治療や手続きの努力が、最大限に賠償額に反映されるかどうかが決まります。
提示書面を受け取ったら、そこに書かれている金額をそのまま受け入れる前に、いったん専門家に見てもらうことをお勧めします。

第8章 後遺障害12級の慰謝料の考え方

12級認定後の交渉で、まず議論の中心になるのが慰謝料です。
慰謝料の話は、金額の数字だけが一人歩きしがちです。
しかし、被害者の方にとって本当に大切なのは、「自分のケースでは、どの基準で計算されるのが正当なのか」を理解することです。
この章では、慰謝料の考え方の核心を、できるだけ平易にお伝えします。
なお、損害額の具体的な計算方法、ご自身のケースに当てはめた金額の試算については、別記事「後遺障害12級の損害金額の計算方法」で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

慰謝料の3つの基準と、その差の正体

第7章でも触れましたが、慰謝料の計算には3つの基準があります。
ここで、改めて整理します。

基準 計算の主体 12級の慰謝料(目安)
自賠責基準 自賠責保険の制度上の基準 約94万円
任意保険基準 任意保険会社の社内基準 約140万〜170万円
裁判所基準(弁護士基準) 裁判で認められる金額の基準 約290万円

最も低い自賠責基準と、最も高い裁判所基準の間には、約200万円の差があります。
この差は、いったいどこから生まれているのでしょうか。

自賠責基準は「最低限の補償」

自賠責保険は、すべての自動車・バイクの所有者が加入を義務づけられている保険です。
その役割は、被害者に最低限の補償を確実に届けることです。
「最低限の補償」が前提ですので、慰謝料の金額も、最低限の水準で設定されています。
12級で約94万円というのは、被害者の精神的苦痛を十分に評価した金額ではなく、あくまで自賠責の制度として支払う最低水準の金額なのです。

任意保険基準は「保険会社の社内ルール」

任意保険基準は、各保険会社が独自に定めている社内基準です。
社外には公表されていないため、被害者には正確な水準がわかりません。
おおむね、自賠責基準より少し高く、裁判所基準よりかなり低い ― それが任意保険基準の位置づけです。
12級事案で保険会社から提示される慰謝料の多くは、この任意保険基準で計算されています。
任意保険基準は、保険会社の支払額をコントロールするためのルールであって、被害者の精神的苦痛を客観的に評価した金額ではありません。

裁判所基準(弁護士基準)は「裁判で認められる水準」

裁判所基準は、過去の裁判例の積み重ねから導き出された、被害者の精神的苦痛を客観的に評価した基準です。
「赤い本(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準)」や「青本」と呼ばれる書籍に、目安額がまとめられています。
実際の裁判では、この基準を出発点として、個別事情を加味した金額が認められます。
12級の場合、裁判所基準による慰謝料の目安は約290万円です。
これが、被害者にとって本来あるべき水準の金額だと考えていただいて差し支えありません。

なぜ被害者本人だけでは裁判所基準で交渉できないのか

ここで、多くの被害者の方が抱く疑問にお答えしておきます。
「自分で『裁判所基準で支払ってください』と保険会社に言えば、それで支払われるのではないか」という疑問です。
率直に申し上げて、それでは支払われません。
保険会社は、被害者本人と直接交渉する場合、原則として任意保険基準を超える金額を提示してきません。
なぜなら、弁護士をつけずに本人交渉している被害者は、訴訟まで進めて争うことが現実的に難しいからです。
訴訟になれば裁判所基準で判決が出る可能性が高い ― この見通しがあって初めて、保険会社は任意保険基準を超える金額を検討します。
つまり、裁判所基準で支払わせるためには、「最終的には訴訟も辞さない」という前提で交渉する必要があるのです。
これは、被害者ご本人にとっては、極めて重い負担です。
訴訟手続きの知識、裁判例の知識、保険会社の主張への反論の組み立て ― これらをご自身で抱え込むのは、現実的には困難です。
弁護士が代理人として入ることで、訴訟も視野に入れた交渉が現実的に可能になります。
そして、弁護士が代理人になっているという事実そのものが、保険会社に裁判所基準での支払いを検討させる動機になります。

12級の慰謝料を増減させる事情

裁判所基準による約290万円という目安は、あくまで標準的な事案の金額です。
実際の事案では、個別の事情によって、この金額が増減することがあります。

増額要素の例

慰謝料が増額される可能性のある事情は、たとえば次のようなものです。

  • 加害者の運転態度が悪質だった(飲酒運転、ひき逃げ、無免許運転、信号無視など)
  • 被害者の生活への影響が特に大きい(後遺障害により転職を余儀なくされた、仕事ができなくなったなど)
  • 受傷態様が特に酷かった(長期入院、複数回の手術など)

これらの事情があると、290万円を超える慰謝料が認められることがあります。

減額要素の例

一方、慰謝料が減額される可能性のある事情は、次のようなものです。

  • 被害者にも一定の過失があった(過失相殺による調整)
  • 既往症(もともとあった病気)が、症状の悪化に影響している場合

ただし、これらの減額主張に対しても、被害者側から反論できる材料があれば、減額幅を抑えることが可能です。

入通院慰謝料との関係

慰謝料には、もうひとつ別の種類があります。
「入通院慰謝料」と呼ばれるもので、事故の発生から症状固定までの治療期間中の精神的苦痛に対する慰謝料です。
この記事の中心は後遺障害慰謝料(後遺症が残ったことに対する慰謝料)ですが、12級認定後の示談交渉では、入通院慰謝料も合わせて議論されます。
入通院慰謝料も、自賠責基準・任意保険基準・裁判所基準で金額が大きく異なります。
長期入院や長期通院があった事案では、入通院慰謝料だけで100万円以上の差が生じることもあります。

入院後の「経過観察期間」をめぐる争い ― 形式と実質

ここで、12級事案の被害者の方にぜひ知っておいていただきたい論点があります。
それは、骨折で入院した後、退院してから症状固定に至るまでの「経過観察期間」をめぐる争いです。
12級は、骨折を伴うケガのケースが多く含まれます。
骨折で入院した被害者は、退院後も、定期的に病院で経過を診てもらう必要があります。
骨がきちんとくっついているか。
変形が進んでいないか。
機能の回復はどの程度進んでいるか。
これらを確認するために、退院後も主治医のもとに通うことになります。
ところが、この経過観察期間は、入院中や治療の集中期間に比べて、通院の頻度が下がるのが普通です。
月に1回、あるいは2か月に1回といった頻度になることもあります。
これは、医学的には自然なことです。
骨折の経過観察は、毎週通院する必要はなく、間隔を空けて経過を診ていくのが標準的な医療だからです。

保険会社が「通院日数が少ない」と減額を主張してくる

ところが、示談交渉の場面で、保険会社はこの経過観察期間について、こんな主張をしてくることがあります。
「この期間は、通院日数が少ないですね」。
「実際にはあまり治療していなかったということでしょう」。
「ですので、この期間の入通院慰謝料は減額しましょう」。
これは、形式的に通院日数だけを見た主張です。
しかし、この主張には、本質的な誤りがあります。

経過観察期間は「重傷案件だからこそ作られる」期間

経過観察期間というのは、軽い事案では発生しません。
骨折のような重いケガを負ったからこそ、退院後も継続して経過を診てもらう必要が生じるのです。
つまり、経過観察期間が長く設定されているということは、それだけ重いケガを負ったことの証なのです。
そして、この期間中、被害者は決して「治療していない」のではありません。
骨折の治療は、骨がくっつくまでに時間がかかります。
その間、被害者は痛みを抱え、行動を制限され、不安を抱えながら過ごしています。
通院の頻度は下がっていても、ケガの治療そのものは続いているのです。
この実質を理解せずに、通院日数の数字だけで慰謝料を減額するのは、本来の趣旨から外れた取扱いです。

形式と実質を見分けるのが弁護士の役割

保険会社の主張は、しばしば、表面的な数字や形式に基づいて組み立てられます。
通院日数が少ない、入院期間が短い、治療費の総額が少ない ― そうした数字を根拠に、減額を主張してきます。
しかし、これらの数字は、被害者のケガの実態を正確に反映しているとは限りません。
骨折の経過観察のように、通院日数が少なくなるのが医学的に自然な期間もあります。
入院期間が短くても、退院後の生活への影響が大きいケースもあります。
治療費の総額が少なくても、被害者が抱える苦痛は決して小さくないことがあります。
被害者の方が、保険会社のこうした形式論に対して、ご自身一人で「いや、これは違う」と反論するのは難しいことです。
医学的な経過の意味、裁判例における取扱い、慰謝料の本質的な趣旨 ― これらを踏まえて反論を組み立てる必要があるからです。
弁護士が交渉に入ることで、形式的な数字の議論に対して、実質的な被害の内容を踏まえた反論ができるようになります。
「通院日数は少ないが、これは経過観察期間であり、重傷だからこそ生じた期間である」「通院していない期間も、被害者は治療中の状態にあった」「形式ではなく実質を見るべきである」 ― こうした主張を、裁判例の裏づけとともに展開できることが、弁護士の力量が問われる場面なのです。
12級の事案では、こうした「形式と実質のせめぎ合い」が、賠償額のあちこちで生じます。
通院慰謝料の減額の場面に限らず、逸失利益の計算でも、過失割合の議論でも、保険会社は形式論で攻めてくることがあります。
そのたびに、被害者の実質的な被害を、裁判例と医学的知見に基づいて主張していく ― それが、12級事案で弁護士が果たす役割の核心のひとつです。
具体的な計算方法は、サテライトページ「後遺障害12級の損害金額の計算方法」で詳しく解説しています。

慰謝料は、被害者が事故によって受けた精神的苦痛に対する補償です。
その金額は、本来であれば、被害者の苦痛の大きさに見合ったものでなければなりません。
ところが、現実には、どの基準で計算されるかによって、最終的な金額が3倍以上変わってしまいます。
裁判所基準による慰謝料を実際に手にするためには、保険会社との交渉のあり方そのものを、被害者側で組み立てていく必要があります。
その意味で、慰謝料の問題は、単なる計算の問題ではなく、交渉の問題なのです。

第9章 12級の核心 ― 逸失利益で問われる弁護士の力量

12級の賠償額の中で、もっとも金額が大きく、もっとも保険会社との争いが激しくなるのが「逸失利益(いっしつりえき)」です。
そして、この逸失利益こそ、弁護士の力量によって結果が大きく変わる項目です。
数百万円、場合によっては1,000万円を超える差が、弁護士の交渉力次第で生まれます。
この章では、逸失利益の核心と、保険会社の主張をどう切り崩すかを、被害者目線でお伝えします。
なお、12級の損害額の具体的な計算方法は、サテライトページ「後遺障害12級の損害金額の計算方法」で詳しく解説しています。

なぜ12級では「逸失利益」が賠償額の中核になるのか

逸失利益とは、後遺障害が残ったことで、将来得られなくなる収入のことです。
少しわかりやすく言うと、こうなります。
「事故で後遺障害が残らなければ、本来は将来○○円稼げたはずだ。しかし、後遺障害のせいで、その分の収入が得られなくなった。だから、その失われた収入を補償してください」 ― これが逸失利益の考え方です。
12級では、この逸失利益が賠償額の大部分を占めることが多くなります。
なぜでしょうか。
理由は、12級の労働能力喪失率(働く能力が失われた割合)が、14%と比較的高いからです。
そして、この14%が、定年までの長い期間にわたって計算されます。
たとえば、年収500万円の40代の方が、12級認定を受けたとします。
仮に労働能力喪失期間を27年間(40歳から67歳まで)として計算すると、逸失利益の目安はおよそ1,000万円前後になります。
これは、慰謝料(裁判所基準で約290万円)の3倍以上の金額です。
つまり、12級の賠償額の交渉において、慰謝料の議論はあくまで一部であり、本当の勝負どころは逸失利益にあるのです。

逸失利益の計算式

逸失利益の計算式は、次のようになっています。

逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

少し複雑に見えるかもしれませんが、要素は3つです。

  1. 基礎収入 ― 事故前の収入をベースに決める金額
  2. 労働能力喪失率 ― どのくらい働く能力が失われたか(12級は14%が基準)
  3. 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 ― 何年分の収入が失われたかを、現在価値に換算した数字

そして、保険会社は、このうちの3つすべてで、被害者にとって不利な主張をしてきます。
つまり、3つの要素の一つひとつが、交渉の戦場になるのです。
ここから先は、それぞれの要素について、保険会社の主張と、それに対する被害者側の反論を見ていきます。

労働能力喪失率14% ― 基準と、その上下を争う実務

労働能力喪失率は、後遺障害の等級ごとに、おおまかな基準が決められています。
12級の場合は、14%が基準です。
ただし、実務では、この数字がそのまま使われるとは限りません。
事案によっては、被害者側が14%以上の喪失率を主張することもありますし、逆に保険会社が14%以下を主張してくることもあります。
たとえば、保険会社は次のような主張をしてくることがあります。

  • 「神経症状(12級13号)は、慣れていけば症状が軽くなっていく」
  • 「実際の仕事への影響は、14%もない」
  • 「被害者は事故前と同じ仕事を続けられているから、喪失率はもっと低くてよい」

これらの主張に対して、被害者側は、後遺障害が実際の仕事や生活にどう影響しているかを具体的に主張していくことになります。
仕事の中でできなくなった作業、業務の進め方を変えざるを得なかった事情、昇進や転職への影響 ― こうした事情を積み上げて、14%の喪失率が妥当であること、場合によってはそれ以上の喪失率も検討すべきであることを主張します。

労働能力喪失期間 ― 「67歳まで」という通説を当事務所が積極的に争う理由

逸失利益の3要素の中で、もっとも金額への影響が大きく、そして当事務所がもっとも積極的に争いたいと考えているのが、労働能力喪失期間です。
ここは、被害者の方にぜひ知っておいていただきたいポイントです。

通説は「67歳まで」

実務の慣行として、労働能力喪失期間は「症状固定の年齢から67歳まで」とされてきました。
40歳で症状固定なら27年、50歳なら17年、60歳なら7年。
このように計算するのが、長年の通例です。
「67歳まで」という年齢は、かつての日本の労働年齢の上限の目安として使われてきた数字です。
そして、保険会社は、ほぼ自動的にこの67歳を上限として逸失利益を計算してきます。

しかし、現代の日本社会では「67歳まで」はもう実態に合わない

ここで、一度立ち止まって考えてみてください。
「67歳まで働く」 ― これは、本当に今の日本社会の実態に合っているのでしょうか。
実は、合っていません。
このことは、感覚論ではありません。
法律と統計が、はっきりとそう示しています。
順を追ってご説明します。

法律の話 ― 高年齢者雇用安定法は「70歳まで働ける社会」を目指している

まず、法律を見てみましょう。
「高年齢者雇用安定法(こうねんれいしゃこようあんていほう)」という法律があります。
この法律が、令和3年(2021年)4月1日に大きく改正されました。
改正の中身は、次のとおりです。
1. 65歳までの雇用確保 ― 企業の「義務」
事業主には、65歳までの雇用を確保する措置を取ることが義務づけられています。
具体的には、次のいずれかを行う必要があります。

  • 65歳までの定年引上げ
  • 定年制の廃止
  • 65歳までの継続雇用制度の導入

2. 65歳から70歳までの就業確保 ― 企業の「努力義務」
これが、令和3年の改正で新しく加わった部分です。
事業主は、65歳から70歳までの就業機会を確保するために、次のような措置を取ることが努力義務とされました。

  • 70歳までの定年引上げ
  • 定年制の廃止
  • 70歳までの継続雇用制度の導入
  • 70歳までの業務委託契約制度の導入
  • 70歳まで継続的に従事できる社会貢献事業の制度の導入

用語解説:努力義務
強制ではないが、努力することが法律上求められている義務のこと。

厚生労働省は何のためにこの改正をしたのか

厚生労働省は、改正の趣旨を次のように説明しています。
少子高齢化が急速に進み、人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するために必要だと。
そして、働く意欲のある高年齢者が、その能力を十分に発揮できる環境を整えることが目的だと。
つまり、国の方針として、「もう65歳で働き終わる時代ではない。70歳まで、希望すれば働ける社会にしていく」という方向に進んでいるのです。
国家公務員についても、定年が60歳から65歳まで段階的に引き上げられています。
これらは、いずれも「働く期間の延長」という時代の流れを示しています。

統計の話 ― 実際に高齢者が働いている

法律だけではありません。
実際に、現在の日本では、多くの高齢者が働いています。
総務省統計局の最新の調査(2024年)によれば、次のような数字が出ています。

年齢層 就業率
65〜69歳 53.6%
70〜74歳 35.1%
75歳以上 12.0%

65歳から69歳の就業率は、なんと53.6%です。
つまり、65歳から69歳の方の半数以上が、現に働いているのです。
70歳から74歳でも、3人に1人以上が働いています。
75歳以上でも、1割以上の方が働いています。
しかも、これらの数字は、いずれも過去最高を更新しています。
65歳以上の就業者数は、2024年に930万人。
これも過去最多です。
働く人全体の約7人に1人が、65歳以上の高齢者という時代になっているのです。

「67歳まで」という前提は、もはや論理的に維持できない

ここまでの法律と統計を、もう一度整理してみましょう。

  • 法律は、企業に対して70歳までの就業機会の確保を求めている
  • 厚生労働省は、高齢者が活躍できる社会を目指している
  • 65〜69歳の就業率は実際に53.6%を超えている
  • 70〜74歳でも3人に1人以上が働いている
  • 国家公務員の定年も65歳まで引き上げられた

この事実を踏まえれば、「67歳までしか働けない」という前提は、もはや維持できません。
法律も、統計も、政策も、すべてが「もっと長く働ける社会へ」という方向を指しています。
それなのに、交通事故の損害賠償の場面でだけ、「67歳まで」という古い基準で計算するのは、現実から目をそらしていると言わざるを得ません。
被害者は、本来であれば70歳でも、75歳でも、健康に働き続けられたはずなのです。
その失われた将来の収入を補償するのが、逸失利益という制度の趣旨です。
であれば、計算の前提となる労働能力喪失期間も、現代の実態に即したものに改めるべきです。
これは、単なる弁護士の主張ではありません。
法令と統計データから、論理必然に導かれる結論なのです。

当事務所は「少なくとも75歳まで」を積極的に主張する

このような社会的事実と法令の方向性を踏まえて、当事務所では、12級事案の逸失利益において、労働能力喪失期間を「少なくとも75歳まで」と主張していく方針を取っています。
たとえば、50歳で症状固定の被害者の場合、保険会社は17年(67歳まで)で計算してきますが、当事務所は25年(75歳まで)で計算すべきだと主張します。
この差は、決して小さくありません。
労働能力喪失期間が17年と25年では、ライプニッツ係数(将来のお金を現在価値に換算する係数)も大きく変わります。
具体的な金額にすると、被害者の事案によっては、逸失利益が数百万円単位で増えることになります。
もちろん、すべての事案で75歳までの喪失期間が認められるわけではありません。
裁判官の判断は、事案ごとに異なります。
特に、被害者の職業、健康状態、就労意欲、家族の状況などが、判断に影響します。
しかし、最初から「67歳まで」と諦めてしまえば、それ以上の喪失期間は決して認められません。
法令と統計を根拠に、堂々と「現代社会の実態に即した労働可能年齢で計算すべきだ」と主張するからこそ、67歳を超える喪失期間が認められる可能性が出てくるのです。
そして、この主張を組み立てるためには、高年齢者雇用安定法の改正の経緯、厚生労働省の指針、最新の労働力調査の数字、関連する裁判例 ― これらを踏まえた専門的な立証が必要になります。
「67歳までしか働けない」という古い前提を、当然のものとして受け入れない。
法令と統計データに基づいて、現代社会の実態を裁判の場に持ち込んでいく。
この姿勢を持つかどうかが、12級事案で被害者の手元に残る金額を、大きく変えることになります。

「将来の逸失利益」の基礎収入をめぐる争い ― 保険会社が必ず突いてくる弱点

労働能力喪失期間と並んで、もうひとつの大きな争点が「基礎収入」です。
基礎収入とは、逸失利益の計算で使われる「ベースとなる収入」のことです。
簡単に言うと、こうなります。
「事故で後遺障害が残らなければ、あなたは年間○○円稼げたはずです。だから、その○○円を出発点にして、失われた収入を計算します」 ― この○○円が基礎収入です。
そして、この基礎収入を、いくらに設定するかで、逸失利益の金額は大きく変わります。
12級の場合、基礎収入が100万円違えば、最終的な逸失利益は数百万円単位で変わってきます。
ここで、被害者の方にぜひ知っておいていただきたいことがあります。
それは、保険会社は、被害者ごとの「弱点」を突いて、基礎収入を低く見積もろうとしてくるということです。
被害者によって、その「弱点」は異なります。
ここから、典型的なケースを順に見ていきます。

ケース1:事故時にたまたま収入が低かった被害者

たとえば、こんな状況を考えてみてください。
ある年に、勤務先の業績が悪化して、ボーナスがカットされた。
家族の介護のために、一時的に仕事を減らしていた。
そういう時期に、たまたま事故にあってしまった。
この場合、保険会社はどう計算してくるでしょうか。
保険会社は、「事故前年の収入」を基礎収入として計算してきます。
つまり、収入がたまたま低かった年の収入を、ベースに据えてくるのです。
しかし、これは明らかにおかしな計算です。
その被害者は、本来であれば、もっと稼げる方だったはずです。
たまたまその年に収入が下がっていたからといって、生涯ずっとその低い水準で稼ぐと決めつけるのは、現実から離れています。
このような場合、被害者側から反論できる材料があります。
過去数年の収入の推移を示し、平均収入で計算すべきだと主張する。
業績悪化や介護といった一時的事情があったことを示し、本来の収入水準で計算すべきだと主張する。
賃金センサス(国が毎年発表する平均賃金の統計)の年齢別平均賃金を持ち出し、その水準で計算すべきだと主張する。
こうした反論を組み立てることで、本来の収入水準に近い基礎収入を確保できる可能性があります。

ケース2:失業中・転職直後の被害者

事故時に失業中だった、あるいは転職したばかりだった、というケースもあります。
この場合、保険会社は「事故時に無職だったから、逸失利益はゼロ」あるいは「転職直後の低い収入で計算する」という主張をしてきます。
しかし、これも反論が可能です。
失業中であっても、就労意欲があり、就労可能であれば、賃金センサスの平均賃金で計算すべきだとされた裁判例があります。
具体的には、求職活動の事実、過去の職歴、保有資格、就労見込みなどを示すことで、本来の労働能力にふさわしい基礎収入を主張できます。
転職直後の場合も、過去の職歴や、転職先での将来見込まれる収入を示すことで、適正な基礎収入を主張する余地があります。

ケース3:女性・主婦の被害者

主婦(専業主婦・兼業主婦を含む)の方が事故にあわれた場合、保険会社は「専業主婦だから収入はない」「逸失利益はパート収入だけで計算する」という主張をしてくることがあります。
しかし、家事労働は経済的価値のある労働として、裁判例で認められています。
具体的には、女性の賃金センサスの平均賃金を基礎収入として計算するのが、確立した裁判例の考え方です。
兼業主婦の場合は、パート収入と家事労働の評価を比較して、高い方を基礎収入とするのが原則です。
ただし、保険会社は最初の提示でこれを反映してくれません。
主婦の方の事案では、被害者側から積極的に主張していく必要があります。

ケース4:若年者・若手社員の被害者

20代の若手社員の方が事故にあった場合、保険会社は「現在の年収で計算する」と主張してきます。
しかし、若手社員はこれから昇給・昇進していくのが通常です。
現在の年収だけで計算すると、実態よりも低い基礎収入になってしまいます。
こうした場合、賃金センサスの全年齢平均賃金を基礎収入として主張する方法があります。
本人の現在の収入が、賃金センサスの全年齢平均賃金より低い場合、平均賃金で計算するのが適正と判断される場合があります。

ケース5:大学生・専門学校生の被害者

大学生・専門学校生の方が事故にあった場合、現在の収入はゼロまたはアルバイト収入だけです。
この場合、賃金センサスの大卒・短大卒・高専卒などの学歴別平均賃金を基礎収入として計算するのが、裁判例の考え方です。
大学生の方の事案については、立場の特殊性を踏まえた専門的な主張が必要になります。
→ 詳しくは「大学生が交通事故で怪我をしたら?対応の方法と注意点」をご覧ください。

ケース6:子ども・未就学児の被害者

子どもの方が事故にあった場合、これから成長して働くまでには長い年月があります。
この場合も、賃金センサスの全年齢平均賃金を基礎収入として計算するのが基本です。
男児・女児で異なる賃金センサスを使うのか、男女平均で計算するのかが、近年議論されている論点です。

ケース7:自営業者の被害者

自営業の方の場合、確定申告書の所得金額を基礎収入とするのが原則ですが、いくつかの調整が必要になります。
節税のために実際の収入より低く申告している場合、実際の収入水準を立証していく必要があります。
事業の固定経費(家賃、人件費など、事故にあっても発生し続ける費用)も考慮されます。
自営業の方の事案は、サラリーマンの方と異なる論点が多いため、専門的な検討が必要です。
→ 詳しくは「自営業者が交通事故で被害を受けた場合の対応方法」をご覧ください。

このように、基礎収入をめぐる争いは、被害者の立場によって、論点が大きく変わります。
保険会社の最初の提示が、その被害者に最も不利な数字になっていることは珍しくありません。
ご自身がどのケースに当たるかを把握し、適切な反論材料を準備することが、基礎収入を適正に主張するための第一歩です。

ライプニッツ係数とは何か

逸失利益の計算式に出てくる「ライプニッツ係数」について、簡単にご説明します。

用語解説:ライプニッツ係数
将来受け取るはずだったお金を、今の時点でまとめて受け取る場合に、その金額を調整するための数字。お金には利息が付くため、将来のお金を現在の価値に換算する必要があるという考え方に基づいています。

なぜ将来のお金を現在価値に換算するのでしょうか。
理由は、お金を運用すると利息が付くからです。
たとえば、10年後に100万円受け取る権利と、今100万円を受け取る権利は、同じ価値ではありません。
今100万円を受け取って運用すれば、10年後には100万円より大きな金額になっているはずです。
この「運用益」を考慮するために、将来のお金を割り引いて計算するのが、ライプニッツ方式です。
労働能力喪失期間が長くなるほど、ライプニッツ係数は大きくなります。
つまり、長く働けるはずだった被害者ほど、逸失利益が大きく計算されるということです。
これが、労働能力喪失期間の長短が逸失利益に大きな影響を与える、もうひとつの理由です。

「神経症状は5年で慣れるはず」という保険会社の主張への反論

12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)の事案で、保険会社が必ずと言っていいほど主張してくることがあります。
それは、「神経症状は時間の経過とともに慣れていくはずなので、労働能力喪失期間は5年程度に制限すべき」という主張です。
この主張は、過去の一部の裁判例を根拠にしています。
確かに、14級9号(他覚的所見のない神経症状)では、労働能力喪失期間を5年程度に制限する裁判例が多くあります。
しかし、12級13号は14級9号とは違います。

12級13号は「画像所見で裏づけられた神経症状」

12級13号は、MRIなどの画像で神経の異常がはっきり確認できる、医学的に証明された神経症状です。
画像で写っている神経の異常は、時間が経っても消えるわけではありません。
「慣れていく」というのは、被害者本人の感覚の問題であって、客観的な障害そのものは続いているのです。
したがって、12級13号の事案では、14級9号と同じように労働能力喪失期間を5年に制限すべき理由はありません。
むしろ、12級は「他覚的所見のある障害」として、原則どおり定年までの労働能力喪失期間を主張すべき事案です。

裁判例の動向

近年の裁判例では、12級13号の事案について、5年に制限せず、定年までの労働能力喪失期間を認める判決も増えてきています。
特に、画像所見が明確で、症状が今後改善する見込みが乏しいことが立証できる事案では、労働能力喪失期間が長く認められる傾向があります。
この主張を組み立てるためには、画像所見の医学的意義、症状の今後の見通し、被害者の現在の生活への影響など、多角的な立証が必要です。
「神経症状は5年で慣れる」という保険会社の主張を、根拠もなく受け入れる必要はありません。

逸失利益は、12級事案で被害者が手にする金額の中核を占めます。
そして、計算の3要素 ― 基礎収入、労働能力喪失率、労働能力喪失期間 ― のすべてで、保険会社は被害者にとって不利な主張をしてきます。
この一つひとつに対して、被害者の実情に即した反論を組み立てることが、被害者の手元に残る金額を大きく変えるのです。
逸失利益の交渉は、複雑で専門的です。
しかし、その複雑さの一つひとつが、被害者の人生に直結する金額の差につながっています。
12級認定を受けた方は、ぜひこの章でお伝えしたポイントを意識しながら、専門家とともに交渉に臨んでいただきたいと思います。

第10章 画像所見の壁 ― 12級認定で最も微妙な分岐点

12級認定で、もっとも結果が分かれやすく、もっとも被害者が泣かされやすいのが、画像所見の問題です。
「画像所見」とは、MRIやレントゲンなどの画像から読み取れる、医学的な異常のことです。
12級と14級を分ける「他覚的所見」の中心は、まさにこの画像所見です。
画像で異常が確認できれば12級、確認できなければ14級か非該当 ― これが、自賠責の調査事務所の判断の基本です。
この章では、画像所見をめぐる「壁」の正体と、それをどう乗り越えるかを、被害者目線でお伝えします。

なぜ「画像所見の有無」がここまで決定的なのか

自賠責の調査事務所は、提出された書類だけで、後遺障害の等級を判断します。
被害者本人と直接面談したり、症状を直接確認したりはしません。
書類だけで判断するということは、客観的に確認できる証拠が、判断の決め手になるということです。
そして、その客観的な証拠の代表格が、画像所見です。
画像で写っている異常は、誰の目にも明らかです。
主治医の主観も、被害者の訴えも、入る余地がありません。
だからこそ、画像所見があれば認定されやすく、なければ認定されにくいのです。
被害者がどれだけ「痛みがある」「しびれがある」と訴えても、画像で何も写っていなければ、自賠責の調査事務所は12級と判断しません。
この現実を、まず受け止める必要があります。

骨折の癒合をめぐる画像所見の争い

画像所見の中でも、被害者にとって戦いやすいのが、骨折の癒合をめぐる争いです。
第4章でもお伝えしましたが、骨折は、治療の経過によって次の3つに分かれます。

  • 完全に元どおりに治った(完全癒合)
  • だいたい癒合しているが、わずかに変形が残った(変形癒合)
  • 骨がくっつかなかった(偽関節)

このうち、変形癒合や偽関節は、画像で骨の異常がはっきり確認できる状態です。
事故前と事故後で、画像上で骨の形が変わっている。
この事実は、客観的な証拠として動かしようがありません。
12級5号(鎖骨等の変形障害)、12級8号(長管骨の変形)は、まさにこの画像所見を根拠とする号数です。
骨折の癒合状態が画像で証明できる事案では、12級認定の見通しが立てやすくなります。

神経症状をめぐる画像所見の争い ― ここに最大の壁がある

骨折の場合は比較的判定しやすい画像所見も、神経症状の場合は格段に難しくなります。
12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)で問題になるのは、頸椎や腰椎などにおける神経の異常です。
具体的には、椎間板の突出、神経根の圧迫、神経の信号異常など、MRIで写る微妙な所見です。
これらの所見は、骨折のように「形が変わった」とすぐにわかるものではありません。
画像をしっかりと読み取り、解釈する技術が必要です。
そして、ここに、被害者が最も泣かされやすい問題が潜んでいます。

主治医の整形外科医と、画像診断の専門医の違い

交通事故の被害者の方が画像を撮影してもらうのは、ほとんどの場合、整形外科の主治医のもとです。
そして、画像の読影(画像を見て診断すること)も、多くの場合、その整形外科医が行います。
ここに、被害者が見落としやすい大きな問題があります。
整形外科医は、骨や関節の治療の専門家です。
手術や保存療法、リハビリテーションなど、被害者を治すための治療技術には精通しています。
しかし、整形外科医は、画像の読影を専門としているわけではありません。
画像の読影を専門にしているのは、放射線科の医師、特に「画像診断専門医」と呼ばれる先生方です。

用語解説:画像診断専門医
放射線科のなかで、特に画像の読影を専門とする医師のこと。日本医学放射線学会が認定する専門医制度があり、MRI・CT・レントゲンなどの画像を読み取って診断する技術を専門的に学んでいます。

同じ画像を見ても、整形外科医と画像診断専門医では、読み取れる情報の量や精度が違うことがあります。
これは、決して整形外科医の能力を否定するものではありません。
専門の領域が違う、ということです。
整形外科医は治療の専門家、画像診断専門医は読影の専門家。
それぞれが、自分の専門領域で力を発揮しています。

主治医が「異常なし」と診断した画像から、専門医が異常を発見することがある

この読影の専門性の違いが、被害者にとって決定的な意味を持つ場面があります。
それは、主治医の整形外科医が「異常所見はない」と診断した画像を、画像診断専門医が再読影したときに、異常所見が見つかるケースです。
これは、決して珍しいことではありません。
特に、神経症状の事案では、主治医が見落としていた微妙な画像所見を、画像診断専門医が指摘することがあります。
具体的には、こんなことが起こり得ます。

  • 整形外科医が「特に異常なし」と診断したMRI画像を、画像診断専門医が再読影すると、神経根の圧迫所見が指摘される
  • 整形外科医が見落とした椎間板の小さな突出が、画像診断専門医によって明確に指摘される
  • 骨折の周囲の軟部組織の異常が、画像診断専門医の読影で発見される

これらの所見が新たに見つかれば、12級認定の根拠になります。
14級どまりだった事案が、12級に上がる可能性も出てきます。

画像診断専門医との連携を持つ弁護士の存在意義

ここで、被害者の方にぜひ知っておいていただきたいことがあります。
それは、こうした画像診断専門医との連携を持っているかどうかが、12級事案を扱う弁護士の力量を分けるということです。
12級事案を多く扱う弁護士の中には、画像診断専門医や、後遺障害認定に詳しい医師との連携を築いている方がいます。
画像所見が微妙な事案、主治医の読影に納得がいかない事案、14級から12級に上げる戦いをする事案 ― こうした場面で、画像診断専門医に再読影を依頼することができます。
画像診断専門医による再読影意見書は、自賠責への異議申立てや、訴訟での立証において、強力な武器になります。
「主治医が見落としていた画像所見が、画像診断専門医の再読影によって明らかになった」という主張は、自賠責の調査事務所や裁判官にも説得力を持って受け止められます。
逆に、こうした連携を持たない弁護士の場合、画像所見が微妙な事案で、被害者にとっての勝負どころを作ることが難しくなります。
主治医が「異常なし」と言っているなら、それで終わり ― そういう戦い方しかできなくなってしまうのです。

画像所見の壁を乗り越えるための具体的な手順

画像所見の壁を乗り越えるためには、次のような手順を踏むことになります。

1. すべての画像データを集める

事故直後から症状固定までに撮影された、すべての画像データを集めます。
レントゲン、CT、MRIなど、種類を問わず、画像データそのもの(CDなどのデジタルデータ)を取り寄せます。
主治医の医療機関から、被害者本人またはその代理人弁護士が、画像データの提供を依頼します。

2. 画像診断専門医に再読影を依頼する

集めた画像データを、画像診断専門医に提供して、再読影を依頼します。
画像診断専門医は、画像を独立した目で見直し、所見の有無や程度を判断します。
主治医とは別の視点から、画像を読み解いてもらうことが重要です。

3. 再読影意見書を作成してもらう

再読影の結果を、画像診断専門医に意見書としてまとめてもらいます。
「○年○月○日撮影のMRI画像において、第○頸椎・第○頸椎間に、神経根の圧迫所見が認められる」というように、画像と所見を具体的に対応させた意見書を作成します。
この意見書は、自賠責への異議申立て、保険会社との交渉、訴訟での立証において、大きな武器になります。

4. 主治医に追加意見書を依頼する

画像診断専門医の再読影結果を踏まえて、主治医に追加の意見書を依頼することがあります。
画像診断専門医が指摘した所見と、被害者の症状との因果関係を、主治医の立場から説明してもらうのです。
画像診断専門医の客観的な読影と、主治医の臨床的な評価を組み合わせることで、説得力のある立証になります。

画像所見の壁を乗り越える戦い方は、すべての事案で可能なわけではない

最後に、被害者の方にお伝えしておきたいことがあります。
画像診断専門医の再読影によって、必ず12級の根拠となる所見が見つかるわけではありません。
画像に何も写っていない事案では、専門医が再読影しても、新たな所見は見つかりません。
この場合、12級の根拠を画像で立証することはできず、14級どまりとなります。
画像所見の壁を乗り越える戦いは、画像にすでに写っている所見を、適切に評価してもらう戦いです。
写っていないものを写すことはできません。
ですので、画像診断専門医への再読影は、すべての事案で行えばよいというものではなく、画像所見が微妙な事案、主治医の読影に疑問が残る事案、14級から12級に上げる戦いをする事案などで、戦略的に活用するべき手段です。

画像所見の壁は、12級認定における最大の難関のひとつです。
そして、この壁を乗り越えるには、医学と法律の両面での専門性が必要になります。
12級事案で、画像所見の壁にぶつかっている被害者の方は、画像診断専門医との連携を持つ弁護士に相談することをお勧めします。
主治医の読影だけでは見えなかった所見が、新たな視点から見つかる可能性があります。

第11章 過失割合と過失相殺 ― 歩行者・自転車事故被害者が知っておくべきこと

12級事案では、過失割合も賠償額に大きく影響します。
特に、歩行者・自転車事故では、保険会社の提案する過失割合をそのまま受け入れるか、適正な割合に修正させるかで、最終的な賠償額が大きく変わります。
この章では、過失割合の基本的な考え方と、被害者の立場で注意すべきポイントをお伝えします。

過失割合とは何か

交通事故では、加害者と被害者の両方に、何らかの不注意があるケースが多くあります。
そのため、事故の原因について、加害者と被害者がそれぞれどれくらい責任を負うかを、割合で表します。
これが過失割合です。

用語解説:過失割合・過失相殺
過失割合とは、事故の原因について、加害者と被害者がそれぞれどれくらい責任を負うかを示す割合のこと。被害者にも過失がある場合、その分、賠償額から差し引かれます(過失相殺)。たとえば、被害者の過失割合が10%なら、賠償額が10%減らされます。

12級事案で、賠償総額が1,000万円になる事案を考えてみてください。
過失割合が100対0(加害者100%、被害者0%)なら、被害者は1,000万円を受け取れます。
過失割合が90対10(加害者90%、被害者10%)になると、被害者の受け取る金額は900万円に減ります。
100万円の差です。
過失割合がさらに不利な80対20となれば、800万円。
200万円もの差が生じます。
このように、過失割合が10%動くだけで、賠償額は数十万円から数百万円単位で変わるのです。

歩行者・自転車事故の過失割合の基本

過失割合は、事故類型ごとに、おおまかな目安があります。
「赤い本」や「別冊判例タイムズ38号」などの書籍に、事故類型ごとの基準がまとめられています。
歩行者・自転車事故では、被害者(歩行者・自転車)を保護する考え方から、被害者にとって有利な過失割合が設定されることが多くなります。

横断歩道上の歩行者と自動車の事故

横断歩道を歩いている歩行者が、自動車にはねられた場合、原則として歩行者の過失は0%です。
これは、横断歩道は歩行者が優先される場所であり、自動車側に最大限の注意義務があるからです。
ただし、歩行者が信号を無視していた場合や、急に飛び出した場合などは、過失が認められることがあります。

横断歩道のない場所での歩行者と自動車の事故

横断歩道のない場所で道路を横断していた歩行者が事故にあった場合、歩行者にも一定の過失が認められることがあります。
具体的な過失割合は、現場の状況、見通しの良さ、横断のタイミングなどによって変わります。

自転車と自動車の事故

自転車と自動車の事故では、自転車利用者に一定の過失が認められることが多くなります。
ただし、自動車側の不注意が大きい場合(信号無視、一時停止無視など)は、自転車側の過失が大きく軽減されます。
逆に、自転車側にも信号無視や逆走などの不注意があれば、自転車側の過失が大きくなります。

保険会社の提示する過失割合は、必ずしも正しいとは限らない

12級認定後の交渉で、保険会社が提示してくる過失割合は、被害者にとって不利な数字になっていることがあります。
たとえば、本来であれば歩行者の過失が0%であるべき事案で、「歩行者にも10%の過失がある」と主張してくることがあります。
あるいは、自転車側の過失が小さい事案で、「自転車側にも30%の過失がある」と主張してくることがあります。
これらの主張に、根拠がない場合もあります。
しかし、被害者ご本人が、保険会社の主張に対して反論するのは、率直に言って困難です。
過失割合の判断には、事故類型ごとの基準、現場の状況、客観証拠の評価など、専門的な知識が必要になるからです。

「過失割合を譲ったら、慰謝料を上げる」という交換条件の罠

12級事案の交渉で、保険会社が使ってくる典型的な手法のひとつが、「交換条件」です。
具体的には、こんな提案をしてきます。
「過失割合は10対90で譲ってください。その代わり、慰謝料を少し上乗せします」。
「過失割合は20対80でお願いします。代わりに、賠償額の総額は提示金額より100万円増やします」。
一見、お互いに譲り合う合理的な提案に見えるかもしれません。
しかし、この交換条件には、被害者にとって大きな罠が潜んでいます。

過失割合10%が動く影響は、慰謝料の上乗せでは取り戻せない

12級事案では、賠償総額が1,000万円を超えることが珍しくありません。
仮に総額が1,500万円の事案で、過失割合が10%動いたとします。
10%の過失相殺で、被害者の受け取る金額は150万円減ります。
これに対して、保険会社が「慰謝料を上乗せする」と提案する金額は、せいぜい数十万円程度です。
つまり、過失割合の譲歩で失う金額のほうが、慰謝料の上乗せで得る金額より、はるかに大きいのです。
これは、保険会社の交渉戦略です。
過失割合は、賠償額の総額に対する乗数(掛け算の数字)として効きます。
一方、慰謝料の上乗せは、固定金額の加算にすぎません。
乗数で削られる部分を、固定金額で取り戻すのは、原理的に難しいのです。

過失割合の議論は、過失割合だけで決着させる

過失割合の交渉では、過失割合の議論を、慰謝料や逸失利益の議論と切り離すことが大切です。
過失割合は、事故の発生原因についての客観的な評価です。
慰謝料や逸失利益は、ケガの重さや被害の大きさに対する評価です。
これらは別の論点であり、本来、交換条件として絡める性質のものではありません。
「過失割合は事故状況に基づいて決める。慰謝料や逸失利益は被害の大きさに基づいて決める」 ― この基本姿勢を崩さないことが、保険会社の交換条件の罠にはまらない方法です。

過失割合を争うために必要な客観証拠

過失割合を被害者に有利な方向に主張するためには、客観証拠が大切です。
12級事案の被害者の方には、次のような証拠を可能な限り集めることをお勧めします。

1. 実況見分調書

交通事故が発生すると、警察が現場で実況見分を行い、調書を作成します。
この実況見分調書には、事故の状況、車両の位置関係、道路の状況などが記載されています。
過失割合の判断において、最も重要な客観証拠のひとつです。
弁護士であれば、所定の手続きで実況見分調書を取り寄せることができます。

2. ドライブレコーダーの映像

加害者車両のドライブレコーダーに事故の映像が残っている場合、これは決定的な証拠になります。
事故の瞬間が映像で残っていれば、事故の原因や経過が客観的に確認できます。
加害者側保険会社にドライブレコーダー映像の有無を問い合わせることが、交渉の最初の一歩です。

3. 事故現場の写真・図面

事故現場の状況、車両の損傷状況、道路の見通しなどを撮影した写真や、現場の図面も、過失割合の判断材料になります。

過失割合は、12級事案の賠償額に大きく影響する論点です。
保険会社が提示する過失割合をそのまま受け入れるのではなく、客観証拠に基づいて適正な過失割合を主張していくことが、被害者の手元に残る金額を守ることにつながります。
交換条件の罠にはまらず、過失割合の議論と賠償額の議論を切り離して対応する。
この姿勢を持つかどうかが、12級事案で被害者が得る最終的な金額を、大きく左右します。

第12章 被害者の立場別 ― 12級が生活に及ぼす影響と論点

12級認定が、被害者の生活に及ぼす影響は、その方の立場によって変わります。
会社員、自営業者、専業主婦、シングルマザー、大学生、高齢者 ― それぞれの立場で、後遺障害が生活と収入に与える影響は違います。
そして、賠償交渉の論点も変わります。
この章では、立場別の主な論点を整理してお伝えします。

会社員(サラリーマン・OL)の被害者

会社員の方が12級認定を受けた場合、収入は給与として把握しやすく、基礎収入の計算は比較的シンプルです。
しかし、それでも論点はあります。

昇給・昇進への影響

後遺障害が残ったことで、昇進が遅れたり、希望していた部署への異動が難しくなったりすることがあります。
こうした昇給・昇進への影響は、現在の年収だけでは計算に反映されません。
将来の昇給・昇進が事故前と同じように見込めなくなった場合、その分を逸失利益に反映するべきだと主張する余地があります。

転職・退職への影響

後遺障害のために、現在の仕事が続けられなくなり、転職や退職を余儀なくされるケースがあります。
この場合、転職後の収入減少や、退職に伴う損害も、賠償の対象として主張することができます。
具体的な金額の計算は、転職時期、新しい職場での収入、これまでのキャリアなどによって変わります。

自営業者の被害者

自営業の方の場合、会社員とは違う論点が多くあります。

確定申告書をどう扱うか

基礎収入の計算では、確定申告書の所得金額が出発点になります。
しかし、節税のために実際の所得より低く申告している場合、申告書だけでは実態が反映されません。
この場合、実際の収入を立証する材料を揃えていく必要があります。

事業の固定経費の扱い

自営業の場合、事業の家賃、人件費、設備費などの固定経費があります。
これらは、事故にあって仕事ができなくなっても、発生し続ける費用です。
こうした固定経費の扱いも、損害額の計算で論点になります。

休業損害の特殊性

自営業者の休業損害は、給与所得者の場合とは計算方法が異なります。
過去の所得実績、事業の安定性、代替の人手の有無などを踏まえた、専門的な計算が必要です。
自営業者の方の事案は、サラリーマンの方と比べて、論点が複雑です。
ご自身の事業の特性に即した、きめ細かい主張が必要になります。
→ 詳しくは「自営業者が交通事故で被害を受けた場合の対応方法」をご覧ください。

専業主婦・兼業主婦の被害者

主婦の方の場合、家事労働を経済的価値のある労働として評価することが、論点になります。
第9章でもお伝えしたとおり、女性の賃金センサスの平均賃金を基礎収入として計算するのが、確立した裁判例の考え方です。
兼業主婦の場合は、パート収入と家事労働の評価を比較して、高い方を基礎収入とします。

家事代行費用の請求

後遺障害のために、これまでどおり家事ができなくなった場合、家事代行サービスを利用する費用も賠償の対象になり得ます。
具体的な計算方法は、家族構成、家事の内容、後遺障害の影響などによって変わります。

シングルマザーの被害者

シングルマザーの方が事故にあわれた場合、家計の柱として働く責任と、子育ての責任を一人で担っている特殊な事情があります。
後遺障害が残ったことで、仕事と子育ての両立が、これまで以上に難しくなることがあります。
こうした生活実態は、慰謝料の増額事由として主張する価値があります。
また、家計の柱として収入を確保する必要性が高いことから、逸失利益の計算でも、就労意欲や就労見込みを丁寧に立証していく必要があります。
→ 詳しくは「シングルマザーが交通事故被害者となった場合に知っておきたいこと」をご覧ください。

大学生・専門学校生の被害者

学生の方が12級認定を受けた場合、現在の収入はゼロまたはアルバイト収入だけです。
しかし、これからの長い人生で、後遺障害の影響を受け続けることになります。
主な論点は次のとおりです。

基礎収入を将来の見込みで計算する

大学生の場合、賃金センサスの大卒平均賃金を基礎収入として計算するのが、裁判例の考え方です。
これにより、これから社会人として働き始める将来の収入が、計算に反映されます。

就職活動・進路への影響

後遺障害が残ったことで、希望していた職種への就職が難しくなる、進路を変更せざるを得なくなる、というケースがあります。
こうした影響は、慰謝料の増額事由として主張する余地があります。

資格取得・学業への影響

専門資格を目指していた被害者にとって、後遺障害は資格取得のハードルを大きく上げることになります。
こうした事情も、賠償交渉の中で主張する論点になります。
→ 詳しくは「大学生が交通事故で怪我をしたら?対応の方法と注意点」をご覧ください。

高齢者の被害者

高齢の方が事故にあわれ、12級認定を受けた場合、保険会社は「年齢的に労働能力喪失期間は短い」「年齢による変性も影響している」といった主張をしてきます。
しかし、第9章でお伝えしたとおり、現代の日本では、65歳以上の方の半数以上が現に働いています。
高齢者の方であっても、就労意欲があり、就労実態があれば、相応の労働能力喪失期間を主張する余地があります。
また、高齢者の方は、家事労働や家族の介護など、家庭内での役割を担っていることが多くあります。
こうした役割への影響も、賠償交渉の中で主張する論点になります。
「高齢だから仕方がない」と諦めずに、ご自身の生活実態に即した主張をしていく価値があります。

12級認定を受けた被害者の方の生活への影響は、立場によって異なります。
そして、賠償交渉で主張すべき論点も、その方の立場に応じて変わります。
画一的な対応ではなく、被害者一人ひとりの状況に即した主張を組み立てることが、適正な賠償額を確保するための鍵です。

第13章 弁護士費用特約を活用する

12級認定後の交渉で、弁護士に依頼することの意義はここまでお伝えしてきたとおりです。
しかし、被害者の方が一様に気にされるのが、弁護士費用です。
「弁護士費用が高くて、結局手元に残るお金が少なくなるのではないか」。
「弁護士に依頼するか迷っているけれど、費用が心配で踏み切れない」。
そうした被害者の方に、ぜひ知っておいていただきたいのが「弁護士費用特約」です。

弁護士費用特約とは何か

用語解説:弁護士費用特約
自動車保険などに付帯できる特約のひとつ。交通事故の被害者になった場合に、弁護士費用や法律相談費用を、保険会社が負担してくれる仕組み。一般的には、弁護士費用は300万円まで、法律相談費用は10万円まで補償されることが多いです。

弁護士費用特約を使うと、被害者は自己負担なく弁護士に依頼することができます。
弁護士費用は、弁護士費用特約を提供している保険会社が、直接弁護士に支払います。
12級事案では、弁護士費用が100万円を超えることもあります。
この費用を保険会社が負担してくれるのですから、特約があるかどうかは、被害者にとって決定的な意味を持ちます。

12級事案でこそ意味が大きい

弁護士費用特約は、どの事案でも有用ですが、12級事案ではとりわけ大きな意味を持ちます。
理由は、12級事案では弁護士の関与による賠償額の増加幅が大きいからです。
慰謝料を任意保険基準から裁判所基準に上げるだけで、100万円以上の増加が見込めます。
逸失利益の主張を組み立て直せば、数百万円単位の増加が期待できます。
過失割合を適正に修正すれば、さらに金額が動きます。
こうした増加額に対して、弁護士費用は特約で全額カバーされる ― これが、12級事案で弁護士費用特約を使う最大のメリットです。

家族の特約も使える

ここで、被害者の方にぜひ知っておいていただきたいのが、ご自身が弁護士費用特約に加入していなくても、ご家族の特約が使える場合があるということです。

配偶者の特約

配偶者の自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、被害者本人がその特約を使えることが多くあります。
事故で12級認定を受けた方は、配偶者の保険を確認してみてください。

同居の親族の特約

同居の親族(両親、子ども、祖父母など)の自動車保険にも、弁護士費用特約が付いているか確認してみてください。
同居の親族の特約も、被害者本人が使えることがあります。

別居の未婚の子の特約

別居していても、未婚の子(独立して暮らす学生のお子さんなど)の場合、親の特約を使えることがあります。
大学生の方が事故にあった場合、ご両親の保険の特約を確認することは特に重要です。

自動車保険以外の特約

弁護士費用特約は、自動車保険だけでなく、火災保険、傷害保険、個人賠償責任保険などにも付いていることがあります。
ご自身やご家族が加入している保険を、一通り確認してみる価値があります。

弁護士費用特約を使っても、保険等級は下がらない

「弁護士費用特約を使うと、保険等級が下がるのではないか」と心配される方がいます。
しかし、弁護士費用特約の利用は、自動車保険の等級に影響しません。
事故で対人賠償保険を使った場合は等級が下がりますが、被害者として弁護士費用特約だけを使う場合は、等級は変わらないのが一般的です。
特約の使用について、気兼ねする必要はありません。

弁護士費用特約がない場合でも、依頼する価値はある

特約がない場合、弁護士費用は被害者の自己負担になります。
それでも、12級事案では弁護士に依頼する価値があります。
弁護士費用を差し引いても、最終的に被害者の手元に残る金額が、本人交渉の場合より大きくなることが多いからです。
具体的には、弁護士費用を差し引いた後の金額(=被害者の実質的な受取額)が、保険会社の提示額と比べてどれくらい増えるのかを、依頼前に試算してもらうことができます。
多くの法律事務所では、初回相談を無料で行っています。
まず相談してみて、ご自身の事案で弁護士に依頼するメリットがあるかを、専門家の目で判断してもらうことをお勧めします。

弁護士費用特約は、12級事案の被害者にとって、極めて強力な味方です。
ご自身のもの、配偶者のもの、同居親族のもの、未婚の子のもの ― 使える特約がないか、ぜひ一度ご確認ください。
特約があれば、自己負担なく専門家のサポートを受けて、適正な賠償額を目指すことができます。

第14章 認定結果に納得できないとき ― 異議申立てと紛争処理機構

後遺障害申請の結果が、想定よりも低い等級になることがあります。
「12級になると思っていたのに、14級だった」。
「14級と思っていたのに、非該当だった」。
こうした場合、被害者には認定結果を見直してもらうための手段があります。
この章では、認定結果に納得できないときに取れる主な選択肢を整理します。

3つの見直しの仕組み

後遺障害認定の結果に対して、見直しを求める手段は、大きく分けて3つあります。

手続き 判断する機関 特徴
異議申立て 自賠責損害調査事務所 回数制限なし、新資料が必要
自賠責保険・共済紛争処理機構への申立て 紛争処理機構 第三者の判断、原則1回限り

異議申立て ― 最初に検討する手段

最初に検討するのが、異議申立てです。
異議申立ては、自賠責損害調査事務所に対して、もう一度判断を求める手続きです。
回数に制限はないため、何度でも申し立てることができます。

同じ資料を出しても結果は変わらない

第4章でもお伝えしたとおり、異議申立てで重要なのは、新しい医学的資料を揃えることです。
同じ資料を出しても、自賠責損害調査事務所の判断は変わりません。
前回の認定結果を覆すには、新しい証拠 ― 特に医学的な裏づけのある新しい資料 ― を揃える必要があります。

勝負を分ける新しい医学的資料

具体的には、次のような資料が、異議申立てで効果を発揮することがあります。

  • 画像診断専門医による再読影意見書(主治医が見落としていた所見の指摘)
  • 主治医の追加意見書(画像所見の具体的な指摘、症状との因果関係の説明)
  • 新しく実施した検査の結果(必要な場合)
  • これまで提出していなかった画像データ(過去の通院先からの取り寄せ)

これらの資料を、被害者請求の形式で、自賠責損害調査事務所に提出します。
資料の組み立て方、医師への意見書依頼の仕方、提出のタイミングなど、戦略的な判断が結果を分けます。

自賠責保険・共済紛争処理機構への申立て

異議申立てで結果が変わらなかった場合、次に検討するのが「自賠責保険・共済紛争処理機構」(以下「紛争処理機構」)への申立てです。
紛争処理機構は、自賠責保険の認定結果に対する紛争を、第三者として判断する機関です。
自賠責損害調査事務所とは別の機関が、独立した立場で判断するため、新しい視点で評価される可能性があります。

原則1回限り

紛争処理機構への申立ては、原則として1回限りです。
そのため、申立ての前に、提出資料や主張を十分に整える必要があります。

どんなときに使うか

異議申立てを行っても、認定結果が変わらず、しかし新たな材料があるとは限らない場合に、紛争処理機構への申立てを検討します。
第三者の判断を求めることで、これまでと違う結論が出る可能性があるかどうか、専門家の目で判断してもらってから申立てを行うのが現実的です。

異議申立てや紛争処理機構が現実的に勝負になるパターン

これらの手続きは、すべての事案で結果が変わるわけではありません。
勝負になるパターンを、率直にお伝えします。

勝負になりやすいパターン

  • 主治医が見落としていた画像所見が、画像診断専門医の再読影で見つかった場合
  • 後遺障害診断書に「画像所見あり」と書かれているが、具体的な所見の記載がなかったため、医師に追加意見書を書いてもらえる場合
  • 過去に通院していた別の医療機関の画像データを、新たに取り寄せて提出できる場合

勝負になりにくいパターン

  • 新しい医学的資料を用意できない場合
  • そもそも画像所見そのものが乏しい場合
  • 自覚症状の重さだけを訴えても、客観証拠が増えない場合

これらの判断は、医学と法律の両面で専門的な見極めが必要です。
「異議申立てをすればなんとかなる」という安易な期待ではなく、「新しい材料があるから勝負できる」という見通しを持って臨むことが大切です。

異議申立てを行う時間の余裕を持つ

最初の認定結果が出てから、すぐに示談交渉を進めると、異議申立ての時間がなくなってしまいます。
納得できない認定結果を受け取った場合は、いったん示談交渉のスピードを落とし、見直しの可能性を検討する時間を取ることが大切です。
なお、自賠責保険には時効があるため、長期間放置することはできません。
しかし、適切な期間内であれば、異議申立てや紛争処理機構への申立てを行う余地は十分にあります。
14級認定や非該当の結果に納得できない場合、すぐに諦めて示談に進むのではなく、専門家に相談する選択肢があることを覚えておいてください。

後遺障害認定の結果は、その後の賠償額を大きく左右します。
「14級だから仕方ない」「非該当だから諦めるしかない」と早急に結論を出してしまう前に、見直しの可能性があるかを冷静に検討する価値があります。
医学的な新しい材料があるかどうか、それによって結果が変わる見込みがあるかどうか ― これらを専門家とともに判断したうえで、次のステップを決めていただきたいと思います。

第15章 12級被害者からよく寄せられる質問

この章では、12級認定をめぐって、被害者の方から実際によく寄せられる質問に、率直にお答えしていきます。
ご自身の疑問と重なるものがあれば、ぜひ参考にしてください。

手続きについての質問

Q. 後遺障害申請は、いつすればよいですか?

A. 症状固定の時期になったら申請できます。
症状固定とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態のことです。
症状固定の判断は、主治医が行います。
保険会社から「そろそろ症状固定では」と急かされることがありますが、判断するのは主治医です。
焦らず、主治医とよく相談したうえで決めてください。

Q. 事前認定と被害者請求、どちらがいいですか?

A. 12級認定の可能性がある事案では、被害者請求をお勧めします。
事前認定では、加害者側の任意保険会社が手続きを代行するため、被害者側で申請内容をコントロールできません。
12級が取れるかどうか微妙な事案では、被害者請求で必要な資料を揃えて申請するほうが、認定の可能性を高められます。
詳しくは第6章をご覧ください。

Q. 後遺障害診断書は、どの病院で書いてもらえばよいですか?

A. 主に治療を担当した医師(主治医)に書いてもらうのが原則です。
複数の医療機関に通院した場合は、最も症状に詳しい医師に依頼します。
後遺障害診断書は、認定の最重要資料です。
診断書を書いてもらう前に、記載してほしい内容を医師に丁寧に伝えることが大切です。

慰謝料・賠償額についての質問

Q. 12級の慰謝料は、いくらくらいになりますか?

A. どの基準で計算するかによって、大きく変わります。
自賠責基準で約94万円、任意保険基準で約140万〜170万円、裁判所基準で約290万円が目安です。
弁護士が交渉に入ることで、裁判所基準による解決を目指すことができます。
詳しくは第8章をご覧ください。

Q. 12級の逸失利益は、どう計算されますか?

A. 「基礎収入 × 労働能力喪失率(14%) × ライプニッツ係数」で計算します。
基礎収入、労働能力喪失期間、ライプニッツ係数のすべてが、争いの対象になります。
特に、労働能力喪失期間は、保険会社が短く見積もろうとしてくる重要な論点です。
詳しくは第9章をご覧ください。

Q. 保険会社の提示金額は、信頼してよいですか?

A. 提示金額は、保険会社の社内基準で計算されたもので、必ずしも被害者にとっての適正額ではありません。
担当者の人柄が良くても、提示金額は別物です。
提示書面を受け取ったら、その場で判断せず、いったん専門家の目で確認してもらうことをお勧めします。
詳しくは第7章をご覧ください。

弁護士への依頼についての質問

Q. 弁護士費用はどれくらいかかりますか?

A. 法律事務所によって費用体系は異なります。
一般的には、着手金と報酬金で構成され、12級事案では合計100万円前後になることもあります。
弁護士費用特約に加入していれば、これらの費用を保険会社が負担してくれます。
特約がない場合でも、12級事案では弁護士費用を差し引いた後の金額が、本人交渉の場合より大きくなることが多くあります。
詳しくは第13章をご覧ください。

Q. 弁護士費用特約は、家族のものでも使えますか?

A. 使える場合が多くあります。
配偶者、同居の親族、別居の未婚の子(学生など)の保険に付帯している特約も、被害者本人が使えることが多いです。
自動車保険だけでなく、火災保険や傷害保険にも特約が付いていることがあります。
ご自身とご家族の保険を、一通り確認してみてください。

Q. 弁護士に依頼するタイミングはいつがよいですか?

A. 早ければ早いほど、できることが増えます。
理想的には、症状固定の前、後遺障害申請の準備段階で相談することです。
この段階で相談していただければ、後遺障害診断書の記載内容、申請方法の選択、必要な検査の確認など、認定の可能性を高めるためのサポートが可能です。
もちろん、12級認定後の示談交渉の段階で相談される方も多くいらっしゃいます。
提示書面を受け取った段階で相談していただければ、その後の交渉で大きな違いを生み出せます。

認定結果に納得できない場合の質問

Q. 14級だったのですが、12級に上げられますか?

A. 新しい医学的資料があれば、勝負できる可能性があります。
特に、画像診断専門医の再読影で新しい所見が見つかる場合、主治医に画像所見を具体的に書き直してもらえる場合などが、勝負になりやすいパターンです。
ただし、すべての事案で結果が変わるわけではありません。
材料があるかどうかを、専門家とともに見極めてから判断するのが現実的です。
詳しくは第4章および第14章をご覧ください。

Q. 異議申立てを何回までできますか?

A. 異議申立て自体に回数制限はありません。
ただし、毎回新しい医学的資料を揃えなければ、結果は変わりません。
同じ資料での申立てを繰り返しても、認定結果は同じになります。

地域や対応についての質問

Q. 高松市以外の地域からも相談できますか?

A. はい、対応可能です。
当事務所は高松市にありますが、香川県内全域はもちろん、近隣の愛媛県、徳島県、高知県、岡山県の被害者の方からのご相談にも対応しています。
電話やオンラインでの初回相談も可能ですので、遠方の方もお気軽にご相談ください。

Q. 入院中・通院中でも相談できますか?

A. 入院中・通院中の段階でも、もちろんご相談いただけます。
むしろ、治療中の早い段階で相談していただくことで、後遺障害認定に向けたサポートが充実します。
必要に応じて、ご自宅や入院先への訪問相談も可能です。

ここに挙げた質問と答えは、被害者の方からよくいただく代表的なものです。
ご自身の状況については、個別の事情を踏まえて専門家に相談していただくのが最も確実です。
「こんなことで相談していいのだろうか」と迷うようなことでも、まずはお気軽にお問い合わせください。

第16章 香川県・高松市で12級認定を受けた方へ ― 当事務所のご案内

最後に、香川県高松市で交通事故被害者側に立った活動を続けている当事務所のご案内をいたします。
この記事を読んでいただき、ご自身のケースで弁護士の関与を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

当事務所が大切にしている3つの視点

1. 被害者側に立つこと

当事務所は、交通事故の被害者側に立った弁護活動を続けています。
加害者側の保険会社の代理人になることはありません。
常に被害者の利益を最優先に考えて、交渉や訴訟に臨んでいます。
被害者一人ひとりの状況に向き合い、その方の人生に寄り添った解決を目指す ― これが、当事務所が最も大切にしている姿勢です。

2. 医学的な専門性を持って臨むこと

12級事案では、医学的な論点が結果を分けます。
画像所見の評価、神経症状の医学的裏づけ、可動域測定の正確性、骨折癒合の状態 ― これらの一つひとつが、認定や賠償額に直結します。
当事務所では、画像診断専門医や、後遺障害認定に詳しい医師との連携を大切にしています。
医学的に微妙な事案でも、専門家の協力を得ながら、被害者にとって最善の戦い方を組み立てています。

3. 被害者の生活全体を見る視点

12級事案で本当に大切なのは、賠償金額の数字だけではありません。
被害者の方が、後遺障害を抱えながらどう生活していくか。
仕事はどうなるか、家族との関係はどう変わるか、これからの人生をどう支えていくか。
当事務所は、こうした被害者の生活全体に目を向けた相談を心がけています。
数字としての賠償額にとどまらず、被害者の人生全体の立て直しに少しでも役立てることを、私たちの仕事の意義としています。

対応地域

当事務所は、香川県高松市に所在しています。
対応地域は、次のとおりです。

  • 香川県内全域(高松市・丸亀市・坂出市・善通寺市・観音寺市・さぬき市・東かがわ市・三豊市・土庄町・小豆島町・三木町・直島町・宇多津町・綾川町・琴平町・多度津町・まんのう町)
  • 愛媛県(松山市・今治市・新居浜市・西条市・四国中央市など)
  • 徳島県(徳島市・鳴門市・阿南市・吉野川市など)
  • 高知県(高知市・南国市・四万十市など)
  • 岡山県(岡山市・倉敷市・玉野市・総社市など)

遠方の方には、電話やオンラインでの初回相談も対応しています。
ご自宅や入院先への訪問相談が必要な場合は、ご相談ください。

ご相談の流れ

1. お問い合わせ

電話、メール、ウェブサイトのお問い合わせフォームから、ご連絡ください。
事故の概要、現在の状況、ご相談の内容を、簡単にお伝えいただきます。
ご相談の予約日時を調整いたします。

2. 初回相談(無料)

初回相談は無料で承っています。
事故の状況、ケガの経過、保険会社とのこれまでのやりとりなどを、丁寧にお聞きします。
そのうえで、ご相談の内容に応じて、見通しや今後の進め方をお伝えします。
弁護士費用特約の有無についても確認します。

3. ご依頼のご検討

初回相談の内容を踏まえて、ご依頼するかどうかをご検討いただきます。
その場で決めていただく必要はありません。
ご家族とご相談したうえで、後日改めてお返事いただくことも可能です。
ご依頼いただかない場合でも、その後の対応について率直なアドバイスを差し上げます。

4. 委任契約

ご依頼いただく場合、委任契約を結びます。
契約内容、弁護士費用、進め方について、書面で明確にお伝えします。
弁護士費用特約を使う場合は、特約の保険会社との手続きも当事務所で対応します。

5. 弁護活動の開始

委任契約後は、被害者の方に代わって、保険会社や加害者側の代理人とのやりとりを行います。
後遺障害申請、示談交渉、訴訟など、事案の段階に応じて適切な対応を進めます。
経過は適時にご報告し、重要な判断はご依頼者と相談したうえで行います。

お気軽にご相談ください

「相談するほどの内容ではないかもしれない」「弁護士に話すのは敷居が高い」と感じる方も、いらっしゃるかもしれません。
しかし、被害者の方の不安や疑問は、どんな小さなものでも、お話を伺う価値のあるものです。
ご相談いただいた結果、「弁護士の関与は必要ない」という結論になることもあります。
それでも、専門家の目で一度状況を整理してもらえることには、大きな意味があります。
12級認定を受けた、あるいは12級が視野に入っている被害者の方。
14級認定や非該当の結果に納得できない被害者の方。
保険会社からの提示書面を受け取って判断に迷っている被害者の方。
どのような段階の方でも、お気軽にご相談ください。

この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ご自身の状況について整理し、次の一歩を考えるきっかけになっていれば、書き手としてこれに勝る喜びはありません。

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