交通事故の発生から解決までの流れ|6つの段階と、各段階で被害者がすべきこと

交通事故に遭った直後は、誰でも頭が真っ白になります。
何をすればいいのか。
どの順番で進むのか。
いつ、何に気をつければいいのか。
この記事では、事故の発生から解決までの流れを、六つの段階に分けて説明します。
それぞれの段階で、被害者の方がつまずきやすいポイントと、その場でできる対策をお伝えします。
実は、賠償の金額は、最後の交渉ではなく、もっと早い段階の行動でほぼ決まってしまいます。
この記事を読めば、その理由が分かるはずです。
1.事故直後〜当日──ここでの記録が、すべての土台になります
1-1.必ず警察を呼び、人身事故として届け出る
まず、警察に連絡します。
これは法律上の義務でもあります。
ここで大事なのは、ケガがあるなら必ず、人身事故として届け出ることです。
物件事故(物損事故)のままにしておくと、警察による実況見分調書が作られません。
実況見分調書は、後で過失割合を争うときの、もっとも重要な資料です。
その場では痛みが軽いからと物件事故で済ませ、後日痛みが出てから切り替えようとすると、手続きに手間がかかります。
時間が経つほど、切り替えは難しくなります。
人身事故のときに警察が作成する、事故状況の記録です。
現場の図面や、当事者の説明が記載されます。
過失割合でもめたとき、裁判所も参考にする資料です。
1-2.相手の情報と、現場の証拠を残す
相手の氏名、住所、連絡先、車のナンバーを確認します。
そして、自賠責保険と任意保険の会社名・証明書番号も控えてください。
相手が任意保険に入っているかどうかで、その後の手続きの流れが変わるからです。
スマホで撮影しておくべきものは、次のとおりです。
車の損傷箇所。
双方の車の位置関係。
路面のブレーキ痕や散乱物。
信号や標識を含めた、現場全体の様子。
ドライブレコーダーがあれば、映像は必ず保存してください。
上書きされる前に、別の場所にコピーしておくことが大切です。
目撃者がいれば、連絡先を聞いておきます。
記憶は薄れますが、その日の映像と記録は薄れません。
1-3.痛みが軽くても、当日中に病院へ
事故直後は、興奮状態で痛みを感じにくくなっています。
翌日、翌々日になってから、首や腰の痛みが出てくることは、めずらしくありません。
ここに、実務上の大きな落とし穴があります。
事故から初診まで日数が空くと、そのケガは本当に事故のせいなのか、と疑われる原因になるのです。
これを因果関係の問題といいます。
初診が事故から1週間後、2週間後になると、保険会社は治療費の支払いに難色を示すことがあります。
後遺障害の審査でも、初診の遅れは不利にはたらきます。
ですから、痛みが小さくても、当日か、遅くとも2〜3日以内に整形外科を受診してください。
そして、痛む場所は、小さな痛みも含めて、すべて医師に伝えてください。
初診のカルテに書かれていない部位は、後から追加しても、事故との関係を疑われやすくなります。
ご相談の中で、悔やまれるケースの多くは、この初期対応です。
たいしたことないと思って病院に行かなかった。
首は痛いと言ったが、腰の痛みは我慢して言わなかった。
数週間後にはどうにもできないことが、当日なら数時間で済みます。
事故当日の受診は、体のためであると同時に、記録のためでもあるのです。
2.治療・通院の期間──賠償額は、この期間に決まっていきます
2-1.治療費は保険会社から病院へ直接支払われます
相手が任意保険に入っていれば、保険会社から連絡が来ます。
そして、治療費を保険会社が病院に直接支払う手続きが取られます。
これを一括対応といいます。
被害者が窓口で立て替える必要がないので、便利な仕組みです。
ただし、これは保険会社のサービスであって、法律上の義務ではありません。
だからこそ、後で出てくる、打ち切りという問題が起こります。
相手の任意保険会社が、自賠責保険の分もまとめて、治療費を病院に直接支払う仕組みです。
保険会社の任意のサービスなので、保険会社の判断で終了されることがあります。
2-2.通院の頻度が、慰謝料と後遺障害の両方に影響します
医師の指示に従って、必要な通院を続けてください。
痛みがあるのに我慢して通院間隔を空けると、二つの不利益があります。
一つは、慰謝料です。
入通院慰謝料は、治療期間と通院実績をもとに計算されます。
通院日数が極端に少ないと、金額が下がる方向にはたらきます。
もう一つは、後遺障害の認定です。
通院が途切れがちだと、症状は軽かったのだろう、と判断される材料になります。
実務の感覚では、1か月以上通院が空くと、そこで治療は一区切りついたと扱われる危険が高まります。
忙しくて通えない事情があるなら、その事情をカルテに残してもらうことも一つの方法です。
黙って間隔が空くのが、いちばんよくありません。
2-3.仕事を休んだ分は、休業損害として請求できます
事故のケガで仕事を休んだ場合、減った収入は休業損害として請求できます。
会社員の方は、勤務先に休業損害証明書を書いてもらい、保険会社に提出します。
毎月請求すれば、毎月受け取ることも可能です。
見落とされやすいのは、次のような方々です。
主婦や主夫の方も、家事労働について休業損害を請求できます。
自営業の方は、前年の確定申告書などをもとに計算します。
有給休暇を使って通院した場合も、その分は休業損害の対象になります。
事故のケガのせいで働けず、収入が減った分の損害です。
給与所得者だけでなく、主婦・主夫や自営業の方にも認められます。
3.治療の終わり方──完治か、症状固定か
3-1.症状固定は、医師が判断するものです
治療を続けた結果は、二つに分かれます。
完治した場合は、そのまま損害額の計算に進みます。
治療を続けても大きな改善が見込めない状態になった場合、それを症状固定といいます。
症状固定になると、残った症状は後遺症として、別の手続きに進みます。
ここで覚えておいていただきたいことがあります。
症状固定かどうかを判断するのは、主治医です。
保険会社ではありません。
3-2.治療費の打ち切り打診には、こう対応します
治療がある程度続くと、保険会社から連絡が来ることがあります。
そろそろ症状固定ではないですか。
今月末で治療費の支払いを終了します。
むちうちなら3か月程度で、この連絡が来ることが多いのが実情です。
これは、先ほど説明した一括対応というサービスの終了予告です。
治療をやめなさいという命令ではありません。
まだ痛みがあり、医師も治療の継続が必要だと考えているなら、対応は次のとおりです。
まず、主治医に、治療継続の必要性を確認します。
そのうえで、保険会社に、医師の見解を伝えて延長を交渉します。
それでも打ち切られた場合、治療をやめる必要はありません。
自分の健康保険を使って通院を続け、その分の治療費は後で損害として請求する、という道があります。
症状固定の時期は最終的には医学的に判断されるものであり、保険会社が支払いをやめた日が症状固定日になるわけではないのです。
打ち切りの連絡が来ると、多くの方が、もう通えないと思い込んで治療をやめてしまいます。
ここが、その後の賠償を大きく左右する分かれ道です。
痛みが残っているのに治療をやめれば、後遺障害の認定はまず受けられません。
打ち切りの連絡が来た時点で、一度弁護士に相談する価値は十分にあります。
4.後遺障害の申請──事前認定ではなく、被害者請求を
4-1.後遺障害診断書が、審査のほぼすべてです
症状固定後も痛みやしびれが残っている場合、医師に後遺障害診断書を書いてもらいます。
後遺障害の審査は、原則として書面だけで行われます。
審査する人が、被害者本人に会うことはありません。
つまり、診断書に書かれていない症状は、存在しないものとして扱われます。
残っている症状、可動域の制限、検査の結果。
これらが漏れなく記載されているかどうかが、認定を分けます。
書いてもらった診断書は、提出前に内容をよく確認してください。
残った後遺症の重さを、1級から14級までに分類したものです。
数字が小さいほど重い障害です。
等級が一つ違うだけで、賠償額が数百万円変わることもあります。
4-2.なぜ、被害者請求のほうがよいのか
申請の方法は二つあります。
相手の保険会社に手続きを任せる方法を、事前認定といいます。
被害者側で書類をそろえて申請する方法を、被害者請求といいます。
事前認定は、手間がかかりません。
しかし、どんな書類が提出されたのか、被害者には見えません。
支払う側である保険会社が、被害者に有利な資料を積極的にそろえてくれると期待するのは、構造的に無理があります。
被害者請求なら、提出する書類を自分の側で選べます。
医師の意見書や検査結果を追加で添付することもできます。
手間はかかりますが、その手間の分だけ、適正な等級に近づきます。
認定された場合、自賠責保険からの支払いを示談前に受け取れるという利点もあります。
5.示談交渉──最初の提示額は、スタート地点にすぎません
治療の終了、または後遺障害の等級確定後、相手の保険会社から示談提示書が届きます。
賠償金の計算書です。
ここで、必ず知っておくべきことがあります。
交通事故の賠償金には、三つの基準があります。
最低限の補償である自賠責基準。
保険会社の社内基準である任意保険基準。
裁判所が実際に使っている裁判所基準(弁護士基準)です。
最初に提示される金額は、ほとんどの場合、任意保険基準で計算されています。
本来の適正額である裁判所基準より、かなり低いのが通常です。
慰謝料や逸失利益が、基準の変更だけで2倍前後になる事案は、実務ではめずらしくありません。
後遺障害のせいで、将来得られるはずだった収入が減る分の損害です。
等級・収入・年齢をもとに計算するため、金額が大きくなりやすい項目です。
提示書が届いたら、すぐに返事をする必要はありません。
まず、弁護士に提示内容を見てもらってください。
ご自身やご家族の自動車保険に弁護士費用特約がついていれば、費用の自己負担はほぼなく依頼できます。
弁護士が裁判所基準で再計算し、増額交渉を行います。
6.示談の成立と入金──サインの前が、最後の確認点です
金額に双方が合意すると、保険会社から示談書(免責証書という名前のこともあります)が届きます。
署名・捺印して返送すれば、示談は成立です。
入金は、返送から1〜2週間程度が目安です。
サインの前に、次の点を確認してください。
金額と支払時期は、合意したとおりか。
後遺障害の分は含まれているか。
そして、示談後に新たな後遺障害が判明した場合は別途協議する、という趣旨の一文があるか。
示談は、原則としてやり直しができません。
だからこそ、最後のこの一枚だけは、時間をかけて読んでください。
7.まとめ──賠償額は、事故当日から決まり始めています
六つの段階を見てきました。
流れを振り返ると、一つのことが分かります。
示談交渉は最後の段階ですが、そこで使える材料は、すべてそれ以前に作られている、ということです。
当日の受診が、因果関係の土台を作ります。
通院の積み重ねが、慰謝料と後遺障害の根拠を作ります。
診断書の記載が、等級を決めます。
最後の交渉は、それまでに積み上げた記録を、正しい基準にあてはめる作業なのです。
だからこそ、弁護士への相談は、示談提示が来てからでは少し遅いことがあります。
理想は、治療中、遅くとも打ち切りの連絡が来た時点です。
最後に、三つのポイントをもう一度。
痛みが小さくても、初期からきちんと受診と検査を受けること。
治療費の打ち切りや最初の提示額を、そのまま受け入れないこと。
弁護士費用特約を確認し、裁判所基準で交渉すること。
ご自身の保険証券を開いて、弁護士費用特約の有無を確かめる。
それが、今日この記事を読んだあとに、すぐできる第一歩です。
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