東かがわ市の「トラクター事故」速度差の罠

【東かがわ市・田園地帯】田植えと稲刈りの季節に急増する「トラクターと車の事故」。のどかな風景にひそむ速度差の罠と、追い越しの危険【東かがわ市・田園地帯】田植えと稲刈りの季節に急増する「トラクターと車の事故」。のどかな風景にひそむ速度差の罠と、追い越しの危険
この記事では、東かがわ市の田園地帯を走る幹線道路で、春の田植えの時期と秋の稲刈りの時期に増える、トラクターと一般車の事故についてお伝えします。
のどかな田園風景の中で、なぜ深刻な事故が起きるのか。
その最大の原因である「速度差」とは、どういうものか。
そして、農機具の後ろについたとき、ドライバーは何に気をつければよいのか。
交通事故の被害者側に立って活動してきた弁護士の視点も交えながら、順を追って整理していきます。
最後まで読んでいただくと、農繁期の田舎道に対する見方が、はっきりと変わるはずです。

1. なぜ東かがわ市で「速度差」が危険になるのか

東かがわ市には、県道10号、高松長尾大内線や、通称の広域農道といった幹線道路が、田園地帯を並んで走っています。
これらの道には、共通する特徴があります。
信号が少なく、まっすぐで、見通しがよいのです。
そのため、車のスピードが自然と出やすくなります。
ふだんは、流れのよい快適な道です。
ところが、田植えや稲刈りの季節になると、ここに思わぬ罠が生まれます。
それが「速度差」です。
時速50キロから60キロで流れている道路に、田んぼから、時速10キロほどでのろのろと動くトラクターが出てきます。
この大きな速度の差が、事故の根っこにあります。

【用語解説】農繁期(のうはんき)
農作業がもっとも忙しくなる時期のことです。東かがわ市の田んぼでは、田植えの5月から6月ごろと、稲刈りの9月から10月ごろが、これにあたります。この時期は、トラクターやコンバインといった農機具が公道を走る機会が増えます。

ここで、もう一つ知っておきたいことがあります。
人間の目は、動いているもの同士が、どれくらいの速さで近づいているかを、正確に測るのが苦手です。
ですから、前方にトラクターを見つけても、まさかあんなに遅いとは思わなかった、と油断しがちです。
そして、想像よりずっと速く車間距離が縮まり、慌てて急ブレーキを踏むことになります。
見えていたのに、間に合わない。
速度差は、こうして牙をむくのです。

2. 知っておきたい「トラクター特有」の3つの危険

ここからは、農機具ならではの危険を、その構造や農家側の事情にも踏み込んでお伝えします。
ふつうの車との違いを知ることが、事故を防ぐ第一歩です。

危険その1:トラクターは突然、右に曲がる

一本道でトラクターの後ろについた車は、つい、いらいらしてしまいます。
そして、無理な追い越しをかけてしまいがちです。
しかし、ここに最大の罠があります。
トラクターは、次の田んぼへ入るために、あぜ道や細い農道へ突然曲がることがあるのです。
しかも、農機具のウインカーは、車に比べて見えにくいことがあります。
一般車が、よし追い越せる、と加速したその瞬間。
右折してきたトラクターの横に、激しくぶつかってしまう。
この種類の事故が、農繁期には数多く起きています。
追い越しは、相手が一定の方向に進み続けることを前提にした動きです。
その前提が、トラクターでは通用しないことがあるのです。

危険その2:後ろが「物理的に見えない」

多くのトラクターは、後ろに大きな作業機をつけています。
土を耕すロータリーなどが、その代表です。
この作業機が、後ろの視界をさえぎってしまいます。
つまり、トラクターを運転している人からは、後方が見えにくくなっているのです。
さらに、農家の方には、高齢の方も少なくありません。
体を後ろにねじって、目で確認することが、難しい場合があります。
その結果、後ろから一般車が速いスピードで迫っていることに気づかないまま、公道に出てしまうことがあります。
トラクターの後ろは、運転している人にとって、見えない世界なのです。
このことを知っているだけで、無理に近づくことの怖さがわかります。

危険その3:道路に落ちた「泥のかたまり」

田んぼから公道に出たばかりのトラクターのタイヤには、泥がたっぷりついています。
その泥が、大きなかたまりとなって、道路にぼとぼとと落ちていきます。
この泥が、二つの危険を生みます。
一つは、視界を奪う危険です。
乾いた泥は、後続車が通ると細かい粉になって舞い上がり、前が見えにくくなります。
もう一つは、滑る危険です。
雨が降ると、泥のある場所は、一瞬で粘土のように滑りやすくなります。
ブレーキやハンドルが効きにくくなり、スリップにつながります。
さらに、後ろの車がこの泥を避けようとして、急にハンドルを切ることもあります。
その結果、対向車線にはみ出してしまう。
こうした二次的な事故も、東かがわの農繁期では起こりがちです。

3. 事故を防ぐための運転術

ここからは、すぐに実践できる具体的な工夫を紹介します。
トラクターの後ろについたとき、どう振る舞うか。
それが、安全を大きく左右します。

追い越しは「曲がる場所がない」と確信できるまで待つ

トラクターの後ろについて、追い越したくなる気持ちはわかります。
しかし、相手がいつ右に曲がるか、わからないと考えてください。
特に、近くにあぜ道や農道の入り口が見えるときは、絶対に追い越してはいけません。
トラクターが、その入り口へ曲がろうとしているかもしれないからです。
追い越すなら、しばらく道が続き、曲がる場所がないと確信できる場所だけ。
そして、対向車が来ていないことを、十分に確かめてからにしてください。
数分の遅れは、取り返せます。
しかし、事故は取り返せません。

車間距離を、いつもより大きくとる

速度差のある相手の後ろでは、車間距離を多めにとってください。
トラクターが急に止まったり、曲がったりしても、対応できる余裕が生まれます。
また、泥が落ちている場所では、無理に避けようとせず、まず速度を落とすことが大切です。
急ハンドルは、対向車線へのはみ出しを招きます。

農機具を見かけたら、早めに減速する

前方に農機具を見つけたら、まだ遠いから大丈夫、と思わないでください。
前に書いたとおり、近づく速さは、思ったより速いものです。
見つけた時点で、アクセルをゆるめておく。
それだけで、急ブレーキを避けられます。

4. 弁護士の視点 ―「のろのろ運転が悪い」のか

ここからは、被害者側の弁護士として、ふだん感じていることをお伝えします。
トラクターとの事故が起きると、一般車のドライバーがこう言うことがあります。
あんなに遅い車が、公道を走っているのが悪い、と。
たしかに、遅い農機具は、流れをさまたげるように感じるかもしれません。
しかし、ここには大切な考え方があります。
トラクターやコンバインは、決められた条件を満たせば、公道を走ることが認められています。
農作業のために、田んぼと田んぼの間を移動する必要があるからです。
つまり、ゆっくり走っていること自体は、悪いことではありません。
一方、後ろから来る車には、前の状況に合わせて速度を調整し、安全に走る義務があります。
ですから、無理な追い越しで事故を起こした場合、追い越した側の責任が大きく問われることが多いのです。
遅い車がいたから、という理由だけで、責任がなくなるわけではありません。

農機具を運転する方へ

この視点は、農作業をされる方にも関わります。
公道を走るときは、車に存在を知らせる工夫が、ご自身を守ります。
低速車であることを示す表示や、後ろの作業機が目立つようにする反射材。
そして、曲がるときは、できるだけ早めに、はっきりと合図を出すこと。
後ろの車に、これから曲がる、と伝わるだけで、追い越しによる事故は大きく減ります。
おたがいが相手の事情を知ることが、田舎道の安全につながります。
なお、ここでお伝えしているのは一般的な考え方です。
実際の事故では、状況によって判断が変わります。
個別の見通しについては、弁護士に直接ご確認いただくのが確実です。

【用語解説】過失割合
事故が起きたとき、加害者と被害者のそれぞれに、どれだけの責任があるかを割合で示したものです。たとえば9対1のように表します。この割合によって、受け取れる賠償金の額が変わります。無理な追い越しなど、危険な運転をした側は、責任が大きく判断されやすくなります。

5. のどかな風景を、これからも守るために

東かがわ市の田園地帯は、この土地が誇る、美しい風景です。
春には水をはった田んぼが空をうつし、秋には黄金色の稲穂が風にゆれます。
その風景は、田んぼを耕す人たちの、毎日の働きによって守られています。
トラクターやコンバインが公道を走るのは、その大切な営みの一部です。
道で農機具に出会ったとき、少しだけ速度をゆるめ、距離をとってみてください。
その一台の後ろには、この土地の風景を守る暮らしがあります。
おたがいに譲り合う気持ちが、のどかな道を、安全な道に変えます。
それでも、相手の不注意で事故に巻き込まれてしまうことはあります。
そんなときは、ひとりで抱え込まないでください。
保険会社から示された金額や説明に、少しでも引っかかりを感じたとき。
そのときは、立ち止まって、専門家の目を通してみるという選択肢があります。
私たちは、香川県高松市を拠点に、交通事故の被害者側に立って活動してきました。
東かがわをはじめ、この地域の道や、農作業の事情も、よく存じています。
この記事が、あなたとあなたの大切な人の、安全な毎日のために役立てば幸いです。
そして、もし力が必要になったときには、どうか遠慮なくご相談ください。

被害者に役立つ情報

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