東かがわ市での「路面凍結」の危険
【東かがわ市・阿讃山脈】平地が晴れていても油断は禁物。大坂峠と鵜の田尾トンネルにひそむ「局地的な路面凍結」の正体と、冬の防衛運転術
この記事では、東かがわ市から徳島県へ抜ける峠道で、冬に起きる路面凍結の危険についてお伝えします。
温暖な東かがわの市街地が晴れていても、なぜ峠の上だけが凍りつくのか。
その仕組みは、ドライバーの思い込みの、まさに隙を突いてきます。
どんな場所で、どんな凍結が待ち受けているのか。
そして、命を守るために、出発前と運転中に何ができるのか。
交通事故の被害者側に立って活動してきた弁護士の視点も交えながら、順を追って整理していきます。
最後まで読んでいただくと、冬の県境の道に対する心構えが、はっきりと変わるはずです。
1. なぜ「香川は暖かい」という思い込みが危険なのか
東かがわ市は、おだやかな瀬戸内海式気候に恵まれた土地です。
冬でも、雪が降ることはめったにありません。
ところが、市の南にそびえる阿讃山脈に目を向けると、話はまったく違ってきます。
そこには、平地とはまるで異なる、冬の厳しさが潜んでいます。
東かがわ市から徳島県へ抜ける、二つの大きなルートがあります。
一つは、大坂峠、県道1号の徳島引田線です。
もう一つは、国道318号、鵜の田尾トンネルのあたりです。
この二つの難所では、冬になると局地的な路面凍結が起こります。
香川県と徳島県の境にそびえる山々のことです。讃岐の「讃」と阿波の「阿」をとって、こう呼ばれます。瀬戸内側の平地が暖かくても、この山の上は冷え込みが厳しく、冬の気候はまったく異なります。
三本松や白鳥、引田の市街地を走っているとき、今日は絶好のドライブ日和だ、と感じる日があります。
ところが、徳島県境の峠道にさしかかった途端、景色が一変することがあります。
香川は暖かいから大丈夫、という思い込み。
ここでは、それを「平地脳」と呼んでみます。
この平地脳のまま、冬用でないノーマルタイヤで峠に突入し、スリップ事故を起こしたり、立ち往生したりする車が、毎年あとを絶ちません。
2. 峠道に潜む「3つの凍結トラップ」
ここからは、二つのルートに潜む、具体的な凍結の罠を見ていきます。
どれも、ドライバーの感覚のずれを突いてくる、こわい仕組みです。
トラップその1:トンネルを抜けた瞬間の「明暗の罠」
旧白鳥町から徳島県阿波市へと貫く、鵜の田尾トンネル。
全長およそ1.9キロの、長いトンネルです。
このトンネルの出口には、気候ががらりと変わる境界線が存在します。
トンネルの内部は、外の空気から遮られています。
ですから、路面は乾いていて、凍結もしていません。
走っていて、とても快適です。
ところが、トンネルを抜けた瞬間。
日かげで冷え切った、凍結した路面が、突然あらわれることがあります。
トンネルの中の快適な感覚のまま、時速50キロから60キロで飛び出すと、どうなるか。
抜けた瞬間に、タイヤのグリップ、つまり地面をつかむ力が失われます。
そして、制御できないまま対向車線にはみ出したり、壁に激突したりするのです。
ごく狭い範囲だけ、まわりと気候が違ってしまう現象のことです。日本語では微気候とも言います。トンネルの中と外、日なたと日かげなど、すぐ近くでも条件が変われば、路面の状態は大きく異なります。
トラップその2:見えない氷「ブラックアイスバーン」
旧引田町から鳴門市へと続く、大坂峠。
高速道路のトンネルが開通した今でも、地域の大切な生活道路であり、抜け道でもあります。
ここは、阿讃山脈から吹き降ろす風が強く、たいへん冷え込みます。
そして、もっとも恐ろしいのが、アスファルトの表面に薄い氷の膜が張る現象です。
これを「ブラックアイスバーン」と呼びます。
ドライバーの目には、ただ道路が雨でぬれているだけに見えます。
ところが、実際にはカチカチに凍っているのです。
カーブの手前で、いつもどおりブレーキを踏んだ瞬間。
車は、コマのように、くるくるとスピンを始めます。
特に夜間や早朝、日が当たらない山の斜面のカーブでは要注意です。
この見えない氷が、昼前まで残り続けることがあります。
路面に張った、ごく薄くて透明な氷のことです。下のアスファルトが透けて見えるため、黒くぬれているようにしか見えません。氷とは気づきにくく、ふつうに走れると思って進んだ車がスリップする、たいへん危険な路面状態です。
トラップその3:大型トラックの立ち往生が招く連鎖事故
国道318号の鵜の田尾は、高松と徳島の間を移動する、大型トラックの主要なルートでもあります。
県外からやってくる長距離トラックが、峠の登り坂でスリップして、立ち往生することがあります。
これを「スタック」と言います。
坂道の途中で、巨大なトラックが横を向いて道をふさいでしまったら、どうなるでしょうか。
後ろの車は、坂の途中で、強制的に止まらされます。
そして、ここに本当の恐怖があります。
凍った坂道での再発進は、冬用でないタイヤでは、ほぼ不可能です。
それどころか、止まった車が、そのまま坂を後ろ向きに滑り落ちていく。
そんな連鎖事故を引き起こすことがあるのです。
3. 冬の阿讃山脈を生き抜く「防衛運転3か条」
ここからは、すぐに実践できる具体的な備えを紹介します。
12月から2月にかけて、峠を越える前に、必ず実践してほしい心構えです。
その1:「3つの急」を封印する
凍結が予想される道路では、三つの動作を避けてください。
急ブレーキ、急ハンドル、急アクセル。
この「3つの急」は、車をスピンさせるスイッチだと思ってください。
減速するときは、フットブレーキだけに頼ってはいけません。
シフトレバーを操作して、エンジンブレーキを効かせながら、じんわりと速度を落とすのが鉄則です。
ブレーキペダルを踏まずに、エンジンの抵抗を使って速度を落とす方法です。シフトレバーを「B」や「2」「M」といった位置に入れると効きが強まります。凍った路面では、急なブレーキを避けながら減速できるため、スリップ防止に役立ちます。
その2:外気温計を、こまめに見る
最近の車には、外の気温を表示する計器がついていることがほとんどです。
平地で6度あっても、山を登るにつれて、3度、2度と下がっていきます。
外気温が3度以下になったら、道路はどこでも凍結し始めていると判断してください。
そして、もう一つ。
水たまりが、つやつやと光って見えたら、それは水ではなく氷かもしれません。
その3:出発前に、ライブカメラを1分チェック
今のドライバーにできる、最高の防衛策があります。
それは、事前の情報収集です。
香川県や徳島県の道路を管理する部署は、鵜の田尾トンネル周辺などの路面の様子を、リアルタイムで映すライブカメラをインターネット上に公開しています。
今、雪が積もっていないか。
路面はぬれて、あるいは凍っていないか。
これをスマートフォンで1分確認するだけで、準備不足のまま突入して自滅する危険を、確実に避けられます。
4. 弁護士の視点 ―「凍っているとは思わなかった」は通用するのか
ここからは、被害者側の弁護士として、ふだん感じていることをお伝えします。
峠での事故が起きると、ドライバーがこう言うことがあります。
道が凍っているとは思わなかった、と。
たしかに、見えない氷は、気づきにくいものです。
しかし、ここには大切な考え方があります。
冬の峠道が凍結する可能性があることは、あらかじめわかっていることです。
外気温が下がり、日かげのカーブが危ないことも、予測できます。
予測できる危険であれば、ドライバーには、それに備える義務があります。
その道を走ると決めた以上、冬用タイヤを準備し、速度を落とすことが求められます。
ですから、凍っているとは思わなかった、という説明だけで、責任が軽くなるとは限りません。
むしろ、冬用でないタイヤで峠に入った点や、速度を落とさなかった点が、問われることがあります。
後ろから滑り落ちてきた車に、追突された場合
冬の峠では、こんな事故も起こりえます。
自分は安全に止まっていたのに、後ろから滑り落ちてきた車にぶつけられる、というものです。
このとき、滑ってきた相手が、それは不可抗力だ、と主張することがあります。
しかし、凍結を予測して冬用タイヤを用意したり、車間距離をとったりする義務を果たしていなければ、相手の主張がそのまま認められるとは限りません。
被害に遭われたときは、相手の言い分にうのみにせず、立ち止まることが大切です。
なお、ここでお伝えしているのは一般的な考え方です。
実際の事故では、状況によって判断が変わります。
個別の見通しについては、弁護士に直接ご確認いただくのが確実です。
事故が起きたとき、加害者と被害者のそれぞれに、どれだけの責任があるかを割合で示したものです。たとえば8対2のように表します。この割合によって、受け取れる賠償金の額が変わります。凍結への備えを怠った側は、責任が大きく判断される傾向があります。
5. 山への敬意を持って、県境の道を走り抜ける
大坂峠や阿讃の山々は、かつて弘法大師、空海も歩いたとされる、歴史ある道です。
その自然の美しさは、東かがわ市の宝です。
けれども、冬の山は、夏とはまったく違う顔を見せます。
香川の車は雪に弱い、と言わせないために。
私たち地元のドライバーが、率先して山への敬意を払いたいものです。
外気温計を見て、ライブカメラを確かめ、ゆとりを持ってハンドルを握る。
その準備こそが、県境の道をスマートに走り抜ける鍵です。
それでも、相手の不注意で事故に巻き込まれてしまうことはあります。
そんなときは、ひとりで抱え込まないでください。
保険会社から示された金額や説明に、少しでも引っかかりを感じたとき。
そのときは、立ち止まって、専門家の目を通してみるという選択肢があります。
私たちは、香川県高松市を拠点に、交通事故の被害者側に立って活動してきました。
東かがわをはじめ、この地域の道や、峠の事情も、よく存じています。
この記事が、あなたとあなたの大切な人の、冬の安全な行き帰りのために役立てば幸いです。
そして、もし力が必要になったときには、どうか遠慮なくご相談ください。
