さぬき市の志度交差点での交通安全情報

香川県高松市にて、交通事故案件を専門に取り扱う弁護士をしております。
日々、ご相談に来られる方々のお話を伺うなかで、特定の場所において類似の事故が繰り返し発生している現実に何度も向き合ってまいりました。
そこには、運転者個人の注意力だけでは説明のつかない、その場所固有の事情が潜んでいることが少なくありません。
本稿では、さぬき市志度1890番地付近にある交差点を取り上げ、ここで歩行者、自転車、バイクといった交通弱者の方々が事故に巻き込まれやすい理由と、現場で実践できる具体的な自己防衛の方法を、できるだけ平易な言葉でお伝えしたいと思います。

1. なぜ、特定の場所で事故は繰り返されるのか

事故が起こると、私たちはつい運転者の不注意や歩行者の油断を責めてしまいがちです。
しかし、長年にわたって同じ場所で似たような事故が繰り返されるとき、そこには個人の注意力だけでは越えられない、場所そのものが抱える難しさが存在していることがほとんどです。
さぬき市志度1890番地付近の交差点も、まさにそうした場所のひとつです。
北側には大規模な企業施設、南東側には大型のショッピングセンターが立地しており、この地理的な条件が、時間帯ごとに全く性格の異なる交通の流れを生み出しています。
そのことが、交通弱者の方々にとって見通しにくい危険を作り出しているのです。

2. この交差点で目立つ二つの事故パターン

この場所で特に多く確認されているのは、同じ方向に進んでいる車同士の追突事故と、左折時に横断歩道上で歩行者や自転車を巻き込んでしまう事故です。
一般的な交差点で多い出会い頭の衝突よりも、追突の発生頻度が際立って高いことが、この場所の大きな特徴です。
前を走る車が予期せず急に止まったり、運転者の視線が一瞬よそに向いたりした際、発見が遅れて衝突に至るというパターンが繰り返されています。
もう一方の左折時の巻き込みについては、車が左折を終える直前、横断歩道上の歩行者や自転車への安全確認が間に合わず、接触に至るという事象です。
これらは決して、運転者が悪意を持って起こしたものではありません。
この場所の構造が、運転者の注意力を超える要求を突きつけている結果として、起きてしまっている事故なのです。

3. 朝と昼で性格を変える交通の流れ

この交差点を理解するうえで欠かせないのが、時間帯による交通の流れの変化です。
朝夕の通勤時間帯には、北側の企業施設に向かう、あるいは帰宅する車が主役となります。
毎日同じ道を通っている運転者にとって、この経路はすでに体に染みついており、緊張感がゆるみがちな状態になります。
これは運転の習慣化、自動化と呼ばれる現象です。

【用語解説】運転の自動化
毎日同じ経路を運転することで、ハンドル操作やペダル操作が無意識化し、強く意識しなくても運転できてしまう状態を指します。慣れた道では便利な面もありますが、突発的な出来事への反応が遅れる原因にもなります。

一方、日中から夕方にかけては、南東のショッピングセンターを利用する車が増えます。
これらの車は、駐車場の入口を探したり、看板を見たりしながら走っている、いわば探索しながら走行している状態にあります。
車線変更や急な減速、低速走行が混在し、流れが不規則になります。
通勤者の習慣化された運転と、買い物客の探索的な運転、性格の異なる二つの流れが同じ空間で交わるところに、この場所特有の難しさがあります。

4. 鋭く交わる道がもたらす構造的な事情

ではなぜ、この交差点はこれほど高い注意力を求めるのでしょうか。
最大の理由は、道路が直角ではなく、鋭い角度で交わっている、いわゆる鋭角交差点であることにあります。
そして、交差点全体の面積が非常に大きいことも見逃せません。

【用語解説】鋭角交差点
道路同士が九〇度よりも鋭い角度で交わる交差点のことです。一般的な十字路と比べて、車が交差点を通り抜ける距離が長くなり、運転者が見渡すべき範囲も広くなるため、確認すべき情報量が大きく増えます。

道が鋭角に交わっているということは、車が交差点を通り抜ける経路がそれだけ長くなるということです。
交差点の中に車がとどまる時間が延びるぶん、他の車や歩行者、自転車との進路の交錯が起こりやすくなります。
また、面積が広いために、停止線から交差点の中心までの距離が長く、右折を待つ車が交差点の奥深くまで進入することになります。
すると、その右折待ちの車の陰に、対向方向から直進してくるバイクや自転車が完全に隠れてしまうという現象が生じます。

5. 車の柱が作り出す、見えない歩行者・自転車

ここからは、車の構造とこの交差点の形状が組み合わさったときに生まれる、特に深刻な問題に触れます。
車のフロントガラスの両脇には、屋根を支える太い柱があります。
これをAピラーと呼びます。

【用語解説】Aピラー
車のフロントガラスと、運転席側面のドアガラスとの間にある、屋根を支える柱のことです。安全性確保のため近年は太くなる傾向にあり、その裏側は運転者にとって死角となります。

直角に交わる普通の交差点であれば、運転者は首を左右に大きく動かすことで、Aピラーの陰になっている部分も見渡すことができます。
ところが鋭角交差点では、確認すべき方向が斜め前方や斜め後方という、ちょうどAピラーが最も視界を遮りやすい角度に重なってしまうのです。
さらにやっかいなことに、自分の車も相手の歩行者や自転車もどちらも動いている場合、相手がAピラーの陰に隠れ続けたまま近づいてくる、ということが起こります。
運転者がしっかり目視で確認したつもりでも、歩行者や自転車が柱の裏側に何秒も隠れたまま接近してくるため、視界そのものに入らないのです。
これは運転者の怠慢ではなく、車の構造と道路の形状がもたらす、純粋に物理的な現象です。

6. 青信号だから進めるはず、という思い込み

混雑時の追突事故の背景には、私たちの脳が無意識に行っている予測の働きがあります。
これを期待バイアスと呼ぶことがあります。

【用語解説】期待バイアス
過去の経験や常識から、こうなるはずだ、という予測を脳が先回りして立ててしまう傾向のことです。実際の視覚情報よりも、脳内の予測が優先されるため、予想に反する事態への反応が遅れます。

青信号だから前の車も進むはずだ、という予測が無意識に働いていると、前の車が突然止まったときに、現実の情報よりも脳内の予測が優先されてしまい、ブレーキを踏むまでの反応が遅れます。
ショッピングセンターへの入庫待ちの車列が交差点付近にあふれ、流れが不規則に止まる本交差点では、まさにこの期待バイアスが追突の引き金となるのです。

7. 歩行者と自転車利用者ができる、二つの実践

ここまでお読みくださった方には、もうお分かりかと思います。
この場所では、しっかり見るよう心がける、注意を払うように努める、といった心構えだけでは事故を防ぎきれません。
人間の認知の限界と、場所の構造的な特性が、心がけだけでは越えられない壁を作っているからです。
そこで、歩行者や自転車に乗る方々に、覚えておいていただきたい、二つの具体的な行動をご紹介します。

7-1. 車のタイヤを一点で見る

停止している車の前を横断するとき、あるいは左折を待っている車の左側を通り抜けようとするとき、車全体をぼんやりと眺めるのではなく、前輪のホイールの一点に視線を集中させてください。
車のなかで最も早く動き始める部位はタイヤです。
ボンネットやウィンカーを見ているよりも、コンマ数秒早く、車の発進を察知することができます。
タイヤがわずかでも回り始めたら、その瞬間に自分の足を止める、自転車であればブレーキをかける、これを徹底するだけで、巻き込まれる確率は大きく下がります。

7-2. 運転手の顔と視線を確かめる

車の前や横を通り過ぎる前に、フロントガラス越し、あるいはサイドガラス越しに、運転手の顔がどちらを向いているかを直接確かめてください。
運転手の顔がこちらを向いていない場合、あるいはAピラーの陰になって顔そのものが見えない場合は、自分は相手の視界に入っていないと判断して、車が完全に通り過ぎるまで動かない、これを原則としていただきたいのです。
鋭角交差点では、運転手の意識が反対方向にある対向車に集中しており、歩行者や自転車の側を全く見ていないことが珍しくありません。
見られていることを確認してから動く、この一手間が、自分の命を守ります。

8. バイクで通行される方への補足

バイクで対向右折待ち車両の脇を直進する場面では、対向車の陰に自分の姿が完全に隠れていることがあります。
特にこの交差点のように、右折待ち車両が交差点の中央付近まで進出する場所では、右折を始めた相手車両から見ると、自分のバイクは突然湧いて出たように映ってしまいます。
車列の陰に入ったときには、相手から見えていないことを前提に、いつでも止まれる速度まで落とすこと、これが最も確実な自衛手段となります。
速度を落とすことは負けではなく、自分の身を守るための積極的な技術です。

9. おわりに ― 場所を知ることが、命を守る

事故というものは、誰ひとりとして望んで起こすものではありません。
加害者となってしまった方も、被害に遭われた方も、その瞬間までは、いつもと変わらない一日を過ごしていただけのはずです。
だからこそ、特定の場所には、個人の注意力では補いきれない構造的な難しさが存在する、という事実を地域全体で共有していくことが、何よりも大切だと考えています。
さぬき市志度1890番地付近の交差点は、地理的条件と道路の形状が重なり合い、運転する方にとっても、歩く方や自転車に乗る方にとっても、本来の能力以上の注意を求められる場所です。
この場所を通行される際には、いつもよりほんの少しだけ、視線の置き方、距離の取り方、そして相手から自分が見えているかの確かめ方を変えてみてください。
そのささやかな違いが、あなたとあなたの大切な方を、確かに守ることにつながります。
地域の皆様が、この交差点を、安心して通り抜けられる日を願っております。

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