丸亀市内での「讃岐の早曲がり」が危険な理由

はじめに:この記事で分かること

丸亀市にお住まいの皆さまへ。
この記事は、丸亀市で起きている交通事故を、できるだけ正確な数字をもとに見つめ直すためのものです。
読み終えるころには、次のことが分かるようになっています。
・なぜ、香川県の運転が全国から注目されているのか。
・「讃岐の早曲がり」や合図不履行が、どうして高齢の歩行者の命を奪うのか。
・丸亀市内で、特に気をつけたい交差点や道はどこか。
・季節やお祭りによって、事故のリスクがどう変わるのか。
・もし事故に遭ってしまったとき、被害者として知っておきたいこと。
私たちは高松市で、交通事故の被害者の側に立って活動している弁護士です。
丸亀市の方からのご相談も、これまで数多くお受けしてきました。
その経験から見えてきたことを、できるだけやさしい言葉でお伝えします。

1. 全国から見られている、香川の運転

皆さんは、香川県の運転が、全国のドライバーからどう見られているかをご存じでしょうか。
JAF(日本自動車連盟)が行ったアンケートで、香川県は、運転マナーが悪いと思う県の第1位に選ばれたことがあります。
その理由として全国に知られているのが、「讃岐の早曲がり」と、ウインカーを出さない合図不履行です。
地元では、これが普通だ、と感じている方もいるかもしれません。
けれども、数字はもっと重いことを語っています。
香川県の人口10万人あたりの交通事故死者数は、長い間、全国でも上位が続いてきました。
2020年には6.17人で全国ワースト1位、2024年も3.35人で、ようやく11位まで下がった、という状況です。
丸亀市は、その香川県の中でも、四国の大動脈である国道11号や国道32号が通る、交通量の多い町です。
だからこそ、この問題は、丸亀市に暮らす一人ひとりに関わっています。

【用語解説】合図不履行(あいずふりこう)
右折や左折、進路変更をするときに、ウインカーを出さない、または出すのが遅れることをいいます。
道路交通法では、曲がる場所の手前30メートルでウインカーを出すことが決められています。

2. 「讃岐の早曲がり」とは何か

「讃岐の早曲がり」とは、交差点で右折するときの、ある危険な運転のことです。
直進してくる対向車が通り過ぎる前に、強引に右折を終わらせてしまう。
あるいは、信号が青に変わった瞬間に急発進して、対向車より先に右折してしまう。
こうした運転を指します。
なぜ、こんな運転が広まってしまったのでしょうか。
背景には、いくつかの心理があると言われています。
一つは、右折を待っていると後ろの車が渋滞してしまうので、それをふさぎたい、という気持ちです。
もう一つは、まじめに合図を出すのは格好悪い、という古い価値観の名残りです。
長い時間をかけて作られてきた、ゆがんだ運転の習慣が、身勝手なルールを生んでしまっているのです。
ここで、少し立ち止まって考えてみたいことがあります。
その運転は、本当に格好いいのでしょうか。

3. ウインカーを出さない、という致命的なズレ

早曲がりに拍車をかけているのが、ウインカーを出さない運転です。
曲がる直前まで合図を出さない、という方も少なくありません。
この行為がいちばん怖いのは、歩行者や自転車にとっての脅威になることです。
ウインカーが出ていなければ、歩行者は車がどちらへ動くのかを読めません。
安全だと思って道路を渡り始めた、その瞬間に、急に曲がってきた車とぶつかってしまう。
こうした事故が、現実に起きています。
車を運転する人にとっては、ほんの数秒の手間です。
しかし歩行者にとっては、その数秒が、命の分かれ目になります。
ウインカーは、自分の進む方向を周りに知らせ、歩行者を守るための合図です。
言葉を使わない、大切なコミュニケーションの道具なのです。

4. 数字が語る悲劇:犠牲になるのは横断中の高齢者

予測できない車の動きは、実際に、痛ましい死亡事故を引き起こしています。
2025年の香川県内の人身事故は、発生件数2,649件、亡くなった方は20人でした。
そのうち、65歳以上の高齢者が13人。
全体のおよそ7割、65.0%を占めています。
さらに、その13人のうち12人が、75歳以上の方でした。
どんな状況で亡くなったかを見ると、歩行中が8人で、いちばん多くなっています。
そして、その歩いていて亡くなった方の75.0%、つまり6人が、道路を横断している最中の事故でした。
車の予期せぬ動きと、歩行者側の、大丈夫だろう、という思い込み。
この二つのズレが重なったとき、出会い頭の事故が起きてしまいます。
これは、感情論ではありません。
丸亀市を含む香川県の、現実の数字が示していることです。

【用語解説】出会い頭事故(であいがしらじこ)
交差点などで、別々の方向から来た車や人が、お互いに気づくのが遅れてぶつかる事故のことです。
見通しの悪い交差点や、一時停止を守らない場面で多く起こります。

5. 丸亀市内で、特に気をつけたい場所

事故は、運転する人の心がけだけで起きるわけではありません。
道そのものの形が、事故を呼び込んでいる場所もあります。
丸亀市内には、香川県が事故ゼロプランなどで重点的に対策している交差点があります。
国道11号沿いの、西村交差点、吉岡東交差点、原田西交差点などです。
これらは車線が多く、車線変更や右左折のときに、車の動きが入り乱れやすい場所です。

渋滞が生む、飯野交差点の追突

国道11号の飯野交差点は、朝と夕方に激しく渋滞する、大きな四つ角です。
ここでは、追突事故が目立ちます。
前の車がブレーキを踏んでいるのに、車間距離が足りず、確認が遅れてぶつかってしまうのです。

形だけになった、一時停止

信号機のない交差点にも、危険はひそんでいます。
城西町の交差点では、止まれの標識があるにもかかわらず、過去5年で12件もの人身事故が起きています。
一時停止が、形だけのものになってしまっているのです。
綾歌町の国道32号沿いには、旧道と並んで走る、変則的な交差点が連なっています。
片方は右折禁止、もう片方は左折禁止。
短い間に信号がいくつも続き、運転する人の頭に大きな負担をかけます。
旧国道438号の、飯山・綾歌のカーブのきつい交差点でも、毎月のように事故が起きています。

讃岐ならではの、ため池と農道

そして、讃岐平野ならではの危険が、ため池と農道です。
香川県には、登録されているだけで、およそ1万4,600ものため池があります。
ため池に沿った道や農道は、周りの水田や水面よりも一段高い場所に作られていることが多いのです。
ガードレールのない直線の農道で、スピードの出しすぎやハンドルの操作ミスが起きると、車はそのままため池や用水路へ落ちてしまいます。
夜間の走行や、農作業の機械を運転するときは、特に注意が必要です。

6. 季節と時間帯で変わる、事故の危険

事故の危険は、季節や時間帯によっても姿を変えます。
丸亀市の主な産業は、農業です。
ため池の栓を抜く「ユル抜き」が始まる6月中旬から7月にかけて、地域は一気に農繁期に入ります。
農作業に関わる事故は4月から増え、5月にいちばん多くなります。
特に夏は、70代以上の高齢の方が、暑さで意識がもうろうとしたまま機械を運転し、農道から転落する事故が後を絶ちません。
秋から冬は、別の注意が必要です。
日が暮れるのが、急に早くなるからです。
香川県では、死亡事故が18時から20時の間に、最も多く起きています。
ちょうど、仕事帰りの車と、下校する子どもや歩行者が、道に重なり合う時間帯です。
ここに、香川特有の無灯火走行が加わります。
暗くなってもライトをつけない運転は、横断中の高齢者の発見を、決定的に遅らせてしまいます。

【用語解説】薄暮(はくぼ)時
日が沈む前後の、空がうす暗くなる時間帯のことです。
昼でも夜でもない明るさのため、歩行者や自転車が見えにくくなり、事故が増えます。
このため、早めのライト点灯がすすめられています。

7. お祭りやイベントの日に増える、別のリスク

丸亀市には、全国から人が集まる大きなイベントがあります。
これらは町を元気にする一方で、その日だけの、特別な事故のリスクを生みます。
2月の香川丸亀国際ハーフマラソンでは、国道11号や県道33号など、主要な道が長い時間、全面的に通行止めになります。
すると、車は狭い生活道路へと迂回します。
生活道路は、歩道と車道の区別があいまいで、歩行者との距離がとても近い道です。
規制で遅れて、気持ちが焦ったドライバーが無理な運転をすると、ふだんは事故の起きない交差点で事故が起きてしまいます。
5月の丸亀お城まつりでは、丸亀城の周りが、歩行者用の道に変わります。
このとき、臨時の無料駐車場や、無料のコミュニティバスが用意されています。
それを知らずに来た車が、有料駐車場の前で長い行列を作り、その列が、歩行者を見えなくする死角になります。
11月の丸亀うどん祭りでも、市役所前や通町のあたりで、激しい渋滞が起こります。
イベントの日は、無理に車で乗り入れず、バスや臨時駐車場を上手に使うことが、いちばんの安全策です。

8. もし事故に遭ってしまったら:被害者として知っておきたいこと

ここからは、私たち被害者側の弁護士の立場から、少しだけお伝えします。
事故は、どれだけ気をつけていても、巻き込まれてしまうことがあります。
そのとき、多くの被害者やご家族が、ある言葉に戸惑います。
それが、過失割合という考え方です。

【用語解説】過失割合(かしつわりあい)
事故が起きた責任が、当事者それぞれにどれくらいあるかを、数字で表したものです。
たとえば、車が8、歩行者が2、というように分けられます。
この割合によって、受け取れる賠償の金額が変わります。

道路を渡っていた歩行者が被害者なのに、あなたの側にも過失がある、と言われる。
そう聞いて、納得できない、と感じるご家族は少なくありません。
けれど、最初に保険会社から示される割合が、そのまま正しいとは限りません。
特に、「讃岐の早曲がり」のように、車が無理に曲がってきた事故では、車の側の責任が重く見られるべき場面が多くあります。
それを示すために大切になるのが、その瞬間の記録です。
ドライブレコーダーの映像、近くの防犯カメラ、そして目撃した方の話。
これらが、誰がどのように動いたのかを、静かに語ってくれます。
だからこそ、事故の直後に、慌てて示談に応じてしまわないことが大切です。
保険会社の論理と、被害者が置かれた現実との間には、しばしば大きな隔たりがあります。
高齢の方の事故では、その隔たりが、特に大きくなりがちです。
私たちは高松市で、その隔たりを埋めるために、被害者の側に立ち続けてきました。
丸亀の道を誰よりもよく知る皆さんと一緒に、この問題を考えていきたいと思っています。

9. 本当に格好いい運転を、丸亀から

まじめに合図を出すのは格好悪い、という古い習慣。
その一瞬の手間を惜しんだ結果が、高齢の歩行者の命を奪う、取り返しのつかない事故につながっています。
対向車を待つ、数秒のゆとり。
そのゆとりこそが、大人の余裕ではないでしょうか。
「讃岐の早曲がり」や合図不履行から卒業すること。
それは、誰かを我慢させることではありません。
自分の大切な家族が、安心して道を渡れる町をつくることです。
思いやりのある、本当に格好いい運転を、この丸亀市から広げていきましょう。
最後に、もし交通事故に巻き込まれ、どうすればよいか分からず不安なときは、一人で抱え込まないでください。
信頼できる人や、交通事故にくわしい専門家に、早めに相談することができます。
この記事が、丸亀市で暮らす皆さまの、安全な毎日の助けになれば幸いです。

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