足の後遺障害について

角膜に傷がつくケース 眼に関する日常生活への影響

1.足の後遺障害とは ― 交通事故で足を受傷しやすい理由

交通事故により、足に受傷する割合はかなり多いです。
自動車の運転手であれば、衝突事故の際にフロントがへこみ、ゆがんだ車体に足がはさまれるということがあります。
自転車やバイクの運転中の事故で自動車との衝突であれば、自動車のバンパーが膝のあたりの高さであるため、一番衝突の衝撃を受けることがあります。
また、転倒後に足が地面に強く打ちつけられたり、時として転倒したバイクが足の上に載ったりして、骨折や大きな怪我につながる事があります。
歩行者の場合、多くの自動車のバンパーの高さが膝の高さくらいである事が多く、急ブレーキで自動車の車体が前のめりに沈んでも10㎝程度なので、すねのあたりに衝突することが多いです。
そのため、歩行者と自動車の交通事故の多くは、歩行者はまず自動車のバンパーと衝突してから、胴体なり腕なりのほかの場所が車体と衝突するため、足に打撲や骨折などの何らかの受傷をすることがほとんどです。
つまり足は、交通事故において最初の衝撃を受け止める、いわば最前線の部位なのです。
足の障害には痛みや麻痺、歩行障害が上げられるのですが、受傷の大きさによって後遺障害の大きさも変わってきます。
『季節の変わり目で少し足が痛い』、
『普段は大丈夫だけど、走りすぎると足に違和感が出る』
といった軽微な後遺障害から、
『事故で足を切断された』、
『足の神経が切れて、まったく足が動かない』、
『足を複雑骨折してしまい、人工骨やボルトを入れたけれども、杖なしでは歩くどころか立つことすらできない』
と、生活に大きく影響を及ぼすものまであります。

2.足の切断と幻肢痛

多くの場合は打撲と骨折なのですが、交通事故により足が切断されたり、車体に挟まれて足が壊死していたりした場合には、足の切断手術が行われることがあります。
健常者がいきなり交通事故で足の切断となった場合、肉体的ダメージのほか、精神的なダメージが大きいことが上げられます。
また、切断した後でも、あたかも足がまだあり、しかも足の痛みを感じる、という『幻肢痛』という症状が出ることがあります。
これは神経回路の異常から起こるとされており、痛いと感じる足は実際にはないため、患部に鎮痛剤を投与するなどの治療が行えず、脳が痛みを感じるサインをブロックする薬や精神安定剤の投与がされます。
近年では、鏡に残った足を映して、失った足が動いているように脳に錯覚させるミラーセラピーという訓練が、幻肢痛の緩和に用いられることもあります。
足の切断後はリハビリを経て義足の使用へ進むことが多いのですが、切断部位が膝より上か下かで、義足の操作の難易度も日常生活の負担も大きく変わってきます。

【用語解説】幻肢痛(げんしつう)
切断などで失ったはずの手足に、痛みやしびれを感じる症状のこと。
脳の中に残っている手足の感覚の地図と、実際の体の状態のずれが原因と考えられている。
薬物療法のほか、鏡を使って脳の認識を修正するミラーセラピーなどの治療が行われる。

3.骨折と関節の障害

骨折には、安静にしておれば元に戻る単純骨折のほかに、複雑骨折や粉砕骨折があり、骨が元に戻る事が難しい場合には、ボルトによる骨の結合や人工骨を埋め込むといった手術をされることがあります。
ボルトや人工骨も医療技術の進歩で良くはなっていますが、体内に異物が入っている違和感を覚える人も多く、人工骨が入っても歩行が困難であるというケースも多々あります。
また、骨折した骨がうまくつながらず、骨折部分が異常な動きをする偽関節という状態になると、体重を支えられず、装具なしでは歩行できないこともあります。
さらに厄介な障害は、関節に関する障害です。
足には大きく見て、股関節・ひざ関節・足首の関節という三大関節があるのですが、どの関節の1つでも異常があると、歩く時に障害が現れるだけでなく、時として立つことすらできないこともあります。
股関節の骨折や筋肉の損傷が後遺症として残った場合、足の付け根のしびれや股関節の固定が起こったり、曲げたり延ばしたりした際に痛みが走ったりします。
関節が動かなかったり動きがスムーズにいかなかったりするため、歩行だけでなく、まっすぐ立つ、椅子に座る、といった生活の基本となる姿勢が出来なくなることがあります。
特に膝は、スポーツ選手や高齢者が膝を故障させることがあるため想像しやすいと思いますが、膝に障害が出た場合には、歩行に大きな支障が出ます。
また、足の障害は打ち身や骨折といった外傷によるものだけでなく、神経系統のものもあります。
運動神経が麻痺して足が動かなくなるといったもののほかに、
『足に針を刺されても痛みを感じない』、
『足を触られてもわからない』、
『足をお湯につけても温度を感じない』
といった、知覚障害があります。
知覚障害は痛みがない分軽く見られがちですが、熱さを感じないために火傷に気づかない、怪我をしても放置して悪化させる、といった二次被害の危険をはらんでいます。

【用語解説】偽関節(ぎかんせつ)
骨折した骨の癒合が止まってしまい、本来関節ではない骨折部分が、関節のように異常に動いてしまう状態のこと。
体重を支える足に偽関節が残ると歩行への影響が大きく、後遺障害では第7級や第8級といった上位等級の認定対象になる。

4.日常生活への影響

交通事故の足の後遺障害で真っ先に思いつくのが、歩行障害だと思います。
実際に足の障害の大半は歩行障害にかかわる事なのですが、人により後遺障害の重さや症状、歩行障害が起こっている原因は千差万別です。
同じ歩行障害でも、両足を切断して義足生活の場合と、杖を使えば歩行できる場合とでは、大きな差があります。
自分が歩けないと想像した場合、家でトイレに行くのも一苦労、階段を上がることができない、と、いろいろと困難な場面を思い浮かべることができるでしょう。
しかし、実際に歩行困難となってからは、
『身体を少しずらすだけでも一苦労』、
『小さな段差を超えられない』、
『椅子に座っていても足に力が入らないので、まっすぐ座っているのが困難で、ひじ掛け付の椅子でないと滑り落ちてしまう』、
『立ち上がる時に手すりか他の人の支えがないと無理』
と、健康体の時には無意識で行っている動作の一つ一つが出来なくなっていることに気付かされて、愕然となる方が多いです。
歩行障害で、歩けないけども立つことは出来る、という人もいれば、歩くことも立つこともできない、という人もいます。
そのため、立つことだけは出来るという人の中には、食事を作ったり洗濯をしたりと、立ってできる作業をする方もいますが、体のバランスを崩しやすいので、転倒の危険性が高いです。
生活の場面では、自宅の手すりの設置や段差の解消、浴室・トイレの改修といった住宅のバリアフリー化が必要になることも多いです。
こうした家屋改造費や、将来の介護にかかる費用も、後遺障害の程度によっては損害賠償として加害者側に請求できる場合があるため、領収書や見積書は必ず保管しておきましょう。

5.装具の買い替えや運転免許など、続いていく負担

歩行障害のため、杖や車いす・義足を使っている方は、日々の手入れのほかに、定期的に買い替えをしなければいけません。
杖や車いす・義足はタイプ別に耐用年数が細かく分類されていて、杖で2年~4年、車いすで6年、義足で5年ほどですが、未成年は成長により短期間で体の大きさと合わなくなることもあるため、買い替えの頻度が上がります。
ここで知っておきたいのは、これらの装具の費用は一度きりではなく、将来にわたる買い替え費用も損害として請求できるという点です。
耐用年数ごとの買い替えを平均余命まで繰り返すものとして計算し、将来分をまとめて請求するのが一般的なので、示談の際に現在使っている装具の分しか計上されていないという事がないよう、注意が必要です。
また、足に障害が出た場合、自動車運転免許証の更新がそのままでは認められないことがあります。
足に障害がある方でも自動車免許の取得は可能ですが、交通事故前に健常者として取得した運転免許証とはまた別になるため、運転適性の相談や講習を受ける必要があります。
また、自動車も、手だけで運転できる手動運転装置付きの車両など、専用の操作ができる特別車が必要となります。
こうした車両の改造費用についても、損害賠償の対象となり得るため、諦めずに請求を検討しましょう。

6.神経的な痛みや麻痺 ― 検査で異常が出ない場合の落とし穴

足の障害の中には、麻痺や継続的な痛みという神経的なものもあります。
軽度の麻痺や痛みであれば、日常生活に大きな支障が無く、だんだんと麻痺や痛みに慣れてくる『馴化』というものが起こり、あまり意識せずに生活が送れるものもあります。
しかし、強い麻痺や痛みであれば、歩行のみならず、日常生活すら満足に送れないこともあります。
原因が、神経切断によるもの、膝の関節の変形、などはっきりしているものならば、ある程度の治療方針のめどがつきます。
しかし、レントゲン検査やMRI・CTなどの検査を行っても理由がはっきりとせず、本人からの愁訴のみである場合には、医師としても湿布や痛み止めの投薬といった対症療法しか行えません。
ひどい場合には、本人からの愁訴を、大げさに言っているだけ、と医師からも否定されてしまいます。
そのような場合、患者の方としては納得がいかず、医師に対して不満や不信感を抱くことがあります。
また、精密検査をすれば本来の原因が分かったのにもかかわらず、患者が治療をあきらめたりして、患者自身が不利益を被るということもあります。
納得がいかない場合には、ペインクリニックや神経内科など、痛みや神経の専門科でセカンドオピニオンを受けることも検討しましょう。
なお、骨折や打撲の治療後に、怪我の程度と不釣り合いなほどの激しい痛みや腫れ・皮膚の変色が続く場合には、CRPS(複合性局所疼痛症候群)という難治性の疾患の可能性もあるため、早めに専門医の診察を受けることが重要です。
また、身体を支える足の関節は非常に重要な関節なのですが、交通事故により関節に障害が起こると、関節が固くなって動きづらくなってしまい、歩くだけでなく、立ったり座ったりという動作にも支障が出ることがあります。
特に膝関節は、膝の骨折から悪化するといったほかに、単なる打撲からでも炎症が起こり悪化することもあります。
『交通事故をした時はそうでもなかったけれども、リハビリをして膝に負荷がかかるようになってから、ひざが痛むようになった』ということもあるので、交通事故後の日常生活で足に違和感を感じたら、すぐに診察を受ける必要があります。

【用語解説】CRPS(複合性局所疼痛症候群)
骨折や打撲などの怪我をきっかけに、本来の怪我の程度からは説明できないほどの激しい痛み・腫れ・皮膚の色や温度の変化が長く続く疾患。
原因の解明が進んでいない難治性の症状で、後遺障害としては、症状の程度に応じて第7級・第9級・第12級などの認定対象になり得る。

7.足に関する後遺障害認定について

交通事故の足の後遺障害は、足の欠損という重篤なものから、軽い運動障害といった比較的軽度のものまで幅広くあります。
交通事故の受傷により足の障害が出た場合でも、足に対する後遺障害認定の要件は、細かく条件付けされています。

第1級(自賠責保険金額3000万円)
・両下肢をひざ関節以上で失ったもの
・両下肢の用を全廃したもの

第2級(自賠責保険金額2590万円)
・両下肢を足関節以上で失ったもの

第4級(自賠責保険金額1889万円)
・一下肢をひざ関節以上で失ったもの
・両足をリスフラン関節以上で失ったもの
(リスフラン関節とは、足根中足関節と言われ、立方骨、内側楔状骨・中間楔状骨・外側楔状骨と5本の中足骨間にできる関節)

第5級(自賠責保険金額1574万円)
・一下肢を足関節以上で失ったもの
・一下肢の用を全廃したもの
・両足の足指の全部を失ったもの

第6級(自賠責保険金額1296万円)
・一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの

第7級(自賠責保険金額1051万円)
・一足をリスフラン関節以上で失ったもの
・一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
・両足の足指の全部の用を廃したもの

第8級(自賠責保険金額819万円)
・一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
・一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
・一下肢に偽関節を残すもの
・一足の足指の全部を失ったもの

第9級(自賠責保険金額616万円)
・一足の第一の足指を含み二以上の足指を失ったもの
・一足の足指の全部の用を廃したもの

第10級(自賠責保険金額461万円)
・一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
・一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの
・一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの

第11級(自賠責保険金額331万円)
・一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの

第12級(自賠責保険金額224万円)
・一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
・長管骨に変形を残すもの
・一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの
・一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
・局部に頑固な神経症状を残すもの
(長管骨とは、大腿骨や脛骨など細長く、骨格において比較的大きな骨を指す)

第13級(自賠責保険金額139万円)
・一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
・一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失ったもの
・一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの

第14級(自賠責保険金額75万円)
・下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
・一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
・局部に神経症状を残すもの

このように等級表を見ると、関節の障害については、用を廃したもの、機能に著しい障害を残すもの、機能に障害を残すもの、という段階的な表現で区分されています。
実務上、これらは関節の可動域を怪我をしていない側の足と比較して判定され、おおむね、健側の2分の1以下に制限されていれば著しい障害(第10級)、4分の3以下に制限されていれば障害(第12級)、関節がほとんど動かない状態ならば用を廃したもの(第8級)とされています。
つまり、症状固定時の可動域測定の数値が、そのまま等級を左右するのです。
測定時に痛みを我慢して無理に曲げてしまうと、実際より軽い等級になってしまう恐れがあるため、測定は正確に受けることが大切です。

【用語解説】関節の機能障害の判定基準
関節の後遺障害は、原則として怪我をした側と反対側の関節の可動域を測定して比較する。
可動域が健側の2分の1以下ならば機能に著しい障害(第10級相当)、4分の3以下ならば機能に障害(第12級相当)、関節が強直してほとんど動かないならば用を廃したもの(第8級相当)と判定される。
後遺障害診断書に正確な測定値が記載されているかが、等級認定の生命線になる。

8.神経症状の認定は争われやすい

足の障害に関して、切断や骨折など外傷性のもので、目視やレントゲン・MRI・CTなどで確認が容易な場合には、後遺障害の認定で争われることは比較的少ないと言えます。
しかし、第12級の、局部に頑固な神経症状を残すもの、第14級の、局部に神経症状を残すもの、といった、神経症状に関する障害に関しては、医師の診断書の内容によっては認められないケースもあるため、後遺障害認定の手続きを取る際には注意が必要です。
実務上、第12級は画像所見や神経学的テストで症状を医学的に証明できる場合、第14級は証明までは出来なくても症状の存在が医学的に説明可能な場合、と区別されています。
そのため、事故直後からの継続的な通院、一貫した症状の訴え、必要な検査の実施が、認定を左右する重要な要素になります。
また、痛みをかばって生活しているうちに悪化した膝の症状などは、交通事故との因果関係を争われやすいため、違和感を覚えた時点で早めに受診し、カルテに記録を残してもらう事が大切です。

9.足の後遺障害で適正な補償を受けるためのポイント

最後に、足の後遺障害で適正な補償を受けるためのポイントを整理します。
第一に、足の違和感や痛みは軽くても放置せず、早期に受診してカルテに記録を残すことです。
第二に、症状固定時の関節可動域の測定を正確に受け、後遺障害診断書に数値がきちんと記載されているか確認することです。
第三に、杖・車いす・義足などの装具は、将来の買い替え費用まで含めて損害賠償請求の対象になることを忘れないことです。
第四に、家屋の改造費・車両の改造費・将来の介護費用など、生活再建にかかる費用も等級や状況に応じて請求できるため、見積書や領収書を保管しておくことです。
そして、後遺障害認定されるか否かで、後遺障害慰謝料が支払われるかどうかが変わってくるのですが、弁護士を通じて請求する場合には判例基準で請求するため、自賠責基準に比べると大幅に増額します。
自賠責基準だと慰謝料部分は第1級で1100万円、第2級で958万円、第4級で712万円、第9級で245万円、第11級で135万円ですが、判例基準ですと第1級で2800万円、第2級で2370万円、第4級で1670万円、第9級で690万円、第11級で420万円なので、差は3倍近くなります。
足の後遺障害は、慰謝料だけでなく、逸失利益・装具費・改造費など請求項目が多岐にわたるため、賠償額の差が特に大きくなりやすい分野です。
自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、多くの場合自己負担なしで弁護士に依頼できるため、示談の前に、交通事故に精通した弁護士へ相談することをお勧めします。
歩くという当たり前の日常を奪われた損害は、決して小さなものではありません。
正しい知識と準備で、生活の再建につながる適正な補償を受け取りましょう。