交通事故で顔に傷跡が残ったら?後遺障害12級14号「外貌醜状」の認定基準と慰謝料を弁護士が解説

最終更新:2026年2月

交通事故で顔や頭、首に傷跡が残ってしまった——。身体の痛みだけでなく、鏡を見るたびにつらい思いをされている方も少なくありません。

こうした「目に見える場所に残った傷跡」は、後遺障害等級の12級14号「外貌の醜状障害」として認定される可能性があります。

この記事では、交通事故を専門に扱う弁護士が、12級14号の認定基準、受け取れる慰謝料の相場、そして請求の際に注意すべきポイントをわかりやすく解説します。


1. 外貌醜状障害(12級14号)とは?

交通事故の被害に遭い、治療を続けても、顔や頭、首などの目に見える部分に傷跡が残ってしまうことがあります。こうした傷跡が一定の大きさ以上であれば、後遺障害として認定される可能性があります。

12級14号は、自賠責保険の後遺障害等級表において「外貌に醜状を残すもの」と定義されています。つまり、日常的に人目に触れる部分に、目立つ傷跡が残った場合に認められる等級です。

📖 用語解説:後遺障害(こういしょうがい)

交通事故によるケガの治療を十分に行っても、これ以上改善が見込めない状態(症状固定)になったとき、残った症状のことを「後遺障害」といいます。後遺障害には1級〜14級までの等級があり、等級に応じて慰謝料などの賠償額が変わります。

2. 「外貌」とはどこの部位を指すのか

後遺障害の認定基準で使われる「外貌(がいぼう)」とは、具体的にどの部位を指すのでしょうか。

📖 用語解説:外貌(がいぼう)

頭部、顔面、首(頸部)など、日常生活において常に露出している部分のことをいいます。腕や足など、衣服で通常隠れる部分は「外貌」には含まれません。

ポイントは「日常的に露出している部分」であるという点です。通常、服や帽子で隠れている部分に傷跡が残っても、外貌醜状障害とは認定されません。あくまで、他人から見て傷跡がわかる場所であることが条件です。

3. 12級14号の具体的な認定基準

12級14号に認定されるためには、傷跡の大きさが部位ごとに定められた基準を満たしている必要があります。以下の表をご覧ください。

部位 認定基準 大きさの目安
頭部 鶏卵大面以上の瘢痕(傷跡)
または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
直径 約5センチ以上
顔面部 10円銅貨大以上の瘢痕
または長さ3センチメートル以上の線状痕
直径 約2センチ以上(瘢痕の場合)
頸部(首) 鶏卵大面以上の瘢痕 直径 約5センチ以上

📖 用語解説:瘢痕(はんこん)

ケガが治った後に皮膚に残る傷跡のことです。色が周囲の肌と異なっていたり、皮膚の表面がへこんでいたり盛り上がっていたりする状態を含みます。

たとえば、交通事故で顔面をフロントガラスに打ち付け、頬に2センチ以上の傷跡が残った場合や、額に3センチ以上の線状の傷跡が残った場合などが、12級14号の認定対象となります。

認定の際のポイント

認定を受ける際には、傷跡の大きさを正確に測定することが非常に重要です。自賠責の調査では、実際に面接を行って傷跡の状態を確認する場合があります。申請前に、主治医に傷跡の大きさを正確に記載してもらうようにしましょう。

4. 12級14号で請求できる損害賠償

後遺障害12級14号が認定された場合、被害者は加害者(保険会社)に対して、主に以下の2つの損害を請求できます。

① 後遺障害慰謝料

後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する賠償金です。12級の場合、慰謝料の金額は算定基準によって大きく異なります。

算定基準 12級の慰謝料の目安
自賠責基準 94万円
任意保険基準 100万円前後(保険会社により異なる)
裁判基準(弁護士基準) 290万円

上の表をご覧いただくとわかるように、弁護士基準(裁判基準)で計算すると、自賠責基準の約3倍の金額になります。保険会社から提示された金額が低いと感じた場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

📖 用語解説:弁護士基準(裁判基準)

過去の裁判例をもとに算出された慰謝料の基準です。自賠責基準や任意保険基準よりも高額になることがほとんどで、弁護士が交渉・訴訟する際に用いられます。被害者が本来受け取るべき適正な金額に最も近い基準といえます。

② 後遺障害の逸失利益

後遺障害が残ったことで、将来の収入が減ってしまう分を補償するのが「逸失利益」です。ただし、外貌醜状の場合、この逸失利益の請求には大きな注意点があります。次のセクションで詳しく解説します。

📖 用語解説:逸失利益(いっしつりえき)

後遺障害によって労働能力が低下し、将来得られるはずだった収入が減少する分の損害賠償のことです。被害者の年収、後遺障害の等級に応じた労働能力喪失率、就労可能年数などをもとに計算されます。

5. 外貌醜状の「逸失利益」が認められにくい理由【弁護士の経験談】

ここからは、交通事故を多数扱ってきた弁護士としての経験をもとにお話しします。

通常の後遺障害であれば、①後遺障害慰謝料②逸失利益の2つを請求できます。しかし、外貌醜状の場合は、②の逸失利益が認められないケースが多いのが実情です。

その理由はシンプルです。「顔に傷跡が残ったことで、将来の仕事の能力が低下する」とは考えにくいからです。

たとえば、以下のようなケースを考えてみてください。

逸失利益が認められにくい職業の例

事務職の場合——書類作成やデータ入力などの事務作業は、顔に傷跡があっても能力が低下するとは考えにくいでしょう。

専門職の場合(医師・建築家・弁護士など)——高度な専門知識や技術で仕事をする職業は、外見が仕事の成果に直接影響するとはいえません。

現場作業の場合(建築作業員・工事作業員など)——こうした仕事では、周囲の人が外見の傷跡を気にすることはほとんどないと思います。

私の経験上、「この職業であれば、外貌に傷跡があることで将来の収入が下がる」と明確にいえるケースには、正直なところ、あまり出会ったことがありません。これが、外貌醜状の損害賠償請求を難しくしている要因の一つです。

6. 逸失利益が認められる可能性がある職業とは

ただし、すべてのケースで逸失利益が認められないわけではありません。以下のような「外見が仕事に直接影響する職業」であれば、逸失利益が認められる可能性があります。

職業の例 逸失利益が認められうる理由
芸能人・タレント・モデル 外見が仕事の評価・報酬に直結するため
営業職 顧客との対面での印象が営業成績に影響しうるため
教師・講師 生徒・受講者の前に立つ仕事であり、外見の変化が心理的な負担となりうるため
接客・サービス業 お客様と日常的に対面するため、外見が業務に影響する可能性があるため

上記のような職業に就いている方は、逸失利益の請求が認められる可能性がありますので、あきらめずに弁護士に相談することが大切です。

逸失利益が認められない場合の対応策

逸失利益が認められなかった場合でも、後遺障害慰謝料を増額するという方法で全体の賠償額を引き上げられるケースがあります。外貌醜状による精神的苦痛が特に大きい場合には、慰謝料の増額事由として主張できる可能性がありますので、弁護士と相談しながら戦略を立てることが重要です。

7. 女性の外貌醜状は精神的苦痛が特に大きい

外貌醜状は、性別を問わず後遺障害として認定されます。しかし、特に女性の場合、外見の変化による精神的苦痛は非常に大きいものがあります。

顔に残った傷跡が気になって外出を避けるようになったり、人との交流を控えるようになったり、化粧で傷跡を隠すことに大きなストレスを感じたりするケースは少なくありません。こうした精神的苦痛は、慰謝料の算定において考慮される要素の一つです。

裁判例の中には、外貌醜状による精神的影響を重視して、通常の12級の基準よりも慰謝料を増額した事例もあります。ご自身の苦痛を適切に評価してもらうためにも、専門家に相談されることをおすすめします。

8. 外貌醜状で適正な賠償を受けるために

最後に、外貌醜状で後遺障害の認定を受け、適正な賠償を得るためのポイントをまとめます。

大切な3つのポイント

1. 傷跡の大きさを正確に記録する
後遺障害診断書に傷跡のサイズを正確に記載してもらいましょう。認定基準のわずかな差で等級が変わることがあります。写真も複数枚撮影しておくと、後日の立証に役立ちます。

2. 保険会社の提示額をそのまま受け入れない
保険会社は、自賠責基準や任意保険基準をもとに低い金額を提示してくることが一般的です。弁護士基準で計算すれば、慰謝料が大幅に増額されるケースは非常に多くあります。

3. 逸失利益の可能性もあきらめない
外貌醜状では逸失利益が認められにくいとお伝えしましたが、ご自身の職業や状況によっては認められる可能性があります。また、逸失利益が認められない場合でも、慰謝料の増額という形で賠償総額を引き上げられることがあります。

交通事故の損害賠償は、専門的な知識がなければ適正な金額を判断することが難しい分野です。おひとりで悩まず、まずは専門家にご相談ください。

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※ 本記事は一般的な法律情報を提供するものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的なご事情については、弁護士にご相談ください。
※ 慰謝料の金額は個別事情により異なります。記載の金額はあくまで目安です。

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