引田ひなまつりでの交通事故に注意してください

【東かがわ市・引田ひなまつり】歴史ある港町だからこそ起きる「3つの死角」。観光客と地元を守る、おもてなしの運転術
この記事では、東かがわ市引田で2月下旬から3月初旬に開かれる「引田ひなまつり」の時期に、なぜ事故の危険が高まるのかをお伝えします。
風待ちの港町として知られる美しい街並みが、この数日間だけ、なぜ運転の難しい場所に変わるのか。
歴史ある町だからこそ生まれる、思わぬ死角とは何か。
そして、ドライバーが「おもてなしの心」で何ができるのか。
交通事故の被害者側に立って活動してきた弁護士の視点も交えながら、順を追って整理していきます。
最後まで読んでいただくと、まつりの時期に引田を走るときの心構えが、はっきりと変わるはずです。

1. 風待ちの港町・引田が、まつりの数日間だけ一変する

2月の下旬から3月の初めにかけて、東かがわ市引田の本町通りのあたりは、華やかに彩られます。
色鮮やかな御殿飾り、市松人形、そして現代のおひなさま。
町の内外から、多くの観光客が訪れます。
ふだんの引田は、穏やかな港町です。
ところが、ひなまつりの期間だけは、道路の様子ががらりと変わります。
ふだんは静かな道に、車と人があふれます。
そして、この美しい街並みだからこそ生まれる、特有の危険があるのです。
ここからは、その仕組みを三つに分けて見ていきます。

2. 歴史ある街並みが生む「3つの死角」

死角その1:直角に折れる「鍵の手」

引田の古い街並みは、戦国時代や江戸時代の、城下町や港町のおもかげを今に伝えています。
その名残として、道が直角に折れ曲がった場所が、あちこちにあります。
これを「鍵の手」と呼びます。
また、車が一台やっと通れるほどの狭い路地が、網の目のように張りめぐらされています。
讃州井筒屋敷や、かめびし屋の美しい赤い壁を巡る観光客は、この鍵の手の角を、次々と歩いていきます。
ここに、大きな危険があります。
車から見ると、角の1メートル手前まで、歩行者の姿がまったく見えません。
つまり、完全な死角が、いたるところに存在しているのです。
角の向こうから、突然、人が現れる。
それを前提に運転しなければなりません。

【用語解説】鍵の手(かぎのて)
道が直角に折れ曲がっている場所のことです。昔の城下町や港町で、敵がまっすぐ攻め込めないようにするなど、防衛上の理由で作られました。歴史を伝える貴重な構造ですが、見通しが悪く、車にとっては死角になりやすい場所です。

死角その2:「歩行者天国」という思い込み

ひなまつりの期間中、中心部の一部の道は、歩行者専用になります。
しかし、そこから一歩外に出ると、様子が変わります。
県道の津田引田線や、臨時駐車場へ続く道は、ふだんどおり車が行き交う公道です。
ここに、心理の落とし穴があります。
おひなさんマップを片手に、古い家々の軒先を見上げて歩く観光客。
その頭の中は、すっかりお祭りモードになっています。
この一帯はぜんぶ歩行者天国だ、という錯覚に陥っているのです。
そのため、車が通る県道でも、左右をまったく確認せずに、ふらりと横断してしまうことがあります。
人の注意が、ぽっかりと空白になる瞬間です。

死角その3:臨時駐車場まわりの混雑

多くの車は、引田港周辺などの臨時駐車場へ案内されます。
ここが、車と歩行者がもっとも高い密度で交わる場所になります。
慣れない県外ナンバーのドライバーは、どこが空いているかと、きょろきょろしながら運転しがちです。
一方、歩行者は、駐車場の出入り口を、ただの歩道のように思って歩いています。
さらに、狭い角を曲がろうとする車が、歩行者を巻き込みそうになることもあります。
これには、車の構造が関わっています。

【用語解説】内輪差(ないりんさ)
車が曲がるとき、後ろのタイヤが前のタイヤより内側を通ることで生まれる差のことです。大きな車ほどこの差が大きく、運転手が思うより内側に後輪が入り込みます。曲がり角の歩行者を巻き込む事故の原因になります。

3. 観光客も地元も守る「おもてなし運転」3か条

ここからは、すぐに実践できる具体的な運転術を紹介します。
引田の文化を楽しんでもらい、笑顔で帰ってもらうための、おもてなしの技術です。

その1:「鍵の手」の手前では、構えブレーキ

狭い路地や、折れ曲がった角を通るときは、アクセルを踏むのをやめてください。
そして、右足をブレーキペダルの上に、軽く乗せておきます。
これを「構えブレーキ」と呼びます。
その状態で、時速10キロ以下まで落とし、最徐行で進みます。
万が一、角から子どもやお年寄りが飛び出してきても、その場ですぐに止まれる速度をたもつことが、いちばんの鉄則です。

その2:優しいアイコンタクトで、我に返ってもらう

マップやおひなさまに夢中の観光客を見かけたら、まずは減速します。
ここで、クラクションを鳴らして驚かせてはいけません。
目が合うまで、静かに待ちます。
あるいは、手で、お先にどうぞ、と合図を送ります。
ドライバー側から意思を伝えることで、歩行者も、ここは車が通る道だった、とはっと我に返ることができます。
それが、おもてなしの運転です。

その3:駐車場の出入りは、完全に止まって死角を確認

臨時駐車場から県道に出るとき、また県道から駐車場に入るとき。
必ず、タイヤが完全に止まる一時停止を行ってください。
ゆっくり動いているつもりでも、危険があります。
フロントガラスの脇にある柱の死角に、背の低い子どもや、腰の曲がった高齢の歩行者が、すっぽり隠れてしまうことがあるのです。
止まって、首を振って、のぞき込むように見る。
この一手間が、命を救います。

【用語解説】ピラー(柱)の死角
フロントガラスの左右にある、屋根を支える柱の部分をピラーと呼びます。この柱があるために、運転席からは見えない範囲が生まれます。ちょうど人ひとりが隠れる幅があり、交差点や曲がり角での見落としの原因になります。

4. 弁護士の視点 ―「観光客が悪い」では済まされない

ここからは、被害者側の弁護士として、ふだん感じていることをお伝えします。
観光地での事故が起きると、ドライバーがこう言うことがあります。
観光客が、急に飛び出してきたのだから仕方がない、と。
たしかに、お祭り気分の歩行者が、不注意に道を渡ることはあります。
しかし、ここには大切な考え方があります。
まつりの期間、引田に多くの観光客が集まり、人が道にあふれることは、あらかじめわかっていることです。
歩行者がお祭り気分で注意散漫になっていることも、十分に予測できます。
予測できる危険であれば、ドライバーには、それに備えて慎重に運転する義務があります。
ですから、観光客が飛び出した、という理由だけで、ドライバーの責任が大きく軽くなるとは限りません。
特に、子どもや高齢者が関わる事故では、ドライバーにより重い注意が求められる傾向があります。

歩行者として、まつりを楽しむ方へ

この視点は、歩いて観光する方にも関わります。
おひなさまや街並みに夢中になる気持ちは、よくわかります。
しかし、歩行者専用の区域を一歩出れば、そこは車が通る道です。
道を渡るときは、いったん立ち止まり、左右を確かめてください。
その数秒が、楽しい思い出を守ります。
おたがいに気を配ることで、まつりは安全に楽しめます。
なお、ここでお伝えしているのは一般的な考え方です。
実際の事故では、状況によって判断が変わります。
個別の見通しについては、弁護士に直接ご確認いただくのが確実です。

【用語解説】過失割合
事故が起きたとき、加害者と被害者のそれぞれに、どれだけの責任があるかを割合で示したものです。たとえば9対1のように表します。この割合によって、受け取れる賠償金の額が変わります。子どもや高齢者が被害者の場合、その責任は小さく判断されやすくなります。

5. 赤壁の街に、今年も満開の笑顔を

引田ひなまつりは、東かがわ市が誇る、歴史あるまつりです。
風待ちの港町の街並みを守り、世代から世代へと引き継いできた、土地の宝です。
その文化を最高の思い出にする、最後のピースがあります。
それは、私たちドライバーの、おもてなしの心を持ったハンドルさばきです。
鍵の手の角では、そっと速度をゆるめる。
夢中で歩く人には、優しく道をゆずる。
そんな心のゆとりが、美しい赤壁の街並みに、事故のない満開の笑顔を咲かせます。
それでも、相手の不注意で事故に巻き込まれてしまうことはあります。
そんなときは、ひとりで抱え込まないでください。
保険会社から示された金額や説明に、少しでも引っかかりを感じたとき。
そのときは、立ち止まって、専門家の目を通してみるという選択肢があります。
私たちは、香川県高松市を拠点に、交通事故の被害者側に立って活動してきました。
引田をはじめ、東かがわのこの地域の道の特徴も、よく存じています。
この記事が、あなたとあなたの大切な人の、心おだやかなまつりの一日のために役立てば幸いです。
そして、もし力が必要になったときには、どうか遠慮なくご相談ください。

被害者に役立つ情報

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