交通事故のあと、被害者は、いくつもの判断を迫られます。
人身事故として届け出るかどうか。
壊れた車の賠償額に、納得してよいかどうか。
どちらも、あとから取り返しのつかない判断です。
このページは、東かがわ市とその周辺にお住まいの方に向けて、地元の交通事故の状況と、被害者の方からよくいただくご相談を、弁護士の視点からまとめたものです。
特に、人身事故と物損事故の違いについて、実務の現場感覚をまじえて解説します。
1.東かがわ市の紹介
東かがわ市は、平成15年に、それまでの引田町、白鳥町、大内町の3つの町が合併して新設された自治体です。
本庁舎は、旧白鳥町役場に置かれています。
伝統的な産業が有名です。
たとえば、はまち養殖、和三盆糖などがあります。
はまち養殖は、東かがわ市で、日本で最初に実用化されました。
人口は約3万人であり、面積は152.86平方キロメートルの広がりがあります。
地理的には、東かがわ市は、香川県の東の端に位置しています。
東かがわ市という名称は、そこから採られたとも言えます。
南側には、徳島県があり、境界を接しています。
西は、さぬき市に隣接しています。
市の花として指定されているのは、コスモスです。
花言葉は、調和を意味しています。
住民の間の調和を願ってのことと考えられます。
市の木として指定されているのは、桜です。
春に花を咲かせる、日本の代表的な花木です。
希望に満ちた春の季節の始まりをイメージして指定されたと考えられます。
主なイベントとしては、春には、引田ひなまつりが開催されます。
夏には、白鳥神社の夏越祭が開催されます。
秋には、誉田八幡宮の秋の大祭が開催されます。
冬には、白鳥神社の節分祭が開催されます。
2.東かがわ市の交通事故発生状況
東かがわ市では、令和2年には、90件の交通事故が発生しています。
発生件数としては、香川県の自治体の中では、9位の交通事故発生件数となっています。
三木町の交通事故発生件数91件に次ぐ数字です。
一方で、交通事故による死者は、5人となっています。
人口10万人あたりに換算すると、16.69人です。
人口あたりの比率でみると、香川県の中で、最も高い水準となっています。
人口約3万人の市で、1年間に5人の方が交通事故で亡くなっている。
これは、決して軽い数字ではありません。
発生件数の順位だけを見て、東かがわ市は事故が少ない、と安心することはできないのです。
東かがわ市で車を運転される方も、歩行者の方も、交通事故には十分に気をつけてください。
3.東かがわ市の被害者からの法律相談(1)…人身事故にしないでください?
3-1.ご相談の内容
東かがわ市で発生した事故について、ご相談があります。
加害者が、トラック運転手でした。
加害者の方から、人身事故にしないでください、とお願いされました。
自分は、ケガはしているのですが、どうしようかと思って、警察の方に相談しました。
すると、被害者が人身事故にしたくないというのであれば、そう扱うこともできる、との回答でした。
どうしたらいいでしょうか。
3-2.弁護士の回答
まず、自分のことを考えるのであれば、原則としては、人身事故として、被害届出を出しておいた方がよいと思います。
というのは、警察に被害届出を出しておかないと、あとで保険会社から、警察に被害届出が出ていないからケガしてないのでしょ、と言われる可能性があるからです。
ただ、世の中の現実としては、たしかに、加害者が仕事で自動車を運転している方の場合、人身事故を発生させてしまうと、免許の停止などになってしまって、仕事ができなくなってしまうことが、あり得ます。
ですので、それはかわいそうだと思って、被害者が被害届出を出さないことも、実は、よくあるのです。
そういう場合、加害者が自分の保険会社に、ちゃんと話をしていれば、保険会社としては、被害届出が出ていなくても、事故でケガをしたことは分かっていますので治療費はきちんと支払いします、という対応をします。
ですので、まず、加害者側の保険会社に、ちゃんとケガしていることを認めるのか、治療費はちゃんと払うのか、ということを確認しましょう。
保険会社が、ちゃんと払うと確認できれば、被害届出を出さなくても、被害者側としては、とくに困ることにはならないのです。
3-3.届出をしない場合のリスクも、知っておいてください
そのうえで、届出をしない選択をする前に、知っておいてほしいリスクがあります。
1つ目は、事故の詳しい記録が残らないことです。
人身事故として届け出ると、警察は、実況見分(じっきょうけんぶん)という詳しい現場調査を行い、記録を作成します。
物損事故のままだと、この詳しい記録は作られません。
あとで過失割合(事故の責任の割合)が争いになったとき、証拠が足りずに困ることがあります。
2つ目は、治療が長引いた場合です。
むち打ちなどのけがは、思ったより治療が長くかかることがあります。
治療が長引くと、保険会社から、本当に事故のけがですか、と因果関係を疑われやすくなります。
そのときに、人身事故の届出がないことが、不利にはたらくおそれがあるのです。
つまり、けがが軽くて早く治る見込みなら実害は小さいが、けがが重くなるほどリスクは大きくなる。
これが、実務の感覚です。
事故直後は、けがの重さは、まだ分かりません。
迷っているうちに時間がたつと、人身への切り替えは難しくなります。
目安として、判断は、事故から1週間から10日以内にしてください。
3-4.物損のままでも自賠責に請求できる書類があります
もう一つ、実務で使われている書類を紹介します。
人身事故証明書入手不能理由書、という書類です。
警察で物損事故として処理されたために、人身事故の証明書が取れない場合に、その理由を説明する書類です。
この書類を提出することで、物損事故あつかいのままでも、自賠責保険に治療費や慰謝料を請求できる場合があります。
この書類があるため、物損あつかいのままでも、賠償の請求が完全にできなくなるわけではありません。
ただし、これは、あくまで救済のための手段です。
記録が薄いという弱点は、残ったままです。
原則は人身事故として届け出る、例外的に届け出ない場合はリスクを理解したうえで判断する。
この順番で考えてください。
4.東かがわ市の被害者からの法律相談(2)…物損の示談金が少ない!
4-1.ご相談の内容
ご相談したいことがあります。
東かがわ市の信号のある交差点で、自動車を停車中に、後方から突っ込まれました。
自動車が、大きく破損しましたので、全損あつかいとなりました。
私の自動車は、5年前に買ったときには、200万円だったと思います。
そうしたところ、保険会社の方は、5年落ちの自動車だから全損でも50万円しか出ません、と言うのです。
しかしながら、同じ5年落ちの自動車でも、中古車販売店では、80万円くらい出さなければ、買えません。
どうしたらいいでしょうか。
4-2.弁護士の回答
保険会社は、自動車の全損の場合に、レッドブックという本を参考にして、自動車の評価額を出してくることがあります。
このレッドブックは、長い間、交通事故の実務で使われてきた本です。
自動車の時価評価額が、ほぼ全車種について、書かれています。
ただ、交通事故の実務の実感として、このレッドブックは、自動車の評価額が、少し低いように思います。
ですので、弁護士が保険会社と交渉するときには、レッドブックではなくて、たとえば、自動車のインターネット・オークションで、事故被害に遭った自動車の年式をデータ入力して、実際に市場で売買されている値段、で交渉することが多いです。
中古車であっても、その値段で、一応、買うことができる、ということでしたら、被害者の方も、納得できますからね。
4-3.そもそも、全損とは何でしょうか
ここで、全損という言葉を整理しておきましょう。
車が修理できないほど壊れた場合(物理的全損)だけでなく、修理はできるが修理費が車の時価額を上回ってしまう場合(経済的全損)も、全損とあつかわれます。
実務で問題になるのは、ほとんどが、経済的全損の方です。
修理費が80万円、車の時価が50万円、という場合を考えてみてください。
このとき、保険会社は、修理費の80万円ではなく、時価の50万円までしか支払わない、という立場をとります。
壊された側からすると、納得しにくい話です。
しかし、賠償のルールは、事故の前の状態に戻すのに必要な金額、を基準にしています。
50万円の価値の車が壊れたのなら、損害は50万円まで、という理屈なのです。
だからこそ、時価が何円と評価されるかが、勝負の分かれ目になります。
時価の評価が10万円違えば、受け取れる金額が、そのまま10万円変わるからです。
4-4.時価とは、同じ車を買い直せる値段のことです
では、時価とは、どのように決まるのでしょうか。
この点については、最高裁判所の判例があります。
昭和49年4月15日の最高裁判決は、車の時価について、次のような考え方を示しました。
同じ車種、同じ年式、同じくらいの使用状態や走行距離の車を、中古車市場で買うことができる価格、を基準とする、という考え方です。
つまり、時価とは、帳簿のうえの数字ではなく、同じ車を実際に買い直せる値段のことなのです。
ご相談のケースで言えば、中古車販売店で同じ条件の車が80万円で売られているなら、それが時価の有力な証拠になります。
レッドブックの数字と、実際の市場価格がずれているなら、市場価格の資料を集めて反論できるのです。
中古車販売サイトの検索結果や、販売店の価格表を、証拠として保存しておいてください。
同じ車種、同じ年式、近い走行距離のものを、複数集めるのがポイントです。
4-5.全損のときに、車の時価以外に請求できるもの
全損の場合、請求できるのは、車の時価だけではありません。
車を買い替えるときには、登録の手続き費用などの諸費用がかかります。
こうした買替諸費用の一部は、損害として認められる場合があります。
また、修理や買替えの間、代わりの車が必要になった場合の代車費用も、必要性が認められれば請求できることがあります。
一方で、注意点もあります。
物損だけの事故では、慰謝料は、原則として認められません。
大切にしていた車を壊されて悔しい、という気持ちは、当然のものです。
しかし、裁判実務では、物の損害は金銭賠償で回復される、という考え方がとられており、物損の慰謝料が認められるのは、ごく例外的な場合に限られます。
その分、時価や諸費用といった、認められる項目を、きちんと積み上げることが大事になるのです。
4-6.どうしても、今の車を直して乗りたい場合は
思い入れのある車だから、お金の問題ではなく、直して乗り続けたい。
そう考える方も、少なくありません。
残念ながら、経済的全損の場合、時価を超える修理費の部分は、原則として、加害者に請求できません。
どうしても修理するなら、差額は自己負担、というのが基本のルールです。
ただし、あきらめる前に、確認してほしいことがあります。
加害者側の任意保険に、対物超過修理費用の特約が付いていないか、という点です。
この特約が付いていると、時価を超える修理費についても、一定額(50万円までとされていることが多いです)を限度に、支払いを受けられる場合があります。
この特約は、加害者側の保険の内容なので、被害者からは見えません。
加害者側の保険会社に、対物超過の特約はありますか、と一言、聞いてみてください。
聞くだけなら、何も失うものはありません。
知らないまま全損の示談をしてしまうのが、一番もったいないのです。
5.物損事故と人身事故は、ここが違います
今回の2つのご相談は、どちらも、物損と人身の線引きに関わるものでした。
最後に、この違いを整理しておきます。
警察での扱いが違います。
人身事故では実況見分が行われ、詳しい記録が残りますが、物損事故では簡単な記録しか残りません。
賠償の範囲が違います。
人身事故では、治療費、休業損害、慰謝料などを請求できますが、物損事故では、車の修理費や時価などに限られ、慰謝料は原則として認められません。
加害者への影響も違います。
物損のみの事故では、原則として免許の点数はつきませんが、人身事故になると点数がつき、免許停止などにつながることがあります。
相談(1)の加害者が、人身事故にしないでほしいとお願いしてきたのは、この点数の仕組みが理由です。
けがをしているのに物損のままにするかどうかは、この3つの違いを理解したうえで、判断してください。
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物損事故と人身事故は、ここが違う!
6.東かがわ市の交通事故被害者のために役立つ情報
6-1.物損のトラブルこそ、弁護士費用特約を確認してください
物損の示談金の争いは、金額が数十万円ということも多く、弁護士に頼むと費用倒れになるのでは、と心配される方がいます。
そこで、確認してほしいのが、弁護士費用特約です。
自動車保険などに付けられるオプションです。
弁護士に相談や依頼をするときの費用を、保険会社が負担してくれます。
多くの場合、300万円までの弁護士費用が補償されます。
弁護士費用特約は、多くの場合、物損だけの事故でも使うことができます。
特約を使えば、自己負担なく弁護士に依頼できるため、賠償額が小さい物損トラブルでも、費用倒れの心配なく交渉を任せられます。
ご本人の保険だけでなく、同居のご家族の保険に付いている特約が使えることもあります。
また、この特約を使っても、翌年の保険料は原則として上がりません。
まずは、保険証券を確認するか、ご自身の保険会社に問い合わせてみてください。
6-2.東かがわ市の被害者のためのリンク集
身体障害者手帳の交付手続きのページへ
福祉医療支給制度
障害者割引の一覧ページ
香川県交通事故情報提供システムのページへ
東かがわ警察署のページへ
6-3.次の一歩のために
人身事故にするかどうか。
提示された時価に納得するかどうか。
どちらも、その場の雰囲気や、相手への遠慮で決めてしまうと、あとで後悔することがあります。
判断の前に、正しい知識と、客観的な資料を手元にそろえてください。
このページが、東かがわ市の被害者の方にとって、その助けになれば幸いです。
迷ったときは、一人で抱え込まず、専門家に確認してみてください。
その一歩が、適正な賠償への近道になります。
