死亡事故の遺族が弁護士の説明で安心した事例

1.事故の発生 ― 突然の悲報
被害者の方は、70歳代の主婦の方でした。
道路を横断中に、直進してきた自動車に衝突されて、頭を強く地面に打ちつけて死亡しました。
事故現場は、横断歩道のない道路でした。
被害者の方は、道路の中央線付近でいったん停止して、道路の反対側にわたる機会を待っていました。
車の流れが途切れるのを、じっと待っていたのです。
そこへ、直進してきた自動車が、被害者の方に気づかないまま衝突しました。
運転者が前をよく見ていれば、道路の中央に立っている歩行者に気づけたはずです。
気づいてさえいれば、ハンドルやブレーキの操作で、衝突は避けられたかもしれません。
前方をしっかり見る、という運転の基本を怠ったことが、取り返しのつかない結果を生んでしまいました。
被害者のご家族は、突然に警察から連絡を受けました。
「ご家族の方が交通事故で亡くなりました…」
その一報を聞いて、ご家族はあわてて救急病院に駆けつけました。
しかし、ご家族が駆けつけたときには、すでに被害者の方は亡くなっていました。
朝、いつもどおりに元気に家を出た家族と、それが永遠の別れになったのです。
「お母さんに最後のお別れを言う時間もなかった…」
ご家族の方は、それが何よりも心残りであったといいます。
死亡事故のご遺族は、深い悲しみのなかで、突然、現実的な問題に直面します。
警察からの事情の確認、葬儀の手配、親族への連絡、そして保険会社とのやりとり。
心の整理がつかないまま、次々と対応を迫られるのが、死亡事故のご遺族が置かれる状況なのです。
2.ご遺族が弁護士に相談されるまで
自動車を運転していた加害者は、被害者のご家族に一度も謝罪にきませんでした。
ご家族としては、加害者が謝罪にきたとしても、許せませんから追い返すつもりでした。
しかし、そもそも謝罪にすらこない、という加害者の対応は、とうてい許すことができませんでした。
人の命を奪っておきながら、線香の一本もあげにこない。
その態度が、ご遺族の悲しみを、怒りへと変えていきました。
一方で、葬儀がすむと、加害者側の保険会社からは、事務的な連絡が入るようになります。
大切な家族を亡くした直後に、賠償の話を切り出されることは、ご遺族にとって大きな精神的負担です。
また、保険会社の担当者は交渉のプロですが、ご遺族は交渉の素人です。
知識の差があるまま交渉に入ることには、大きな不安がありました。
そこで、被害者のご家族は、当事務所の弁護士に相談にこられました。
「交通事故で家族が死亡したのは初めてです。どうしたらいいのかわかりません」
ご家族がそうおっしゃるのは、当然のことです。
死亡事故は、一生に一度、経験するかどうかという出来事だからです。
わからないのが普通であり、恥ずかしいことでは決してありません。
弁護士は、交通事故の事件の解決が、どう始まって、どのように進んでいくのかを、丁寧に説明しました。
刑事事件と民事事件という、二つの手続が並行して進むこと。
刑事事件は加害者の処罰を決める手続で、民事事件は損害賠償を決める手続であること。
それぞれの手続で、ご遺族に何ができるのか。
時系列に沿って、これから起こることを、順番にお話ししました。
「ああ、なるほど、交通事故の全体像がわかって安心しました」
「何もわからなかったので、目の前にかかっていた霧が晴れたような気がします」
被害者のご家族の方は、弁護士に相談したことで、心の平静をとりもどしたようです。
交通死亡事故では、二つの手続が別々に進みます。
刑事事件は、国が加害者を処罰するかどうかを決める手続です。
民事事件は、被害者側が加害者側に損害賠償を求める手続です。
刑事事件で処罰されても、賠償金は自動的には支払われません。
賠償金は、民事事件として別に請求する必要があります。
3.当事務所の活動(1)刑事事件のサポート
弁護士は、まず刑事事件から関与することになりました。
被害者側の刑事事件で課題となるのは、次の点でした。
「どのようにして、被害者側の気持ちを警察の方に理解してもらうか」
刑事手続の流れを知る
死亡事故が起きると、警察は捜査を開始します。
事故直後には、現場で実況見分がおこなわれ、事故の状況が詳しく記録されます。
その後、加害者や目撃者の取調べが進められ、捜査資料は検察庁に送られます。
そして、検察官が、加害者を起訴するかどうかを判断するのです。
自動車の運転ミスで人を死亡させた場合、過失運転致死罪という犯罪が成立します。
死亡事故という重大な結果ですから、起訴されて刑事裁判になることも多くあります。
この一連の流れのなかで、ご遺族が関わる大きな場面が、警察による事情聴取です。
自動車の運転上必要な注意を怠って、人を死亡させた場合に成立する犯罪です。
自動車運転死傷行為処罰法という法律に定められています。
法定刑は、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
警察の事情聴取にそなえた予行練習
死亡事故の捜査では、警察がご遺族から事情聴取をおこないます。
このとき、ご遺族の支えとなるのが、事前の準備です。
弁護士は、ご遺族が警察に事情聴取のために呼ばれる前に、予行練習をおこないました。
「こういう場合には、警察は、被害者のご家族に、加害者に対する処罰感情を聞くことになります」
弁護士は、死亡事故を数多くあつかってきました。
ですから、警察がどういうことを質問してくるか、手にとるようにわかっていました。
初めての警察署、初めての取調室というのは、それだけで緊張するものです。
しかし、聞かれることがあらかじめわかっていれば、落ち着いて自分の気持ちを話すことができます。
予行練習には、そういう効果があるのです。
処罰感情はハッキリと伝える
「加害者を厳しく処罰してほしいときには、厳罰にしてほしい、厳しく処罰してほしい、ということをハッキリと言ってください」
弁護士の指導は、とても明確でした。
日本人は、遠慮がちに、控えめに話すことを美徳とする傾向があります。
しかし、事情聴取の場では、遠慮は禁物です。
あいまいな言い方をすると、処罰感情はそれほど強くない、と受け取られてしまうおそれがあるからです。
事情聴取で語られた処罰感情は、供述調書という書面にまとめられます。
その調書は、検察官が加害者を起訴するかどうかを判断する資料になります。
さらに、裁判になれば、量刑を決める資料にもなります。
だからこそ、遠慮せずに、率直な気持ちを言葉にすることが大切なのです。
ポイントをおさえた指導をしたことで、ご家族の方は、自信をもって警察の事情聴取に行くことができました。
そして、実際に警察で聞かれたことも、弁護士から指導を受けた内容と、ほとんど同じでした。
ご遺族の方は、安心してリラックスして事情聴取を乗り切ることができました。
被害者やご遺族が、加害者にどのような処罰を望むか、という気持ちのことです。
処罰感情は、検察官の起訴・不起訴の判断や、裁判での刑の重さに影響する事情のひとつとされています。
4.当事務所の活動(2)民事事件・損害賠償のサポート
刑事事件と並行して、弁護士は民事事件、つまり損害賠償の交渉にも早い段階から関与しました。
死亡事故で請求できる損害
死亡事故の損害賠償では、おもに次のような項目を請求します。
死亡慰謝料、死亡逸失利益、葬儀関係費用、亡くなるまでの治療費などです。
また、亡くなったご本人の慰謝料とは別に、ご遺族固有の慰謝料が認められることもあります。
なお、亡くなったご本人の損害賠償請求権は、相続人であるご遺族が相続して請求することになります。
ですから、実際に保険会社と交渉するのは、ご遺族の役割になるのです。
本件の被害者の方は、主婦の方でした。
主婦の方の場合、家事労働にも経済的な価値が認められます。
そのため、収入がない専業主婦であっても、逸失利益を請求できるのです。
高齢の主婦の方であっても、家事労働をおこなっていた実態があれば、逸失利益は認められます。
この点を知らずに交渉すると、賠償金が大きく低くなってしまうおそれがあります。
事故がなければ、被害者が将来得られたはずの利益のことです。
死亡事故では、将来の収入などをもとに計算します。
主婦の方の場合は、家事労働の価値をもとに計算することが認められています。
過失割合という争点
本件のように、横断歩道のない場所を横断していた事故では、歩行者側にも一定の過失がある、と保険会社から主張されることがあります。
過失があると判断されると、その割合の分だけ、賠償金が減らされてしまいます。
これを過失相殺といいます。
だからこそ、事故の状況を正確に把握して、適切に主張することが重要になります。
被害者の方が中央線付近で停止して待っていたこと。
加害者が前方をよく見ていれば、被害者に気づくことができたこと。
こうした事情は、刑事事件の記録、とくに実況見分調書などの客観的な資料によって裏づけていきます。
刑事事件に早くから関与していた弁護士だからこそ、こうした資料を意識した活動ができるのです。
被害者側にも事故の落ち度があった場合に、その割合に応じて賠償金を減額する仕組みです。
過失割合が何対何になるかによって、受け取れる賠償金は大きく変わります。
賠償金には三つの基準がある
さらに重要なのが、賠償金の計算基準です。
賠償金の基準には、自賠責保険の基準、任意保険会社の基準、裁判の基準という三つの基準があります。
このなかで、実際に裁判をおこなったときの基準、いわゆる裁判基準の金額が一番高いという傾向があります。
保険会社が最初に提示してくる金額は、裁判基準よりも低いことが多いのが実情です。
ご遺族が自分で交渉しても、保険会社は、なかなか裁判基準での支払いには応じません。
しかし、弁護士が交渉の窓口に立つと、状況は変わります。
交渉がまとまらなければ裁判になる、という現実的な見通しがあるからこそ、保険会社も裁判基準を意識した金額を検討するようになるのです。
裁判所の過去の判決例をもとにした賠償金の計算基準です。
三つの基準のなかで、もっとも高額になる傾向があります。
弁護士が交渉に入ると、この裁判基準をベースに交渉を進めることができます。
この事件では、弁護士が交渉した結果、実際に裁判をおこなったときの賠償金額に近い金額を、加害者側に払わせることに成功しました。
ご遺族にとっては、裁判をおこなう時間的・精神的な負担を避けながら、裁判に近い水準の賠償を得られた、という解決でした。
5.当事務所が関与した結果
被害者のご家族の方は、刑事事件という初めての経験を、弁護士の指導のおかげで安心して乗り切ることができました。
家族が突然、前触れもなく死亡してしまった、という過酷な体験でした。
そのなかで弁護士に相談できたことは、大変に心強いものがあったということでした。
刑事事件では、加害者は死亡事故という重大な結果に見合った処罰を受けました。
ご遺族が事情聴取で処罰感情をしっかりと伝えられたことも、その一因になったと考えられます。
その後の民事事件においても、弁護士が早い段階から関与したために、有利に交渉をすすめることができました。
賠償額についても、裁判基準に近い水準での解決を実現できました。
被害者のご家族の方は、次のような感想をお持ちでした。
「私たちは、損害賠償というような、難しい話は、全くわかりません」
「家族が死んでしまって大変に落ちこんでいるなか、自分で保険会社の担当の人と交渉するというのは、精神的な負担がとても大変でした」
「弁護士の方に全てまかせることができて、とても気持ちが楽になりました」
弁護士に依頼した後は、保険会社からの連絡はすべて弁護士が窓口となって対応しました。
ご遺族は、賠償の話から距離を置いて、故人を悼み、日常を取り戻すことに専念できたのです。
これも、弁護士に依頼することの大きなメリットのひとつです。
6.解決のポイント ― 未来を見通した説明が安心を生む
弁護士が交通事故発生の直後から相談を受けたこと。
これが、本件の成功のポイントでした。
事故直後から関与できたため、当初の段階から一貫して、ご家族の方に安定した方針を示すことができました。
被害者のご家族の方は、なにをどうしたらいいのか、全くわからない状態です。
そういうときにこそ、弁護士がしっかりと説明することが大切です。
「まず最初に刑事手続が始まります」
「3か月程度で捜査が一段落しますので、その段階で被害者側に警察が事情聴取をおこないます」
「事情聴取で聞かれることは、被害感情、処罰意見が中心となってきます」
このように、これから起こってくる未来の出来事を、あらかじめ指導できたことで、ご家族の方の不安を取り去ることができました。
人は、先が見えないことに、いちばん不安を感じるものです。
逆にいえば、これから何が起こるかがわかれば、心の準備ができます。
道筋が見えれば、人は落ち着いて一歩を踏み出すことができます。
本件のご遺族が、事情聴取をリラックスして乗り切れたのも、まさにこの効果によるものでした。
被害者の心の平静の回復こそ、交通事故の初期段階での弁護士の役割だと思うのです。
7.まとめ ― 死亡事故こそ、早い段階での弁護士相談を
死亡事故のご遺族は、深い悲しみのなかで、刑事手続と賠償交渉という二つの手続に向き合うことになります。
弁護士が早い段階から関与すれば、次のようなサポートが可能です。
刑事事件では、事情聴取の準備を通じて、ご遺族の処罰感情をきちんと捜査機関に伝えるお手伝いができます。
民事事件では、過失割合の適切な主張と、裁判基準をベースにした交渉で、適正な賠償金の獲得を目指すことができます。
そして何よりも、これから起こることを見通して説明することで、ご遺族の不安をやわらげることができます。
なお、ご自身やご家族の自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用を保険でまかなえる場合があります。
費用の心配から相談をためらっている方は、まず保険の契約内容を確認してみてください。
大切なご家族を亡くされた悲しみは、簡単に癒えるものではありません。
しかし、手続の負担だけでも弁護士にまかせることで、ご遺族は故人を悼む時間を取り戻すことができます。
初回の相談だけでも、目の前の霧が晴れて、これから進むべき道筋が見えてきます。
死亡事故でお悩みのご遺族の方は、できるだけ早い段階で、弁護士にご相談ください。

保険会社の最初の示談案には注意が必要です。弁護士として多くの交通事故を扱ってきた経験上、約90%のケースで弁護士が交渉することにより示談額を増額できます。
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