死亡事故。積極的に裁判に持ち込み、早期に解決。6000万円を回収した事例

1.事故の発生 ― 暴走行為の末の死亡事故
10代後半から20代前半の4人が、京都で自動車の暴走行為をおこなっていました。
そして、カーブを曲がりきれずに、運転者が自動車を電柱に激突させるという死亡事故を起こしました。
運転者は生き残りました。
しかし、助手席の同乗者は死亡しました。
被害者の方は、自動車の助手席に同乗していました。
自動車が電柱に激突したせいで、即死の状態でした。
自動車が軽自動車で、衝突に弱かったことも、被害を大きくした一因でした。
10代から20代前半という、これからの人生が長く続くはずだった若者の命が、一瞬にして失われてしまったのです。
2.ご遺族が相談されるまで ― ショックで動けない日々
被害者の方は死亡しましたので、被害者のご遺族が、自動車を運転していた人間に対して、損害賠償請求をすることができる立場となりました。
ここで、同乗者の事故について、基本的なことを確認しておきます。
友人や知人の運転する自動車に同乗していて事故に遭った場合、同乗者は、運転者に対して損害賠償を請求することができます。
相手が友人だから請求しにくい、と遠慮される方もいますが、実際の支払いは、運転者本人ではなく、自動車の保険からなされるのが通常です。
遠慮する必要は、まったくないのです。
そして、被害者が死亡した場合、亡くなったご本人の損害賠償請求権は、相続によってご遺族に引き継がれます。
また、ご遺族には、子を失ったことについての固有の慰謝料も認められます。
つまり、賠償請求の主役は、ご遺族なのです。
当事務所は、被害者のお父様から相談を受けました。
しかし、お父様は、息子さんを失ったショックが大きく、事故について考えることができない状態でした。
これは、無理からぬことです。
昨日まで元気だった息子が、突然、帰らぬ人となったのです。
賠償の話など、考えられるはずがありません。
そのため、お父様は、加害者に対する損害賠償について、加害者から連絡があっても放置していました。
そうしたところ、事態が動きます。
加害者の代理人から、事件の解決を求める調停を起こされたのです。
しかも、その調停のなかで、好意同乗ということを指摘され、賠償金を10パーセント減額するという主張をされました。
加害者側が、自分から調停を起こす。
一見すると、誠実な対応のようにも見えます。
しかし、その狙いは、加害者側に有利な条件で、事件を早く安く終わらせることにある場合が少なくありません。
現に、本件の加害者側は、調停のなかで減額の主張までしてきているのです。
被害者側が動けないでいるうちに、加害者側が先手を打って、しかも減額まで主張してきた。
この段階で、当事務所に相談があったのです。
運転者が好意で無償で同乗させていた場合に、賠償金を減額すべきだ、という加害者側の主張のことです。
無償同乗と呼ばれることもあります。
かつては減額を認めた裁判例もありましたが、現在の裁判実務では、単に好意で同乗していたというだけでは減額は認められない、という考え方が確立しています。
3.当事務所の活動 ― 調停を打ち切り、裁判へ
相談を受けた弁護士は、まず、お父様に、事件の全体像と解決までの道すじを説明しました。
調停とはどういう手続なのか。
このまま調停を続けた場合、どうなるのか。
調停をやめて裁判にした場合、どのくらいの期間で、どのような解決が見こめるのか。
先の見とおしを示されたことで、お父様は、ようやく事件に向き合う気持ちを取り戻すことができました。
そのうえで、弁護士は、具体的な行動に移ります。
加害者側の調停につきあう必要はない
弁護士は、まず、加害者側が起こしてきた調停をどうするか、判断を迫られました。
調停というのは、裁判所で話し合いによる解決を目指す手続です。
話し合いの手続ですから、双方が合意しなければ、調停は成立しません。
つまり、被害者側には、加害者側の起こした調停につきあう義務はないのです。
加害者側が調停を起こしてきた背景には、話し合いの場で、減額した金額での解決を狙う思惑がうかがえました。
好意同乗による10パーセント減額の主張が、それを物語っています。
弁護士は、このような加害者側の調停につきあう必要はない、と判断しました。
そして、調停を、不調という手続にて終了させました。
不調とは、調停が成立せずに終わることをいいます。
裁判所で、調停委員を交えて話し合いをおこない、合意による解決を目指す手続です。
裁判とちがって、双方が合意しなければ成立しません。
合意できずに終了することを、不調(調停不成立)といいます。
被害者側から裁判を提起する
調停を終了させたうえで、弁護士は、被害者側から裁判を起こしました。
守りから攻めへ。
加害者側のペースで進みかけていた事件の主導権を、被害者側に取り戻したのです。
裁判と聞くと、時間がかかる、負担が大きい、というイメージをお持ちの方が多いと思います。
たしかに、そういう事件もあります。
しかし、争点が絞られている事件では、裁判こそが、もっとも早く、もっとも確実な解決手段になることがあるのです。
本件では、加害者が運転を誤って電柱に激突したという事故態様に、争いの余地はありませんでした。
争点は、事実上、好意同乗による減額の可否と、賠償金額に絞られていました。
このような事件は、裁判に持ち込んで、裁判所の判断で決着をつけるのに適した事件だったのです。
しかも、裁判には、金額面でのメリットもあります。
判決までいった場合、賠償金の元本に加えて、事故日からの遅延損害金が上乗せされます。
さらに、損害額の1割程度の弁護士費用相当額も、損害として認められるのが実務の取扱いです。
示談交渉では、これらの上乗せは、なかなか認めてもらえません。
裁判をおこなうべき事案では、裁判の方が、受け取れる金額の面でも有利になりうるのです。
賠償金の支払いが遅れたことに対する利息のようなお金です。
交通事故では、事故が発生した日から発生すると考えられています。
裁判で判決を得ると、この遅延損害金も含めて支払いを受けることができます。
見落とされがちな搭乗者傷害保険の請求
さらに、当事務所は、損害賠償請求とは別に、搭乗者保険の請求もおこないました。
搭乗者傷害保険は、事故を起こした自動車に乗っていた人が死傷した場合に、契約であらかじめ決められた金額が支払われる保険です。
加害者側の自動車の保険に付いているもので、被害者側が自分から請求しなければ、支払われないまま見過ごされてしまうことがあります。
この保険は、契約で決められた金額が定額で支払われるものです。
そのため、加害者に請求する損害賠償金とは別に受け取ることができる、という点で、被害者側にとって大きな意味を持ちます。
自動車に搭乗中の人が死傷した場合に、あらかじめ契約で決められた金額が支払われる保険です。
実際の損害額とは関係なく、定額で支払われるのが特徴です。
損害賠償金とは別枠で受け取れるため、請求を忘れると大きな損になります。
4.当事務所が関与した結果 ― 約6000万円を半年で回収
好意同乗による減額の主張を排斥
裁判では、予想どおり、加害者側は、好意同乗にもとづく減額の主張をしてきました。
これに対して、当方は、最高裁判例を指摘して、好意同乗にもとづく減額はできない、とする見解を出していました。
単に好意で同乗させていたというだけでは、賠償金を減額する理由にはならない。
それが、判例の確立した考え方だからです。
その結果、予想どおり、裁判所も、慰謝料の減額は認められない、という判決を出しました。
加害者側の減額の主張は、完全に排斥されたのです。
約6000万円の獲得と早期解決
結果として、およそ6000万円を獲得することができました。
しかも、裁判は、半年という短期間で終了することができました。
死亡事故の裁判は、争い方によっては、1年以上の長期に及ぶことも珍しくありません。
そのなかで、半年という解決は、かなりのスピード解決といえます。
早期に解決できたのは、最初から争点を好意同乗の問題に絞りこみ、判例にもとづく的確な主張と、必要な証拠の提出を、無駄なくおこなったからです。
裁判の期間は、準備の質によって、大きく変わるのです。
ご遺族にとって、裁判が長引くことは、悲しみと向き合う期間が長引くことでもあります。
早期の解決は、金額と同じくらい、大きな意味を持っていました。
6000万円という金額の背景には、被害者の方が若かった、という事情があります。
死亡事故の賠償金の柱は、死亡慰謝料と死亡逸失利益です。
逸失利益は、事故がなければ将来得られたはずの収入をもとに計算します。
被害者が若ければ若いほど、働けたはずの期間が長くなりますから、逸失利益は高額になるのです。
若い方の場合、事故の時点では、まだ収入が少なかったり、働いていなかったりすることもあります。
しかし、実務では、若年者の逸失利益は、賃金の統計データにおける全年齢の平均額を基礎にして計算することが認められています。
事故時の収入が少ないからといって、逸失利益まで低く抑えられてしまうわけではないのです。
これも、知らなければ保険会社の低い提示を受け入れてしまいかねない、重要なポイントです。
事故がなければ、被害者が将来得られたはずの利益のことです。
死亡事故では、将来の収入をもとに、働けたはずの年数分を計算します。
若い方の場合は、賃金統計の全年齢平均額を基礎に計算するのが実務です。
また、搭乗者保険に関しても、死亡事故のため、満額の1000万円が支給されました。
損害賠償金の約6000万円とは別枠での支給です。
搭乗者傷害保険の保険金は、実際の損害額とは関係なく支払われる、お見舞金のような性質のお金です。
そのため、損害賠償金から差し引かれることはない、というのが実務の取扱いです。
賠償金は賠償金として満額受け取り、保険金は保険金として別に受け取る。
この仕組みを知っているかどうかが、最終的な受取額を大きく左右するのです。
5.解決のポイント ― 経験にもとづく的確な見とおし
裁判をおこなうべき事案かどうかの見きわめ
経験のある弁護士の判断で、調停という手続を早期に終了させ、裁判に持ち込む。
この方針によって、裁判を半年という期間でスムーズに解決し、ご遺族の裁判の負担を軽減させることができました。
被害者にとっては、裁判をおこなうべき事案と、裁判をおこなっては不利になる事案とがあります。
たとえば、被害者側の過失が大きく争われるような事案では、裁判がかえって不利に働くこともあります。
一方、本件のように、加害者の責任が明白で、争点が絞られている事案では、裁判こそが最短の解決ルートになります。
裁判をおこなうべき事案については、早期に裁判に持ち込むことで、事件を早期に解決できることもあるのです。
交通事故の解決手段には、示談交渉、調停、裁判など、複数の選択肢があります。
どの手続を選ぶかによって、解決までの期間も、受け取れる金額も変わってきます。
大切なのは、目の前の事件に、どの手続が一番合っているかを見きわめることです。
経験のある弁護士は、この見きわめ、つまり将来の見とおしが的確です。
知っているか知らないかで1000万円の差
また、見落としがちな搭乗者保険の請求が可能であることを、見逃さなかったことも、弁護士の力量です。
本件の搭乗者保険は、死亡時1000万円でした。
知っているか知っていないか、それだけで1000万円の差が出るとしたら、大変におそろしいことだと思います。
弁護士に相談しなかったら、まるまる1000万円、損していたわけです。
好意同乗の主張を阻止した法律論
また、法律的な論点としては、相手側の好意同乗の主張を阻止した、ということも収穫でした。
確立した判例の知識があれば、加害者側の減額主張に、正面から反論することができます。
判例を踏まえた主張の組み立ては、弁護士の専門領域そのものです。
この事件は、とくに不利となる要素もなく、弁護士の能力が最大限に発揮できた事件でした。
6.まとめ ― ご遺族が動けないときこそ、弁護士に
死亡事故のご遺族は、深い悲しみのなかで、賠償の問題に向き合わなければなりません。
しかし、本件のお父様のように、ショックで何も考えられなくなるのは、決して特別なことではありません。
そのようなときに、事件を放置してしまうと、本件のように、加害者側が先手を打ってくることがあります。
加害者側のペースで手続が進めば、不当な減額を受け入れてしまう危険もあります。
さらに、損害賠償請求権には、時効があることにも注意が必要です。
つらいお気持ちのなかで急かすようなことは申し上げたくありませんが、放置の期間が長くなれば、請求そのものができなくなるおそれもあるのです。
だからこそ、ご遺族ご自身が動けないのであれば、動ける人、つまり弁護士に託していただきたいのです。
ご遺族が動けないときこそ、弁護士の出番です。
弁護士に依頼すれば、調停や裁判への対応、保険の請求といった手続のすべてを、まかせることができます。
ご遺族は、故人を悼むことに専念しながら、正当な賠償を受け取ることができるのです。
なお、ご自身やご家族の自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用を保険でまかなえる場合があります。
費用の心配から相談をためらっている方は、まず保険の契約内容を確認してみてください。
本件のお父様も、最初は何も考えられない状態でした。
それでも、弁護士に相談し、まかせたことで、半年後には、約6000万円と搭乗者保険1000万円という結果にたどり着くことができました。
最初の一歩は、相談の予約の電話やメール、それだけで十分です。
死亡事故でお悩みのご遺族の方は、加害者側からの連絡を放置してしまう前に、できるだけ早く、弁護士にご相談ください。

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