上天神西交差点が「香川県内ワースト1位」常連である理由
高松市内で交通事故の法律相談を専門に手がけております、地元の弁護士です。
日々、被害に遭われた方々のお話に耳を傾けるなかで、ひとつ痛感している事実があります。
それは、交通事故というものが、特定の場所において繰り返し発生する傾向を持つ、ということです。
中でも、高松市民の皆様にとりわけ知っておいていただきたいのが、国道11号高松東バイパスと国道193号空港通りが交差する「上天神西交差点」です。
この交差点は、日本損害保険協会が公表する「全国交通事故多発交差点」のリストにおいて、香川県内のワースト1位に幾度となく選定されてきた、まさに県内屈指の危険地点です。
本記事では、被害が深刻化しやすい歩行者、自転車、バイクという交通弱者の視点から、この交差点を安全に通行するための具体的な備えをお伝えしてまいります。
1. 上天神西交差点が「香川県内ワースト1位」常連である理由
上天神西交差点は、その立地と構造の両面から、香川県内で突出して事故が多発する地点として知られています。
全国的に見ても交通量は極めて多く、各種の事故件数ランキングで上位常連となっていることが定着しています。
特に深刻なのが、朝夕の通勤・通学時間帯です。
午前7時から9時、午後5時から7時にかけては交通量が飽和状態となり、事故が集中して発生しています。
この時間帯はドライバーが時間に追われやすく、無理な交差点進入が起こりやすいため、危険性が一気に高まる傾向にあります。
典型的な事故のパターン
この交差点で発生する事故には、いくつかの典型的なパターンが見られます。
ひとつ目は、右折車両と対向直進車が衝突する、いわゆる右直事故です。
交差点内で、右折しようとする車両と、対向車線を直進してくる車両とが衝突する事故のことを指します。
互いに相手の動きを読み違えることで発生しやすく、交差点事故の中でも特に発生頻度の高い類型として知られています。
ふたつ目は、右折・左折する車両が、横断歩道を渡る歩行者や自転車を巻き込んでしまう事故です。
みっつ目は、複雑な車線構成や渋滞の発生に伴う、車両同士の追突事故です。
交通弱者である歩行者や自転車にとって、最も深刻な被害をもたらすのは、ふたつ目の右左折巻き込み事故であることは、改めて申し上げるまでもありません。
2. 事故を生む「構造的な罠」を理解する
この交差点が危険である最大の理由は、ドライバー個人の不注意だけでは説明しきれない、インフラそのものに潜む構造的な要因にあります。
ご自身の身を守るためには、まずこの罠を正しく理解することが、すべての出発点となります。
巨大な橋脚が生み出す死角
交差点の上空には、高松自動車道の巨大な橋脚が複数立ち並んでいます。
これらの橋脚により、ドライバーからも歩行者からも、視界が物理的に大きく遮断されてしまいます。
特に右折する車両から見ますと、橋脚の影から横断歩道に進入してきた自転車や歩行者の存在を、直前まで認識できないという事例が多発しているのです。
複雑な立体交差とアンダーパス
国道11号の本線が、アンダーパス構造となっており、側道からの合流や分岐が複雑に絡み合っています。
交差点や鉄道などの下を通り抜けるために、道路を地下に潜らせた構造のことを指します。
平面交差を避けて交通の流れをスムーズにする利点がある一方、車両の速度が上がりやすく、視認できる距離が短くなる場面も生じます。
高低差があることから車両の速度が出やすく、しかも遠方まで見通すことが難しい地点が点在しています。
こうした複雑な構造は、ドライバーが瞬時に処理すべき情報量を増やし、結果として歩行者や自転車への注意が後回しになりやすい環境を生み出してしまうのです。
多車線かつ変則的な右折レーン
右折専用レーンが2車線も存在しており、交差点全体の面積が極めて広いことも、大きな特徴のひとつです。
車両の走行軌跡が長くなるため、歩行者が横断している最中に信号が切り替わるリスクも生じます。
県内屈指の交通量に加え、車両同士の車線変更も激しいため、ドライバーの注意は周辺の車両に集中しがちです。
そのため、歩行者や自転車への注意が後回しになりやすい状況が、常態化していると言わざるを得ません。
3. 交通弱者が知るべき「危険予知」のポイント
ここからは、歩行者・自転車・バイクの皆様が、ご自身の命を守るために知っておいていただきたい、危険予知のポイントをお伝えしてまいります。
自分は被害者になりうる、という前提に立って、読み進めてみてください。
橋脚の陰からの「飛び出し」と誤認されるリスク
歩行者や自転車が横断歩道を渡り始めた直後、あるいは中央分離帯付近に差しかかった場面では、車から見ますと、橋脚の影から急に現れたかのように映ってしまうことがあります。
ドライバー側は、複雑な信号や右折のタイミングを伺うことで頭がいっぱいになっており、橋脚の死角の向こうには歩行者はいないはず、という前提で進行してしまう心理状態に陥りやすいのです。
これは交通弱者側の不注意というよりも、構造上どうしても起こりうるリスクとして、認識しておいていただく必要があります。
「サンキュー事故」の歩行者・自転車版
渋滞で停車している車両の間から自転車や歩行者が進入したとき、その横の空いているレーンを走行してきた別の車両と衝突するケースがあります。
道を譲ってくれた車両への感謝の気持ちが、その後ろや横から来る別の車両への警戒を緩めてしまうことで発生する事故の総称です。
譲ってもらった安心感が、視界の確認を疎かにさせてしまう、心理的な落とし穴であると言えます。
特にアンダーパスから合流してくる車両は速度が出ていることが多く、極めて危険性の高い事故類型と言わざるを得ません。
1台目の車が止まってくれた、という安心感が、命取りになりかねない場面なのです。
大型車の影に潜む二重の死角
右折待ちをしている大型車があると、その車体が視界を完全に遮ってしまい、後続の直進車や、対向から進んでくる右折車が、互いに歩行者を確認できない状況が生まれます。
大型車の存在そのものが、もうひとつの死角を作り出してしまうのです。
4. 命を守るための具体的な自己防衛行動
これらの危険要因を踏まえ、上天神西交差点を通行する際に、ぜひ実践していただきたい自己防衛策をご紹介します。
橋脚の陰では一度立ち止まり、首振り確認を
たとえ横断歩道上であっても、橋脚の横を通過する際は、一度速度を落としてみてください。
そして、身を乗り出すようにして、右左折車両が迫っていないかを、ご自身の目で直接確認することが重要です。
青信号だから安全のはず、という思い込みは、この交差点においては通用しないのだ、と心得ていただければと思います。
右折車「2車線目」への警戒とアイコンタクト
右折レーンが2車線あるため、手前の車が止まってくれていても、奥の2車線目の車がそのまま進入してくるケースが多発しています。
2台目のドライバーの顔をしっかり見て、こちらの存在を認識してくれているかを確認するまでは、足を止めておくことをお勧めします。
視線が合わない場合には、絶対に進まないという判断が、命を守ることにつながります。
中央分離帯の待機スペースの賢い活用
交差点が広いため、一度の青信号で渡りきれない場面もあります。
そのときは無理をなさらず、中央分離帯の安全地帯で次の青信号を待つ、という選択を取ってください。
ただし、その際は橋脚の陰に身を隠してしまわず、車両から見えやすい位置に立つことが大切です。
ドライバーの目に映る場所に立つ、という意識を、ぜひ強く持っていただきたいと思います。
夕暮れ時以降の「物理的なアピール」
この交差点周辺は、信号や店舗の灯火類が多く、自転車のライトだけでは光が背景に埋没してしまいがちです。
反射材を着用したり、バッグに点滅式のLEDライトを取り付けたりするなど、ドライバーの視覚を強く刺激する動く光源を、身に着けてみてください。
夕暮れから夜間にかけては、視認性の確保が、そのまま命を守る決め手となります。
5. 万が一、事故に遭ってしまったときの対応
どれだけ気をつけていても、構造的に危険な交差点では、事故に巻き込まれてしまう可能性をゼロにすることはできません。
万が一、上天神西交差点で事故に遭遇してしまった場合に、必ず実行していただきたいことをお伝えします。
まず、必ず警察を呼び、人身事故としての届出を行ってください。
軽傷に思える場合でも、後から症状が悪化することは決して珍しくありません。
次に、現場の写真や、橋脚との位置関係がわかる状況の記録を、可能な限り保存しておいてください。
この交差点では、構造的な死角が事故の一因となっていることが、後の話し合いにおいて重要な争点となる場面が少なくないからです。
さらに、必ず病院で診察を受け、診断書を取得してください。
ご自身の身体の状態を正確に記録に残しておくことが、後々のあらゆる手続きにおける土台となります。
6. まとめ:「危険な場所」と認識することが第一歩
上天神西交差点は、構造的に事故が起こりやすい場所であるという現実を、まず知っておくことが、何よりも大切です。
歩行者・自転車・バイクといった交通弱者の方々が、ドライバーの注意のみに頼るのではなく、ご自身で、ここは危険な場所だ、と認識し、能動的に防衛行動を取ることが、命を守ることにつながります。
高松市にお住まいの方も、お仕事や通学で日常的にこの場所を通行される方も、本記事の内容を、ぜひご家族と共有していただければ幸いです。
交通事故は、一度起きてしまえば、後悔しても取り返しがつくものではありません。
事故のない高松の街を実現するためには、一人ひとりの意識が変わっていくことが、何よりの近道となります。
地元で交通事故の問題に向き合う一人として、皆様が今日も無事に帰宅されることを、心より願ってやみません。
