下肢の関節機能障害について(後遺傷害12級7号)

交通事故 後遺障害
後遺障害等級 第12級7号
下肢の三大関節の機能障害
― 関節が十分に動かなくなった場合 ―
交通事故で足の関節を骨折し、治療後も関節が以前のように動かなくなった場合、後遺障害12級7号に認定される可能性があります。本記事では、認定の基準・申請方法・賠償金について、初めての方にもわかりやすく解説します。

1後遺障害12級7号とは?

後遺障害12級7号は、交通事故によるケガの治療が終わった後も、片方の足(下肢)の三大関節のうち一つの関節が十分に動かなくなった状態に対して認定される等級です。自賠責保険の障害等級表では、「一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」と定義されています。

もう少しかみ砕いてご説明すると、交通事故で足の骨折などをした結果、治療を受けたにもかかわらず、股関節・ひざ関節・足首関節のいずれかが事故前のようにスムーズに曲げ伸ばしできなくなった場合に該当します。具体的には、ケガをしていない側(健側)の関節の動く範囲と比べて、ケガをした側の関節の動く範囲が4分の3以下に制限されていることが認定の条件です。

12級7号は、骨折後の後遺症として非常に多く見られる等級です。骨折した骨がくっついた後でも、関節の周りの組織が硬くなったり、骨の形が変わったりすることで、関節の動きが制限されることがあります。「骨がくっついたのだから問題ないだろう」と思われがちですが、関節の可動域制限は日常生活に大きな影響を及ぼすことがあり、適切な賠償を受けるべき後遺障害です。

📖 用語解説
後遺障害(こういしょうがい)
交通事故によるケガの治療を続けても、これ以上の回復が見込めない状態(「症状固定」といいます)になったときに残っている症状のことです。後遺障害として認定されると、通常の治療費や慰謝料とは別に、「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」といった追加の賠償金を受け取ることができます。
症状固定(しょうじょうこてい)
治療を継続しても、それ以上の大きな改善が期待できないと医師が判断した時点のことをいいます。この時点で残っている症状が「後遺障害」として評価の対象になります。
可動域(かどういき)
関節を動かすことができる範囲のことです。英語では「ROM(Range of Motion)」といいます。角度で測定され、たとえば「ひざの屈曲130度」のように表されます。

2下肢の「三大関節」とは?

下肢(足)の三大関節とは、股関節(こかんせつ)ひざ関節足関節(そくかんせつ=足首の関節)の3つを指します。これらはいずれも日常の歩行や立ち座りの動作に不可欠な関節であり、いずれか一つでも動きが制限されると、生活全般に大きな支障が出ます。

関節名 位置・役割 主な動き
股関節 骨盤と太ももの骨(大腿骨)をつなぐ関節。体重を支える最も大きな関節。 屈曲(もも上げ)・伸展(足を後ろに引く)・外転・内転・回旋
ひざ関節 太ももの骨とすねの骨(脛骨)をつなぐ関節。歩行・走行の衝撃を吸収。 屈曲(ひざ曲げ)・伸展(ひざ伸ばし)
足関節(足首) すねの骨と足の骨をつなぐ関節。地面からの衝撃を吸収し、バランスを保つ。 背屈(つま先を上げる)・底屈(つま先を下げる)

12級7号は、上記のうちいずれか1つの関節の動きが制限された場合に認定されます。なお、2つ以上の関節に機能障害が残った場合には、より上位の等級が認定される可能性がありますので、複数の関節に症状がある方は専門家に相談することをお勧めします。

3認定の基準 ―「可動域が4分の3以下」とは?

12級7号の認定基準は、ケガをした側の関節の可動域が、健康な側(健側)の可動域の4分の3(75%)以下になっていることです。ここでいう「可動域」とは、原則として、医師や理学療法士が外部から力を加えて動かした場合の最大角度(他動値)で測定します。

たとえば、右ひざを骨折して治療した後、健康な左ひざの屈曲角度が130度であるのに対し、右ひざの屈曲角度が90度までしか曲がらない場合を考えてみましょう。この場合、90度 ÷ 130度 ≒ 69%となり、75%以下の条件を満たすため、12級7号に該当する可能性があります。

【計算の考え方】

健側の可動域 × 3/4 = 基準値
→ ケガをした側の可動域が、この基準値以下であれば12級7号に該当

計算例:健側のひざ屈曲が130度の場合
130度 × 3/4 = 97.5度
→ 患側のひざ屈曲が97.5度以下であれば、12級7号に該当

なお、測定にあたっては、日本整形外科学会の定める測定方法に基づいて正確に計測する必要があります。また、可動域の角度は原則として5度単位で切り上げて判断されます。このため、わずかな角度の違いが認定の可否を分けることもあります。

さらに注意が必要なのは、健側にも事故前から障害がある場合や、両側ともケガをしている場合です。このようなケースでは、参考可動域角度(医学的な標準値)を基準に判断されます。

📖 用語解説
健側(けんそく)
ケガをしていない側の手足のことです。後遺障害の可動域を判断する際に、健側の数値を基準として、患側の制限の程度を比較します。
患側(かんそく)
ケガをした側の手足のことです。患側の可動域が健側と比べてどの程度制限されているかが、等級認定の重要なポイントになります。
他動値(たどうち)
医師や検査者が外部から力を加えて関節を動かしたときの角度です。自分の力で動かしたときの角度(自動値)とは区別されます。後遺障害の認定では、原則として他動値が用いられます。
参考可動域角度
日本整形外科学会などが定める、各関節の標準的な可動域の角度です。両側のケガや、事故前から健側にも障害がある場合など、健側との比較が難しいケースで基準値として用いられます。

412級7号が認定されやすい典型的なケース

12級7号が認定されるケースには、一定のパターンがあります。以下のような場合に認定されることが多いです。

骨折後の関節拘縮

最も多いのは、関節付近の骨折後に関節が硬くなるケースです。たとえば、脛骨高原骨折(ひざ関節面の骨折)の後にひざが十分に曲がらなくなった場合や、足関節の果部骨折(くるぶしの骨折)の後に足首の動きが制限された場合などが典型です。骨折後はギプスなどで長期間固定することが多く、その間に関節周囲の組織が硬くなる「関節拘縮」が生じやすくなります。

関節内骨折による関節面の不整

関節の表面(関節面)に及ぶ骨折の場合、骨がくっついても関節面が完全には元通りにならないことがあります。関節面が不整になると、スムーズな動きが阻害され、可動域制限の原因となります。

靭帯・半月板損傷後の機能障害

ひざの前十字靭帯(ACL)損傷や半月板損傷の手術後に、ひざの可動域が十分に回復しないケースもあります。特に、手術後のリハビリが不十分であったり、損傷の程度が重い場合に可動域制限が残りやすくなります。

人工関節の設置

股関節や膝関節に人工関節を入れた場合は、原則として「関節の用を廃したもの」(8級7号)や「関節の著しい機能障害」(10級11号)に該当することが多いですが、人工関節の種類や可動域の状態によっては12級7号に該当するケースもあります。

📖 用語解説
関節拘縮(かんせつこうしゅく)
関節周囲の筋肉・腱・靭帯・関節包などの組織が硬くなり、関節の動きが悪くなった状態です。骨折後のギプス固定や、長期間関節を動かさないことで起こりやすくなります。
関節面(かんせつめん)
骨の端にある、他の骨と接する面のことです。関節面は滑らかな軟骨で覆われており、この面が滑らかであることでスムーズな動きが可能になります。
前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい・ACL)
ひざ関節の中にある靭帯で、すねの骨が前方にずれるのを防ぐ役割をしています。交通事故やスポーツで損傷することが多い靭帯です。

5可動域の測定方法

後遺障害の認定においては、可動域の測定方法が厳密に定められています。正確な測定が行われないと、本来認定されるべき等級が認められなかったり、逆に等級が低く評価されてしまうおそれがあります。

測定の原則

可動域の測定は、「関節可動域表示ならびに測定法」(日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会)に基づいて行います。原則として、他動運動(医師が外から力を加えて動かす)による角度を計測します。ただし、神経の麻痺が原因で関節が動かない場合などは、自動運動(患者自身が動かす)の値が用いられることもあります。

測定時のポイント

測定には「ゴニオメーター」という角度計が使われます。測定は、関節ごとに定められた基本の姿勢(基本肢位)からの角度を計測する形で行われ、左右の数値を比較することで障害の程度を判定します。

測定は原則として2回行い、その平均値が採用されます。また、測定時に痛みがあって十分に動かせない場合でも、痛みの範囲内で測定された角度が記録されます。

⚠ ご注意ください

可動域の測定結果は、後遺障害診断書に記載されて等級認定の重要な判断材料となります。測定のタイミングや方法によって結果が大きく変わることがあるため、症状固定時には、交通事故の後遺障害に精通した整形外科医のもとで慎重に測定を受けることが非常に重要です。不正確な測定が行われると、実際の症状に見合った等級が認められない可能性があります。

📖 用語解説
ゴニオメーター
関節の角度を測る医療用の器具です。分度器のような形をしており、関節の動く角度を正確に計測するために使用します。
後遺障害診断書(こういしょうがいしんだんしょ)
症状固定時に医師が作成する診断書で、残存する後遺障害の内容や程度が記載されます。後遺障害の等級認定を申請する際に、最も重要な書類の一つです。

6認定を受けるまでの流れ

後遺障害12級7号の認定を受けるまでには、いくつかのステップがあります。全体の流れを把握しておくことで、適切な時期に適切な対応を取ることができます。

STEP 1
治療の継続
事故後、整形外科で継続的な治療を受けます。骨折の治癒だけでなく、関節の可動域を回復させるためのリハビリテーションも重要です。
STEP 2
症状固定の判断
主治医がこれ以上の改善が見込めないと判断した時点で「症状固定」となります。一般的に事故から6か月以上の治療期間が必要です。
STEP 3
後遺障害診断書の作成
主治医に後遺障害診断書を作成してもらいます。可動域の測定値が正確に記載されているか、必ず確認しましょう。
STEP 4
等級認定の申請
相手方の自賠責保険会社を通じて(事前認定)、または被害者自身が直接(被害者請求)、損害保険料率算出機構に申請します。
STEP 5
認定結果の通知
審査の結果、等級が認定されます。結果に不服がある場合は、異議申立てを行うことも可能です。
📖 用語解説
事前認定(じぜんにんてい)
相手方の任意保険会社が窓口となって後遺障害の等級認定を申請する方法です。手続きの負担は少ないですが、保険会社任せになるため、提出資料の内容を被害者側でコントロールしにくいというデメリットがあります。
被害者請求(ひがいしゃせいきゅう)
被害者自身が直接、相手方の自賠責保険会社に対して後遺障害の等級認定を申請する方法です。必要書類を自分で準備する手間はかかりますが、有利な医証や資料を積極的に添付できるため、適切な等級認定を受けやすくなります。弁護士に依頼する場合は、この方法を採ることが多いです。
異議申立て(いぎもうしたて)
後遺障害の等級認定の結果に不服がある場合に、再審査を求める手続きです。新たな医学的証拠(MRI画像、医師の意見書など)を添えて申請することで、等級が変更される可能性があります。回数に制限はありません。

712級7号で受け取れる賠償金

後遺障害12級7号に認定されると、通常の治療費や通院慰謝料に加えて、「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」を請求することができます。ただし、賠償額は算定基準によって大きく異なるため、注意が必要です。

後遺障害慰謝料

後遺障害が残ったことに対する精神的苦痛への賠償金です。12級の場合、算定基準によって以下のように金額が変わります。

算定基準 12級の後遺障害慰謝料 備考
自賠責基準 94万円 法律で定められた最低限の基準
任意保険基準 おおむね100万円前後 保険会社が独自に設定(非公開)
裁判所基準(弁護士基準) 290万円 裁判例に基づく適正な基準

上の表からわかるように、自賠責基準と裁判所基準では約3倍もの差があります。保険会社から提示される金額は自賠責基準や任意保険基準に基づくことが多いため、弁護士に依頼して裁判所基準で交渉することで、大幅な増額が期待できます。

逸失利益

後遺障害によって将来の収入が減少することに対する賠償金です。12級の場合、労働能力の喪失率は14%とされています。逸失利益は、「基礎収入 × 労働能力喪失率(14%) × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という計算式で算出されます。

たとえば、年収500万円の40歳の方が12級7号に認定された場合、労働能力喪失期間を67歳までの27年間とすると、逸失利益はおおよそ数百万円から1000万円を超える金額になることもあります(具体的な金額は個別の事情により異なります)。

📖 用語解説
逸失利益(いっしつりえき)
後遺障害が残ったことにより、事故がなければ将来得られたはずの収入が減少する分を金銭で評価したものです。基礎収入・労働能力喪失率・労働能力喪失期間をもとに計算されます。
労働能力喪失率(ろうどうのうりょくそうしつりつ)
後遺障害によって失われた労働能力の割合のことです。等級ごとに目安が定められており、12級の場合は14%とされています。ただし、実際の業務への影響度合いに応じて増減することがあります。
ライプニッツ係数
将来にわたって受け取るはずの金額を一括で前払いする際に、中間利息を差し引くための係数です。現在の法定利率は年3%で計算されます。
裁判所基準(弁護士基準)
過去の裁判例の蓄積に基づいて設定された賠償額の基準です。「赤い本」「青い本」と呼ばれる書籍にまとめられており、三つの基準の中で最も高額になります。弁護士が交渉に入ることで、この基準に近い金額で示談できることが多くなります。

8適切な認定を受けるために大切なこと

後遺障害12級7号の認定を適切に受けるためには、治療段階からいくつかの点に注意しておく必要があります。

継続的な通院とリハビリの記録

後遺障害の認定においては、事故から症状固定までの治療経過が重視されます。途中で通院を中断してしまうと、「治療の意思がなかった」「症状が軽い」と判断され、等級認定に不利になることがあります。医師の指示に従い、定期的にリハビリに通い、その記録を残しておくことが大切です。

画像所見の確保

可動域制限の原因が画像(レントゲン・CT・MRIなど)で確認できることは、認定において非常に有利に働きます。骨折後の変形、関節面の不整、骨棘の形成などが画像で裏付けられていると、可動域制限の「器質的原因」が証明でき、認定を受けやすくなります。

正確な可動域測定

前述のとおり、わずかな角度の違いが認定の可否を分けることがあります。症状固定時の可動域測定は、後遺障害の認定に精通した医師のもとで行うことが理想的です。必要に応じて、セカンドオピニオンを求めることも検討しましょう。

後遺障害診断書の記載内容の確認

後遺障害診断書は、等級認定の審査において最も重要な書類です。可動域の数値だけでなく、自覚症状、他覚所見(医師が確認できる客観的な所見)、画像所見なども漏れなく記載されているか確認しましょう。記載に不備があると、本来認定されるべき等級が認められない場合があります。

📖 用語解説
器質的原因(きしつてきげんいん)
レントゲンやMRIなどの画像で確認できる、身体の組織の物理的な変化を原因とするものです。骨の変形・軟骨の損傷・靭帯の断裂などがこれにあたります。画像で原因が確認できる場合は、後遺障害の認定において有利に働きます。
骨棘(こっきょく)
骨の関節面の縁にトゲのように新しく形成された骨のことです。骨折後や関節の変形に伴って生じることがあり、関節の動きを制限する原因になることがあります。

9弁護士に相談するメリット

交通事故の後遺障害に関する手続きは複雑であり、専門的な知識がなければ、適切な賠償を受けることが難しい場合があります。弁護士に相談・依頼することには、以下のようなメリットがあります。

適切な等級認定のサポート

交通事故に詳しい弁護士であれば、後遺障害診断書の記載内容が適切かどうかをチェックし、必要に応じて医師に追記や修正を依頼することができます。また、被害者請求の手続きを代行し、有利な医学的証拠を積極的に収集して申請に添付することで、適切な等級認定の可能性を高めます。

賠償金の大幅な増額

先ほどご説明したとおり、保険会社が提示する慰謝料は自賠責基準や任意保険基準に基づいていることがほとんどです。弁護士が介入することで、裁判所基準(弁護士基準)での交渉が可能となり、後遺障害慰謝料だけでも100万円以上の増額が見込めるケースは珍しくありません。

交渉・手続きのストレス軽減

保険会社との示談交渉や書類作成などの煩雑な手続きを弁護士に任せることで、被害者の方はケガの治療や日常生活の回復に専念することができます。精神的な負担が軽減されることも、弁護士に依頼する大きなメリットの一つです。

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